称賛したつもりが嫌みに howの意外な落とし穴
デイビッド・セイン「間違えやすい英語」(60)how
言葉の使い方を間違えて相手に誤解されてしまった。そんな体験はどなたにもあると思います。日本人向けの英語教育で豊富な経験を持つデイビッド・セインさんが、日本人が間違えやすい英語の使い方を解説します。今回は、howという単語の意外な落とし穴について触れてみます。
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勉強するときはいつも完全を目指す。しかし会話をするときは通じることを目指す。これが英会話には必要なポイントです。相手を前にして英語を話すときは、完璧な英語でなくても構いません。間違いがあってもいいのです。フレンドリーに笑顔で話せば、不完全さは補われます。間違いを恐れず英語を話しましょう。そして勉強するときは完全を目指しましょう。
ナンシーはある企画をまとめ上げ、プレゼンテーションをしたところ、とてもうまくできたようです。その企画の大変さを知っていたヒロシは、称賛の気持ちをこめて、「どうやって一人でできたの?」と英語で聞きました。ところが、ナンシーは驚いたような反応を示し、2人の話はかみ合わなくなってしまいます。ヒロシのちょっとした言葉づかいが思わぬ行き違いを生んだようなのですが……。
それはこんな会話でした。
Hiroshi: How could you do it alone?
Nancy: What? I didn't know you wanted to help me.
Hiroshi: Huh? What do you mean?
日本語に訳してみると、こうなります。
ヒロシ:どうして一人だけでやってしまったの!
ナンシー:えっ? あなたが手伝いたかったなんて。
ヒロシ:ん? なんのこと?
みなさんもよくご存じの疑問副詞howは、「どのように」という意味が基本です。しかし、can(could)を伴った場合などに「なぜ」「どうして」の意味になることもあります。つまり、howがwhyの役割を担うのです。しかも、その場合のHow can(could) ...?は、単純に理由を聞いているだけとは限りません。いやみを言うような口調で、「よくも~できる(できた)ものだ!」と非難するニュアンスになることも多いのです。
How could you say those horrible things? なんでそんなひどいことを言ったの?(=よくもそんなひどいことが言えたもんだ!)
How can one do so many jobs at once? どうして人はそんなに多くの仕事を一度にこなせるのだろうか?(=いや、できるはずがない!)
ですから、ヒロシがhowとcouldを組み合わせてたずねたことで、図らずも質問の趣旨が変わってしまい、「なんで自分一人で提案してしまったの?」と、ナンシーを責め立てる感じになってしまったわけです。
では、どう言えばよかったのでしょうか?