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『平成ネット史(仮)』 思い出語りの番組が大反響

日経エンタテインメント!

2019/3/14

NHKのEテレで深夜帯(23時台)に放送された番組ながら大きな反響を呼び、この3月21日にはラジオ版が放送される人気企画となったのが『平成ネット史(仮)』だ。今年1月2日と3日にEテレで放送されるやSNS(交流サイト)で話題が広がり、翌週に渋谷で開催されたイベントも大盛況となった。

『平成ネット史(仮)』 タイトルにある「(仮)」は、確定していない歴史という意味。テキストサイト「侍魂」の作者・健氏をはじめとしたレアなインタビューにスタジオも興奮気味だった。(C)NHK

番組の内容は、Windows 95の発売からSNSまで、日本のインターネット史を当時の映像や仕掛人のインタビューと共に振り返るというもの。「テキストサイト」「2ちゃんねる」「着メロ」「写メール」など、「懐かしい!」と叫びたくなる事柄が多数登場し、番組に出てきたワードは続々トレンド入りした。

視聴率は1月2日(前編)が1.0%、3日(後編)が0.2%(ビデオリサーチ関東)。深夜帯かつEテレであることを差し引いても、決して高いとは言えない数字だ。にもかかわらず両日とも「#平成ネット史」が多くの人にツイートされて、トレンド1位に。この現象、視聴率ランキングでははるか下位ながら、SNSでバズりまくったドラマ『おっさんずラブ』にちょっと似ている。

イベントに登場した「インタラクティブ年表」は顔認証でログインすると属性に合わせて表示される。「あなたはどっち派?」アンケートは220インチの4Kモニターを使った体験型コンテンツ。イベントは4日間だったが、Eテレの単発番組での連動例はほとんどない。(C)NHK

関係者を驚かせたことは他にもあった。番組連動で実施したイベントが予想をはるかに超える盛り上がりを見せたこと。本放送翌週に4日間、渋谷ヒカリエで開催されたイベントには、当初見込みの約2倍、8000人超が来場。顔認証でのログインコンテンツでは登録に90分待ちも出る盛況ぶりで、その7割以上が20~30代だった。番組はアラフォー世代を軸に制作。加えてNHKのイベント客といえば熟年や親子層が大半と言われているだけに、普段あまり縁のない世代の強い反応は、うれしい誤算だったようだ。

■取材過程で方向性を変更

下の世代もうまく取り込めたのは、番組側が一方的にまとめた歴史ではなく、視聴者の興味に寄せた「みんなの歴史」にしたこと。

「もともとは教科書を作る発想で、番組側が選んだテーマを料理していくつもりでしたが、取材すると疑問を投げかけてくる方が多く、これではダメだなと。それぞれが持っているインターネットに対する思いの強さも感じ、視聴者の皆さんの思い出を積み重ねて作る方向にシフトしました」(NHK制作局・角田知慧理ディレクター)

このテーマが厄介なのは、世代によって核となる事柄が全く違うこと。それでもスタッフは散らかるのを覚悟の上で、公式ツイッターアカウントから“思い出集め”を開始。放送時間内に収まらなかったものについては番組冒頭で「NHKが皆さんの意見を基にして選んだネット史なので、どうぞお手柔らかに」と低姿勢で臨んだ。

炎上しやすいテーマにもかかわらず、それがほとんど見受けられなかったことも注目すべき点。

「昨年9月のツイッター開設から11月のスタジオ収録まで、“3カ月で番組のコミュニティーを作る”という形で進めたのですが、それがうまくいったのではと思います。1つのテーマを延々やると炎上しやすいので、今回は掘り下げるより、提示に留める作りを意識しました。矢継ぎ早にエモいテーマがやってくるので、それに反応しているだけで時間が過ぎてしまったのかもしれません」(NHK制作局・千代木太郎チーフプロデューサー)

番組スタッフがネット民の1人として行ったつぶやきもコミュニティー作りに大きく貢献。そもそもこのテーマ、こんなに身近でありながら、テレビではほぼ扱われてこなかったというから意外だ。

「オンエア中、『ああ、誰かと語りたい!』というツイートを大量に目にしました。NHKはコアファンの獲得が得意ではないので、これをいい知見にしていければ」(千代木氏)

続編を望む声も多く、ラジオ版が決定。3月21日にNHKラジオ第1で『ラジオで平成ネット史(仮)』(前半21時5分~21時55分、後半22時10分~23時)が放送される。

(ライター 木村尚恵)

[日経エンタテインメント! 2019年3月号の記事を再構成]

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