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食べておいしい、見て仰天 ハーブの電子顕微鏡写真

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ナショナルジオグラフィック日本版

マルティン・オエゲルリ氏はこれまで昆虫の卵や花粉、ダニ、虫の目の顕微鏡写真を撮ってきた。しかし、近年は、香辛料にレンズを向け、ローズマリーやラベンダー、セージ、バジル、サフランなど、なじみのあるハーブを撮影している。「地球外生命や異世界を見ているようだ」と話すオエゲルリ氏の写真は、植物を見る目を変える。

◇  ◇  ◇

科学者でもあるオエゲルリ氏は、「現代のレーウェンフック」と呼ぶべき存在だ。アントニ・ファン・レーウェンフックは17世紀後半のアマチュア科学者。身の周りの細部に深く興味を持ち、とりつかれたようにオランダ、デルフトの自宅であらゆる生物を観察した。レーウェンフックの興味は、ミツバチの針やノミの口、果ては自分の精子にまで及んだ。レーウェンフックの興味の対象の一つがハーブだった。黒コショウの実など、台所で使う香辛料を調べたのだ。香辛料がもつ独特の味や香りの源を知りたかったのだろう。

オエゲルリ氏は、レーウェンフックが使ったものよりはるかに高性能な顕微鏡で、同じようにハーブを観察する。同氏は、微小な世界をただ撮るだけではない。実は、電子顕微鏡はモノクロだ。オエゲルリ氏は、写真に色をつけ、強調したり目立たなくしたり調整して、白黒画像では見落とす可能性のある細部を、赤や黄色で見るものを引きつける。

ところで、 レーウェンフックは、コショウの実を水につけて柔らかくし、顕微鏡で観察した。彼はコショウの実の表面には刺激のもととなる小さなトゲがあるのではないかと想像していたが、実際に見つけたのはひだのある小さな球だった。

しかし、レーウェンフックはもっと大きな発見をしている。コショウの実の横で、小さな物体が動いていた。史上初のバクテリアの観察例と言っていいだろう。香辛料の刺激のもとを探して、彼は自分でも気づかぬうちに未知の世界への扉を開いていたのだ。

現在、黒コショウの刺激はトゲのせいではなく、ピペリンと呼ばれる化学物質が原因とわかっている。ピペリンには殺虫効果があり、自然界では、コショウの木やその実を食べる昆虫や菌類に対する殺虫剤や虫除けになる。また、人間に食べられるのを防ぐ役割もある。口の中にある熱を感知する受容体に結合して「食べるな、火傷するぞ」と警告するのだ。しかし昔の人たちは、適切な量ならば、この熱をむしろ美味しく感じるということを発見した。

「現代のレーウェンフック」のオエゲルリ氏は、香辛料を調味料としてではなく、普通の植物として注目している。例えば、生存競争や子孫を増やす方法に焦点を当てているのだ。

ローズマリーやラベンダー、セージ、バジルの葉の特徴は、ほぼすべて自衛本能に関係している。香辛料として利用される植物には、地中海原産のものが多い。厳しい日射しにさらされ、乾燥した気候の中で進化した植物にとって、葉や茎、種の1つ1つが苦労して手に入れたものであり、断固として守るべきものだ。

ラベンダーの白い毛は、葉を直射日光から守り、貴重な水が蒸発するのを防ぐ役割を果たす。ローズマリーやセージにも同じような毛がある。

だが、バジルは違う。セージやラベンダーと同様、シソ科に属すが、進化したのは乾燥地域ではない。料理に使われるバジルの大半の種は、アフリカやアジアの熱帯の湿潤な地域の原産だ。バジルにとって最大の脅威は、干ばつや暑さではなかった。その結果、バジルの葉は比較的柔らかく、ほとんど毛がない。

サフランは雌しべが異常に長い。そして、雌しべに含まれる化学物質のおかげで、食べ物はなぜか色鮮やかに染まり、風味が増す。

サフランはおそらくこの化学物質のおかげで、動物に食べられるのを防ぎ、赤い色で花粉を運ぶ昆虫を引き付けていたのだろう。わかっているのは、かつて授粉のためにサフランの祖先を訪れていただろう昆虫は、今はもうやってこないということだ。

サフランの栽培化が進むうちに、雄花の生殖能力が失われてしまい、現在、サフランはクローンでの繁殖(球根の分球)に頼っている。昆虫が雌しべに飛んでくることはあるかもしれないが、今では、サフランの雌しべには生物学的な機能はなく、祖先が持っていた生殖能力の記念碑のようなものになっている。

オエゲルリ氏が写真にした植物は、私たちの台所でも確認できる。ローズマリーやセージ、ラベンダーの毛は肉眼で見えるし、舌で感じることもできる。葉をちぎると、「小さな風船」から放出された化学物質の香りを嗅ぐことができる。

台所の棚には、塩やクミン、ゴマなど、ほかにも見るべきものがたくさん並んでいる。世界は依然として未知にあふれているのだ。レーウェンフックが始め、オエゲルリ氏が引き継いだ「見る」という仕事に終わりはないだろう。

次ページでも、オエゲルリ氏の顕微鏡写真を紹介する。食べておいしいということを超えたハーブの別の顔が見えるはずだ。

(文 ROB DUNN、写真 MARTIN OEGGERLI、訳 牧野建志、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック 2019年2月2日付記事を再構成]

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