セカオワがアメコミヒーローに マーベル、日本へ秘策
『アイアンマン』『キャプテン・アメリカ』『アベンジャーズ』シリーズといった米マーベル・コミックスを原作とするスーパーヒーロー映画が、全世界でヒットしている。2019年は、マーベル・コミックスが創立80年を迎えるアニバーサリーイヤー。同社は、さらなる飛躍を狙い、世界、そして日本でも大規模な展開を計画している。17年からマーベル・コミックスで編集長を務める、C.B.セブルスキー氏に話を聞いた。
「まず年間を通じて、10年ごとに歴史を振り返るコミックを出します。昔のシリーズやキャラクターの紹介はもちろん、かつて活躍したクリエーターにも新たなストーリーに携わってもらう計画です」
マーベルといえば、スパイダーマンやアイアンマンなど数々のヒーローを生み出したスタン・リー氏が18年11月に亡くなり、全世界にショックが広がった。
「実は初めて話をしますが、彼は亡くなる前に、最後に1つストーリーを残しているんです。詳細はまだお話しできないのですが、それを19年に発表する予定です」
日本人にとって、大きなサプライズもある。End of the Worldの海外名で活動する人気バンドSEKAI NO OWARI(以下、セカオワ)とコラボレーションして、コミック『End of the World』を製作したのだ。メンバーの4人がスーパーヒーローとして活躍する内容で、コスチュームはバンドのスタイルに沿ったもの。人気キャラクターのアイアンマンやハルクらとも共演する。実在するアーティストが、コミックの表紙を飾るのはKISS、THE FLAMING LIPS以来、3例目。さらに、アーティストが特殊能力を持つキャラクターとして登場するのはマーベル史上初めてだ。
「マーベルと仕事をしたいという話はたくさんいただきますが、だいたい宣伝目当てだったり、その理由も『マーベルはクールだから』ということが多いんです。でもそんななか、DJ LOVEさんをはじめ、End of the Worldのみなさんはマーベル作品に対する理解が深かった。また、Fukaseさんが『自身の欠点はここだ』と話すなど、ヒーローとしてよりも、まず人間らしさを大切にするマーベルを理解してくれていました」
映画もヒットの期待
セカオワとのコラボ以外にも、マーベルは日本での市場拡大に力を入れている。その1つが、2年前に講談社と設立した「マガジン『マーベル』マンガ賞」だ。「市場を成長させていくために、日本のマンガ家で日本人向けにストーリーを展開できる方を求めています」。
映画に目を向けると、19年はまず、マーベル初の女性ヒーロー単独主演作品『キャプテン・マーベル』が3月15日に公開。そしてアイアンマン、ハルク、キャプテン・アメリカ、ソーが卒業すると噂される『アベンジャーズ/エンドゲーム』(4月26日公開)も控える。前作『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー(原題)』(18年)は興行収入37億円をあげて、日本でのマーベル映画最大のヒットとなっており、『~エンドゲーム』もヒットが期待できる。
「End of the Worldとの仕事には、映画やファッションだけでなく、コミックスも日本との距離が近くなればという思いもあります。19年は、マーベルにとって日本でのブレイクスルーの年になると確信しています」
(ライター 相良智弘)
[日経エンタテインメント! 2019年2月号の記事を再構成]
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