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「株価10倍」を見抜くには 鍵は課題解決・市場創出

2019/3/17

飲食店の食材調達という課題に挑戦したのがインフォマートだ。ファクスや電話に頼っていた受発注業務を電子化し、煩雑だった業務を手間いらずに変えた。最近は企業が発行する請求書を電子化するサービスが伸びている。郵送費や印刷費が不要で、請求書のチェック業務を削減できるメリットがあり、野村証券など導入例が相次ぐ。

テンバガー銘柄はITを活用する企業が多い。「固定費が低く、利幅が厚くなりやすい」(松井証券の窪田朋一郎シニアマーケットアナリスト)。インフォMTの営業利益率は31%だ。

もう一つのキーワードが「市場創出」だ。機関投資家向けで高い運用実績を持つ三井住友アセットマネジメントの古賀直樹シニアファンドマネジャーは「時代が変化する中で自社の強みを発揮できる企業はテンバガーになりやすい」と語る。新しい市場を創出し、眠っていたビジネスチャンスを取り込めるかどうかがカギを握るという。

一例が福利厚生サービスを手がけるベネフィット・ワンだ。顧客企業の従業員に、飲食店や宿泊施設などのサービスを割引価格で提供し、顧客企業から手数料を受け取る。企業が自前で保養所などを所有・利用する時代が終わる中、従業員の多様なニーズに応える新しい福利厚生の市場を創出した。働き方改革による需要増も取り込んだ。

GMOペイメントゲートウェイはインターネット通信販売の普及に目を付け、決済システムという市場を創出した。ゾゾタウンの決済システムは同社が提供する。足元ではキャッシュレス化が追い風となっており、楽天と「楽天ペイ」で提携した。ネット通販の決済システム市場を切り開き、デファクトスタンダード(事実上の標準)化しつつある姿が評価され、株価は10年で67倍に上昇している。

課題解決と市場創出のキーワードは米国市場に目を向けても通用する。家庭用ゲーム「グランド・セフト・オート」シリーズが大ヒットした米テイクツー・インタラクティブの株価は10年で14倍になった。単にユーザーに評価される面白いゲームを開発しただけではない。まずゲーム販売をネット経由に切り替え、在庫を削減した。さらにユーザーに継続課金してもらうビジネスモデルを構築し、収益を安定させた。IP(知的財産)の活用も安定成長の原動力となっている。

日本ではガンホー・オンライン・エンターテイメントがスマートフォン(スマホ)ゲーム、「パズル&ドラゴンズ」の大ヒットで一時期テンバガー銘柄の仲間入りをした。ただその後は新作ゲームをヒットさせることができず、株価は上場来高値をつけた13年の2割に落ち込む。一時的な利益の急増ではなく、業績を継続的に伸ばせるビジネスモデルを構築できるかどうかが株価上昇のポイントだ。

ファンドマネジャーは今後どういった銘柄がテンバガー候補になると期待しているのか。古賀氏は「拡大するコト消費でシェアリングエコノミーに注目している」と話す。2月に運用を始めた公募投信ではハマキョウレックスなどを組み入れる。岩谷氏は「行政などのレギュレーション(規制)対応にITを活用する『レグテック』に興味がある」と話す。AI(人工知能)や自動運転も今後の変化のひとつ。こうした時代の変化はテンバガー銘柄誕生のきっかけになりやすい。

(綱嶋亨)

テンバガー 株価が10倍以上になった銘柄を指す。英語で野球の「塁」を「bag(バグ)」といい、ホームランを「フォーバガー」と表現する。1試合で10塁打を打つほどの成績を出すことが由来だ。特に期間の定めはないが、今回は過去10年で株価が10倍を超えた銘柄を対象とした。

[日本経済新聞朝刊2019年3月9日付]

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