週末レシピ 新タマネギで一層美味、オニオンスライス
新タマネギが出回る季節となった。この時期のタマネギは実の部分に水分を多く含み、みずみずしく甘いのが特徴だ。中にはフルーツばりに甘いものもある。そのおいしさをシンプルに味わえるのが居酒屋の定番メニュー「オニオンスライス」ではないだろうか。さっそく作り方を紹介しよう。
新タマネギ 1個 / しょうゆ 適宜 / カツオ節 適宜
(1)新タマネギは皮をむき、根と頭の部分を取り除き、縦半分にカットにする
(2)バットかザルを用意し、その上にスライサーをセットし、タマネギを薄切りにする。根から頭にかけて走っている繊維に対して平行にスライスする
(3)タマネギを広げて10分ほど空気にさらす
(4)小鉢やボウルなどにスライスしたタマネギを盛り付け、カツオ節をかける
(5)しょうゆをかけて、できあがり
以上である。「オニオンスライス」という名前の通り、タマネギをスライスするだけの単純なものだが、新タマネギで作る場合は普通のタマネギで作るのとちょっとだけ勝手が違う。「新タマネギならでは」のポイントを挙げておこう。
1.水にさらさない。
年間を通じて見かけるタマネギはスライスした後に水にさらして辛みを抜く。が、新タマネギの場合は水にさらしてはいけない。
2.タマネギの繊維と同じ方向にスライスする。
普通のタマネギで作る場合は、繊維に対して垂直にスライスする(理由は後述)。しかし、新タマネギの場合はその逆である。
3.食べる直前に作る。
こちらも理由は後述するが、作り置きはあまりお薦めしない。
では、なぜ新タマネギと普通のタマネギで作り方が異なるのだろうか。それにはまず両者の違いを説明せねばならない。
一口にタマネギといってもいくつか種類がある。具体的には「黄タマネギ」「白タマネギ」「赤タマネギ」など。新タマネギは「黄タマネギ」や「白タマネギ」を収穫後すぐに出荷したものだ。年間を通して見かけるタマネギは、日持ちをよくするために収穫した後に1カ月ほど乾燥させている。
そのため通年を通して見られるタマネギは皮が硬く水分が少ない。カレーやシチューやいためものなど、火を通すことで甘みが出ておいしくなる。対して、新タマネギは乾燥させてないので、皮が薄く実の水分が多く軟らかい。それゆえオニオンスライスやサラダなど生食に向く。
そして、何より両者の大きな違いは「辛み」である。この辛みのもとは「硫化アリル」と呼ばれる成分。普通のタマネギは乾燥させることによって水分が抜けているので、辛み成分が凝縮されている。オニオンスライスを作る場合はこの辛み成分をどうにかして減らさないと辛くて食べられない。
この硫化アリル、水に溶け出しやすく、空気中に発散されやすいという性質がある。タマネギを切ると涙が出るというのはこのためである。この性質を利用して、普通のタマネギでオニオンスライスを作るときには、硫化アリルが空気や水に流れ出やすいように、繊維を破壊する垂直方向にスライスし、水にさらすのだ。
さて、この硫化アリルは生で摂取することでいわゆる「血液サラサラ」効果があるといわれている。だから、本来水や空気に成分を流出させてしまうのはもったいないこと。しかし、そのまま食べるのはあまりにも辛すぎる。ここが非常に悩ましい。
その点、新タマネギは辛み成分が凝縮されていないので、あまり辛くない。せっかくのすばらしい成分をできるだけ損失させることなく摂取する方法が先に紹介したレシピというわけである。
料理本やネットのレシピサイトには新タマネギも普通のタマネギ同様、繊維に対して垂直にスライスすると紹介してあるところもある。効果をそれほど気にしないのであれば、こちらの切り方でもかまわない。
この方法だと、野菜の繊維を断ち切ることになるのでフワフワの食感になる。一方、繊維に沿ってスライスする方法だと、シャキシャキの食感になる。つまり、新タマネギは切り方次第で両方の食感が楽しめるというわけだ。
また、オニオンスライスはトッピングや調味料を変えることで、さまざまなアレンジが可能である。居酒屋でもよく見かけるのは卵黄を乗せたもの。サッパリした味に黄身のコクとまろやかさが加わり、酒のさかなにピッタリだ。
カツオ節のかわりに缶詰のツナやさばの水煮を乗せるのもお薦め。しょうゆにマヨネーズをプラスしてもよいだろう。しょうゆではなくポン酢をかけるのもまたおいしい。
いろいろなバリエーションで、この季節ならではのタマネギの甘みや食感を楽しもう。
(ライター 柏木珠希)
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