五輪の屋根、ずらすか上げるか 会場建築は短期決戦で

報道公開された建設中の有明アリーナ(2019年2月12日、東京都江東区)
報道公開された建設中の有明アリーナ(2019年2月12日、東京都江東区)

2020年東京五輪・パラリンピックの競技会場の建設工事が、東京都臨海部を中心に進んでいる。新国立競技場(東京・新宿)に目が行きがちだが、ほかにも8つの新規会場が登場。開催期間が決まっているだけに、工期の遅れが許されないことが、一般のイベント施設にはない特徴だ。つち音が響く臨海部の建設現場で、工期を短縮する最新の建築技術をのぞいてきた。

有明アリーナの完成予想図(東京都提供)

五輪でバレーボール、パラリンピックで車いすバスケットボールと、人気種目が目白押しの「有明アリーナ」(東京・江東)。2月中旬には、運河沿いの一角に地上5階建て、延べ床面積約4万7200平方メートルの骨格が組み上がり、一部に外壁も施されていた。

建材を運ぶ重機の機械音が絶えず響き、約390人の作業員がせわしなく動く現場で、東京都オリンピック・パラリンピック準備局の寺沢智博・施設整備担当課長は「工事は順調」と胸を張る。1月時点の工事進捗率は51%。18年夏に相次いだ台風もものともせず、今年12月の完成に向けてスケジュール通り進んでいるという。

工期は、五輪が開幕する20年7月に間に合えばいい、というわけではない。本番に備え、多くの会場が19年後半から20年前半にかけてチェックを行う「テストイベント」に間に合わせる必要がある。多くの会場は時間との闘いを迫られている。

有明アリーナの工夫の一つは屋根工事だ。隣に造るサブアリーナ上で屋根を9回に分けて組み立て、レールで横にスライドさせていく「トラベリング工法」が進行中だ。屋根がかかったところから内装工事に着手でき「大幅な工期短縮につながる」(寺沢課長)。

屋根は地上でつくって持ち上げる

大会組織委員会が仮設で整備する「有明体操競技場」(江東区)は体操やトランポリン、パラリンピックのボッチャなどの会場となる。

建設現場に足を運ぶと、木造アーチ状屋根を持ち上げる「リフトアップ工事」のさなか。完成時に奥行き約120メートルに及ぶ屋根を地上で分割してつくって、ワイヤで持ち上げる手法だ。

有明体操競技場は「リフトアップ工事」を採用した(19年2月12日の報道公開、東京都江東区)

地上で屋根をつくることで高所作業が減り、安全を確保しながら工期を短縮できるメリットがある。屋根は作業員が見守る中、見た目に分からないゆっくりしたスピードで移動していた。2月末時点での進捗率は68%。今年10月の完成を見込んでいる。

64年大会時は建設地を決めるのに時間がかかり、最後は24時間態勢の突貫工事も少なくなかったが、「20年大会は労務管理など法令順守が大前提」(都関係者)。限られた人員や日程、予算のなかでの工夫は不可欠だ。

開幕まで1年4カ月余り。都の担当者は「大会を楽しみにしてくれる方のためにも、工期に間に合うようがんばりたい」と気を引き締めた。

(小沢一郎)