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これは妖怪? 誰もがビックリ「こうのす川幅うどん」

探訪!ご当地ブランド(2)

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「川幅日本一」の地が埼玉県にあるという噂は、友人から聞いていた。荒川の河口を約62キロメートル上流へさかのぼった埼玉県北部の「ひな人形のまち」鴻巣市と、トルコのカッパドキアのような奇岩洞穴群「吉見百穴」で有名な吉見町を結ぶ御成橋付近に、その標柱もあるらしい。

国土交通省は2008年2月、鴻巣市、吉見町の両堤防間の川幅が2537メートルで日本一だと認定した。それを機に、鴻巣市内では「川幅うどん」をはじめ、「川幅」をうたったせんべい、どら焼き、ケーキなどのユニークな商品が続々と誕生しているという。B級グルメ、ご当地グルメの話題となれば、駆け出しの新聞記者時代に外食産業を担当して以来のご縁で、血が騒ぎ始める。行くしかあるまい。

2月中旬、JR高崎線の鴻巣駅で下車。まずは腹ごしらえのため東口駅前の商業施設のフードコートに入ると……。ある、ある、「川幅」の文字が。本業は漬物店という「こうのすやつけしん」で「こうのす川幅うどん」を注文すると、「10分ほどお待ちください」と女性店員。メニューを眺めていると「川幅ソースかつ丼」などもある。

約10分後、目の前に現れたのは、幅が約7センチもある巨大きしめんのような代物だった。トッピングは、かまぼこ、揚げ玉、ワカメ、ネギ。だしの効いたつゆを味わい、うどんをすすろうと試みるが、ツルツルッとはいかない。漫画「ゲゲゲの鬼太郎」に登場する妖怪、一反木綿のようなうどんを箸でガシッとつかみ、かみ進める感じだ。確かにうまいが、これってうどん?

小腹を満たしたところで、まずは川幅日本一の現場を見に行こう。駅前の宝くじ売り場の女性に場所を尋ねると、「私も知らないんです。その交番で聞いてみては」。一瞬、ためらった。日ごろ、眼つきが鋭いと言われる筆者。標柱の所在をわざわざ交番で? だが、ミッションとあれば仕方ない。

「すいませーん」。無理に笑顔をつくって交番に入ると、中年の警察官が不審そうに私を眺めた気がした。そこで、取材だと明かして標柱の所在を聞くと、「え、ホントに行きます?」とドン引きしている。「はあ、やはり自分の目で確かめないと」。警戒モードが解け、丁寧に経路の地図を紙に描いてくれたが、「川幅も色々なとらえ方が……」とつぶやいている。「橋の往復だけでも結構、距離があるし、頑張ってください」と激励された

地図を頼りに駅の西側へ回って15分ほど歩くと、歩道橋に「川幅日本一」の看板も現れ、目的の御成橋が見えてきた。おお! 確かに標柱が立っている。しかし、御成橋を歩き始めたものの、どこまでも河川敷に畑や空き地が広がるばかり。約10分歩いた橋の中央部付近で、幅30メートルほどの荒川を発見した。

ははあ、そういうことだったか。「ホントに行きます?」という警察官の反応の真意に気が付いた。川幅とは堤防と堤防との距離を指し、よほど増水しない限りはごく普通の川なのだ。アマゾン川に申し訳ない気分だなと思った途端、笑いが込み上げてきた。

「日本一の川幅」を往復した後、駅の東側へ移動。ひな人形店が多い中山道をしばらく歩くと、川幅うどん発祥の店「めん工房・久良一(くらいち)」にたどり着いた。

この日は風が強く寒い日。カウンター席に座り、メニューを広げると「川幅みそ煮込みうどん」の写真と文字が、誘惑するように飛び込んでくる。迷うことなく即決で注文。十数分後、店主の小峰久尚さんが「熱いですから気を付けて」と配膳してくれた。湯気の下にはハマグリ、かまぼこ、油揚げ、玉子、ネギの入ったみそ煮込みスープ。幅6~7センチの手作り川幅うどんとの相性がいい。ハマグリのだしは奥深く、五臓六腑(ろっぷ)に染みわたる。

小峰さんが店を創業したのは1996年。店名は祖母(久良)と祖父(誠一)の名に由来する。2人とも県北部の出身で、一帯は小麦粉の名産地。「昔は、うどんくらい打てないと嫁に行けないと言われた」土地柄で、祖父がうどんを打つ後ろ姿を思い出すという。

人口約12万人の鴻巣市には県内唯一の免許センターがある。だが、免許更新者が大勢来るのに、飲食店にも立ち寄らず帰ってしまう。また、いつまでも「花と人形のまち」が売り物では、観光客へのインパクトも弱い。「小麦粉、うどんが有名だし、面白おかしく『食』を売り出せないか」。小峰さんは店内で市の職員らと相談していた。

そこへ舞い込んだのが「川幅日本一」認定の知らせだ。市の商工観光課(現・観光戦略課)にいた羽鳥敦さんらが「川幅グルメ」をやろうと各方面に働きかける一方、小峰さんは「川幅うどん」の試作を開始。試行錯誤の末、09年7月にメニュー化した。転機は10年の「埼玉B級ご当地グルメ王決定戦」で、既に川幅うどんを始めていた老舗うどん店「長木屋」と組んで2店でエントリーし、準優勝したこと。15年には悲願の優勝を果たした。

現在、川幅うどんが食べられる店は10店以上あるが、ユニークな店も多い。駅西口の「吉見屋食堂」のイチ押しは「川幅肉汁うどん」。2月某日の夜、電話すると「ごめんなさい。売り切れてしまいました」と小山優子さん。さすが人気店だなあ、と翌日の昼に訪問すると、ご主人の雄一さんと共に迎えてくれた。警察や免許センター、市への出前が多く、2階は賃貸アパート。居住者には半額で食事を提供しており、捨て猫の里親探し、学童保育を行うNPOの運営などもやっている。

注文すると、木製パズルが手渡され、待ち時間内に組み立てれば優子さん特製のデザートが付く。「胸がつかえそうな川幅うどんと、コシのある手打ちうどん本来の魅力を食べ比べる楽しみがあります」と優子さんがほほえんだ。

「川幅グルメ」の先陣を切ったのはうどんだが、地元商工会も早々に「川幅」を商標登録(今は鴻巣市観光協会が所管)。川幅メニューの領域も広がってきた。「川幅どらやき」を製造する和菓子店「木村屋」の4代目社長の木村紀彦さんは、「羽鳥さんが熱心に『日本一』の話を持ち掛けてきた際、昔のどら焼きの型枠が見つかり、川幅の1万分の1(大)、2万分の1(小)サイズの栗入りどら焼きを作ることにしました」と話す。

老舗せんべい店、大一米菓の「本手焼おおとり」では、川幅の2537メートルにちなんで、「2=ニンニク、5=ゴマ、3=みそ、7=七味唐辛子、そして定番のしょうゆ味は三河産にこだわった商品を出しています」(若女将の大塚克恵さん)。

現在、市から観光協会事務局に出向している長谷川達也さんは、「鴻巣市が誇る日本一はいくつもあるんです。日本一高いピラミッド型のひな飾り(今年は高さ7メートル、31段、計1870体のひな人形)や日本一長い水道管、日本一広いポピー畑(荒川の河川敷)、秋の花火大会での1分当たりの尺玉打ち上げ数日本一とか……」。そんな珍発見と面白がり精神が、まちおこしの資源になる。

2月下旬、再び「久良一」へ赴いた。数量限定メニュー「川幅2537うどん」を味わうためだ。「2=ニンニク、5=玉子、3=水菜、7=ナス」を具材に、見た目をコウノトリの巣のように仕上げた逸品で、体と心を芯から温めてくれる。食後、小峰さんが作詞、友人が作曲した「荒川の流れのように」(演奏「川幅ンド」)という曲のCDを聴かせてもらった。「~川幅うどんなら みんなで食べても1人で食べてもおいしいよ……」。ひょうひょうとしたメロディーが流れると、元気のエキスが湧いてくる気がするのだった。

(ジャーナリスト 嶋沢裕志)

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