救急車は頼れない、重傷者が優先 災害医療の現実

日経Gooday

多くの医療者やボランティアなどが協働する災害医療の現場は、CSCA(表2)のキーワードのもとで管理・運営されるが、この考え方は会社やマンションなど私たちに身近な組織の防災対策にも応用できる。防災担当を決め、会議を開き、避難方法や連絡のフローなど情報共有のルールづくりを行おう。また、家庭や職場、自分がよく行く場所などを想定して、いざというときにとるべき行動をシミュレーションしておくことも大切だ。

いつ起こるか分からない災害に対して、「『自助』の力を高めておくことが最も大事です。そのうえでお隣同士の助け合いである『共助』。救急車やDMATなどの『公助』は最後ですから、当てにしないくらいの心構えで備えておかなければなりません」と久野さんは強調する。

自然災害からテロまで、危機は身近に潜んでいる

ちなみに、災害は地震や津波だけでなく、2018年に発生したような豪雨や洪水、竜巻、など多くの種類がある。自然災害以外に、大規模な交通事故、火災、テロリズムなどの人為災害もあり、自然災害と人為災害が複合したもの(土砂崩れ、海難事故など)もある。

さらに、核(nuclear)・生物(biological)・化学(chemical)兵器によるものは「NBC災害」(特殊災害)と呼ばれる。1995年の地下鉄サリン事件、2013年のボストンマラソン爆発事件といったテロ事件を契機にNBC災害も注目されるようになり、国内外で対策の必要性が高まっている。東京都では2020年の東京オリンピック・パラリンピックを見据えて、研修会や必要な物品の確保などが始まっているという。

「必ずしもテロを想定しなくても、例えば化学物質を輸送するトラックが横転事故を起こす、放射線物質を扱う研究室で爆発事故が起きるなどの可能性があります。潜在的なリスクは意外と身近に潜んでいるのです」(久野さん)

NBC災害の場合、目に見えない原因をどのように検知し、取り扱うかや、除染などの知識も必要になる。一方、同じ地震でも、家屋の倒壊や火災が多かった阪神大震災では外傷や熱傷など外科的なニーズが中心だったのに対し、東日本大震災では津波による被害が甚大だったというように、状況次第で求められる対応は異なる。

また、発災直後には外傷が多いが、長期的には避難所の環境やストレスによる体調不良が増えるなど、時間軸でもニーズは変わってくる。どんな場合に何が必要か、まだ起こっていないことに対する「想像力」と「危機意識」をどれだけ高く持てるか。知識と意識を持って災害に備えよう。

(ライター 塚越小枝子)

久野将宗さん
日本医科大学多摩永山病院救命救急センター医局長・病院講師。1998年日本医科大学卒業。日本医科大学附属病院高度救命救急センター、日本医科大学千葉北総病院、会津中央病院等を経て2002年より日本医科大学多摩永山病院救命救急センターへ。2009年医局長、2011年病院講師。日本救急医学会指導医。東日本大震災(東京都医師会)、常総水害(DMAT)の他、NGO災害人道医療支援会(HuMA)会員として西日本豪雨災害、熊本地震の被災地で災害医療活動を行った。

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