同僚のLGBT暴露、絶対ダメ 職場で育む「連帯」

野村ホールディングスはLGBT支援者を示すステッカーを社員に配布している(同社提供)
野村ホールディングスはLGBT支援者を示すステッカーを社員に配布している(同社提供)

性的少数者(LGBT)へのハラスメントを防いで過ごしやすい環境を整えようと、企業や行政などで対策が進んでいる。LGBTであることを打ち明けられた際の受け止め方を研修で社員に学んでもらう企業や、区役所の窓口での対応指針を定める自治体も出ている。

同僚からLGBTであることを打ち明けられたとき、どう対応すればいいのか――。野村ホールディングスは2016年から、こうした状況をロールプレイング形式で学ぶ研修を社員向けに実施している。

打ち明けられた側の心得として、他に知っている人がいるかを確認した上で、本人の承諾を得ずに性的指向などを暴露する「アウティング」を絶対にしないことが重要だという。担当者は「やりとりを通じ、当事者が抱える『言いづらさ』に共感してもらえれば」と話す。

商談の場でLGBTをからかうような発言をした場合、冗談のつもりであっても、明かしていない顧客を傷つけ、会社への信頼を失う恐れがあることも説明する。「誤解や差別を招く発言を客観的に正せる『LGBTアライ(支援者)』を社内で増やしていくことが重要だ」(担当者)としている。

多くの市民と接する行政の現場でも対策が進む。東京都文京区は17年3月、職員・教職員向けにLGBTへの対応指針を作成。窓口で示された保険証などに記載された性別と本人の外見が一致しない場合、必要以上に見比べたり聞き直したりせず、周囲に聞こえないよう筆談などで柔軟に対応するよう求めている。

職場内でも性的指向をからかうような発言は人権侵害にあたるとし、「アウティング」がプライバシー侵害であることを明記した。

教育現場では、早稲田大ダイバーシティ推進室が18年4月、教職員向けのガイドを作成。学内から寄せられた「先生が『男らしい、女らしい』という発言をして不快だ」といった相談結果をもとに、事例集を掲載。「アンケートの性別回答欄を二者択一にせず、自由記述にする」「『さん』や『くん』などの呼び分けは行わない」など細かな対策を定め、今春の改訂も予定している。

LGBTを巡る法律問題に詳しい前園進也弁護士は「『アウティング』は秘密をみだりに公開されないというプライバシー権の侵害で、民法上の不法行為だ。状況によっては、被害者は損害賠償を請求できる」と指摘。

「現在の日本社会はLGBTが広く受け入れられているとは言えず、暴露された場合の影響は大きい。過去の裁判では暴露によって『社会的評価が低下した』と指摘されたケースもある。不特定多数の人に知らせた場合には刑法の名誉毀損罪に該当する可能性もあるが、被害者が訴え出る心理的なハードルは高いと思われる」と話している。

■東京五輪の開催もきっかけ
日本で性的少数者(LGBT)に配慮する動きが広がり始めた背景には、2020年東京五輪の開催決定がある。国際オリンピック委員会(IOC)は五輪の憲法ともいえる五輪憲章を14年に改訂し、人種、宗教、性別などと並んで「性的指向」による差別禁止を追加した。それを踏まえて、五輪開催地の東京都は18年10月、LGBTを理由とした差別の禁止を盛り込んだ条例を制定した。LGBTにスポットを当てた条例は都道府県で初めてという。

[日本経済新聞朝刊2019年2月28日付を再構成]