ひとりで出掛けたいのに妻が…
女優、美村里江さん
定年退職後、映画鑑賞、スポーツ観戦とひとりで楽しく出掛けています。「終わった人」にならず、学生時代を思い出しながらルンルンの毎日です。ただ、書道や卓球、パステル画の教室に通ってそれなりに充実しているはずの妻が「たまには一緒にあちこち連れて行って」とせがむのが少しわずらわしいです。自分は気楽にマイペースで過ごしたいのですが……。(東京都・男性・60代)
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可愛(かわい)らしい奥様ですね! 夫の定年直後の熟年離婚も珍しくなくなった現代。相談者さんを羨ましく思う同世代の男性は、多くいらっしゃるでしょう。
きっと現役時代、相当にお働きになったのでしょうね。勤め上げた誇らしさとエネルギーにあふれるご様子。夫婦で別々の趣味をそんなにたくさんできる台所事情もうかがえ、豊かで素敵(すてき)なセカンドライフというイメージです。
しかし、女性としては「ちょっと待って」と思う私がおります。「ひとり気楽にマイペースで過ごしたい」とのこと。そのご意見を聞いて、奥様からこんな風に提案されたらどう思われますか。
「いいわね、私もひとり気楽にしたいわ!」「じゃあ、まずご飯から。好きな時に好きな物を自分の分だけ作るわね。あなたも自炊や外食にしてくださいな。洗濯や掃除もそれぞれ勝手にやりましょう」「お金の件も綺麗(きれい)に半分でいいかしら。それぞれの外出や老後に充てましょう」「なんならお墓も別々に」と、止めどなく台詞(せりふ)が湧いて参ります。なぜかと言えば、奥様のお気持ちを、私が代弁したい思いに駆られたのです(笑)。
「ひとりで気楽にしたい」相談者さんの想いと同時に、奥様にも「もう少し一緒に過ごしたい」想いがあります。
「たまには一緒に」ということは、時々でいいのです。相談者さんが思うより少ない回数、短時間でも満足しそうな奥様の奥ゆかしさを感じます。そして「あちこち連れて行って」というのですから、奥様の行き先に付き合え、というのではなく、相談者さんの好きな場所へ同伴したいという意味。ずっと忙しく働いたあなたと、同じものを一緒に見て、もっと言葉を交わしたいのです。
相談者さん、長いお勤め、お疲れさまでした。きっと色々なことを我慢されて、「勤め上げたらこんな風に過ごそう!」と思い描いてきた理想の最中ですよね。でも、その期間中、奥様の生活にも、色々なことがあったのです。
ほんの少しだけ、夢の時間を分けてあげてくださいませ。
[NIKKEIプラス1 2019年3月2日付]
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