自宅を担保にして老後資金を借りるローン商品の利用者が増えている。「リバースモーゲージ」と呼ばれ、まとまった金額を借りて利息を払いながら、家に住み続けられる仕組みだ。老後生活に備える資金調達手段として考えるなら、商品の構造や注意点をしっかり理解しておく必要がある。
「毎月の返済負担がグッと減った」。東京都内に戸建て住宅を持つAさんは話す。60代になっても住宅ローンの残債が約1000万円もあった。そこで、リバースモーゲージを活用して別の銀行から融資を受け、その資金でローンを完済。毎月の返済額は15万円から2万5千円に減った。
リバースモーゲージは自宅の土地・建物を担保に差し入れて金融機関から融資を受ける。この点は住宅ローンと同じだが、返済の仕組みが大きく異なる。住宅ローンが元本・利息を毎月返済するのに対し、リバースモーゲージは利息のみを毎月払う(図A)。
元本は生存中は返す義務がなく、死亡後、担保である自宅を売却するなどして一括返済するのが基本だ。借入金利は現在、年3%程度と超低利の住宅ローンに比べて高い。それでも借り換えに用いれば、Aさんのように月々の返済額が軽くなることが多い。
相続敬遠の動き
リバースモーゲージは高齢社会で有効な融資法とされるが従来あまり広がらなかった。潮目が変わったのは最近。同分野でトップシェアの東京スター銀行によれば「問い合わせだけでなく利用者が増え続けている」。住宅金融支援機構では「2018年度の申請数は前年比3倍のペース」。同機構は銀行向けに保険を付けて融資する新タイプのリバースモーゲージ「リ・バース60」を展開する。
利用者が増えている理由について富士通総研の米山秀隆・主席研究員は「家を継がせる子供がいなかったり、子供が空き家化を心配して相続を敬遠したりする世帯が増えている」と分析する。家の所有や相続にこだわらないなら、自分の老後資金作りに活用したほうがよいという意識だ。