職人をコンサル、日本の工芸を元気に 中川政七商店中川政七商店(上)

雑貨部門は、中川さんの母が「こんなものがあったらいいな」という気持ちを頼りに商品を作っていた。蚊帳の生地を使った「花ふきん」が代表作で、08年度のグッドデザイン金賞も受賞した。しかし、売れ筋商品は欠品続きになる一方、売れない商品の在庫は積み上がるありさまだったという。

「くまモン」のデザイナー迎える

伝統を生かした暮らしの道具を扱う「中川政七商店」の店舗=中川政七商店提供

受注と生産の管理を紙からデジタルに置き換えるところからスタートした。収支をみて、適正な在庫量を把握する。こうした地道な積み上げで、少しずつ雑貨部門の収支を安定させた。

さらにテコ入れ策の一つとして取り組んだのが、受注生産から作って売るSPAへの転換だ。そのためには、ブランディングが欠かせない。「くまモン」のデザイナーとして知られるクリエーティブディレクターの水野学さんを迎え、消費者に選ばれるブランドづくりを進めた。

中川さんが入社して1~2年のうちに、同社の「遊中川」は東京の玉川高島屋S.Cなど、大手百貨店や駅ビルに相次いで出店するようになっていた。工芸の分野では日本初とされるSPAを確立した。

一方で、別の問題にも気づく。

「もう会社を畳みます」。こうあいさつしにくる取引先の企業が、年に何十社もあった。工芸業界は発注を受けて生産するスタイルがほとんど。注文は産地の問屋がとってきてくれるのが昔ながらのやり方だ。ところが、産地問屋は「中国などで安価な商品が作られるようになって崩壊した。プロデューサー的な役割を担っていた問屋がいなくなり、日本の工芸は崩壊の危機にある」。現社長の千石あやさんは指摘する。

自社工場を持たない中川政七商店にとって、取引先のメーカーや職人の廃業は打撃だ。工芸の崩壊を黙って見ているわけにはいかなかった。

「廃業の縁にある人たちが直面する危機は、雑貨部門の課題と全く同じだった」(千石さん)。決算書がない、スケジュール管理ができていない、生産管理がなっていない――。このような課題は、中川さんのノウハウである程度解決できるのではないか。ブランド力のある商品を作れれば、安価な輸入品に勝ち、小さな工芸の企業や職人もビジネスを展開できるのではないか。こうして工芸分野に特化したコンサルティング事業が始まった。09年のことだ。

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