人気インフルエンサーゆうこす なぜモテにこだわるか
元・HKT48所属のアイドルとして活躍後、2016年からトップインフルエンサーとして、YouTuber、SNSアドバイザーやコスメプロデューサーとして大活躍のゆうこすこと菅本裕子さん。ゆうこすさんの発信はなぜ多くの女性をひき付けるのか。「モテクリエイター」として徹底的に「モテ」にこだわった発信方法やインフルエンサーとしてビジネスを続けている理由と思いについて、じっくりお話を聞きました。
私は巻き髪や花柄、ピンクもいとわない!
「こんなご時世にモテたいとか言ってる私、おかしいですよね(笑)? 」――ゆうこすさんが切り出しました。
「でも、ぶりっ子しないなんて、私には無理、無理! 『男性受けファッションの王道』とか言われても、ワンピや巻き髪、花柄、ピンクが普通に大好きなだけなんですっ!」
この日もピンクの小花柄ブラウスをまとい、柔らかな笑顔で語ってくれたゆうこすさん。2016年にSNSを中心に「モテクリエイター」として活動を始め、現在のフォロワー数はインスタグラムで39万2000人、Twitterで27万7000人超え。YouTubeで配信している「ゆうこすモテちゃんねる」では、50万4000人の登録者数を誇ります。インフルエンサーとして圧倒的な存在感を放つゆうこすさんは「でも、世の中のすべての人に好かれることは目指していない」とキッパリ。
「私が発信していることに共感してくれる人だけ集まってくれたらいいかなーと思っているんです。プロデュースしたコスメ『ユアンジュ』だって、私と同じ悩みを持つ人に手に取ってもらえればいい。私は、SNSや動画配信、イベント、プロデュース業を通じて、自分に共感してくれる人との接点を多く持ちたいんです」
そんなゆうこすさんの活動の原点は、HKT48 のメンバーとしてアイドルデビューを果たし、脱退した後のニート生活にあります。当時は元アイドルということもあり、SNSの炎上は日常茶飯事。理不尽な誹謗(ひぼう)中傷を受け、人前に出ることすら嫌になってしまったこともありました。しかし、ニートだったため生活が厳しく、ファンに向けたイベントを開催し、何とか仕事をしようと考えました。
「アイドル時代の握手会ではグループで1、2位の人気をいただいていたし、何とかなると思っていました。でも実際にイベントをやったら、大きな会場に3人しか来ない(笑)。それまで、少してんぐになっていたんでしょうね。高い鼻をぽっきーんと折られて、プライドもズタズタ」とその時のことを振り返ります。
ゆうこすさんは、イベントに来てくれた3人の来場者に「私の何がダメ?」と尋ねたそうです。「全員が『何を応援しているのか分からない』と。『私、このままではダメだ』と思ったし、これからも芸能界で頑張っていく気持ちには1ミリもなれなかったですね」
どん底からのはい上がり作戦は「仲間を増やすこと」
プライドが打ち砕かれたこの出来事で、「共感されなければ、応援される人になれない」と気付いたゆうこすさんは、「まず、自分のコアなファン、フォロワーを100人つくろう」と思い立ちます。「共感ポイントを高めるにはどうしたらいいか」を考え抜き、まず「自分自身を深く知る」ことを最初の課題に掲げました。
そこで始めたのが、その日に経験し、感じたことを細かくノートに書き出すこと。例えば食事に出掛けたら、料理を見て、実際に食べてどう感じたか。なぜそう思ったのかを一つひとつ振り返って言葉にしていきました。Twitterでは、一つの出来事で感じたことを簡潔に伝えないといけないので、その出来事の「キャッチコピーを最後に必ずつける!」というクセをつけていたそうです。
「ある時から、コピーに『モテ』が入りだしたんです(笑)。なぜだろう、と思って考えたら、私がもともとアイドルやっていたのも、ニート中に料理の道を志してみたのも、全部一言でまとめるとモテたかったんだな、って。そこで、 モテに関することだったら、無理せず、自然に発信できるし、自分のストーリーも語れるし、新しい何かを創造できる。共感しない人もいるだろうけど、例えばクラスの一人くらいはファンになってくれるかもしれない。そう思って、あえて『モテクリエイター』を名乗り、発信することにしたんです」
この時に、ゆうこすさんが意識していたのは、自分を「マンガの主人公」に見立てること。自分自身を、一度物語の主役に置き換えて見渡し、主人公として感情移入してもらえるようなストーリーが描けるかを考えてみたそうです。そして、起承転結を構成するように、「○月からインスタを始めて、フォロワー数が△△人になったらイベントを開催して、スタイルブックを出して……」とストーリーを描き出し、行動に移していきました。
そして、完全にモテキャラに振り切ったところ、フォロワーが少しずつ増え、半年後に開催したイベントでは170枚のチケットが即完売。中でもインスタグラムを通じてファンになった女性が4割を占めていました。
「やっと『どん底からはい上がった』感がありましたね。SNSの炎上も経験したけど、やっぱり自分が熱意を持って、好きなことを発信していたから、たくさんの仲間に会えたんだと思います。SNSって自分が見る側だったら、好きな物やこと、つまり、自分が共感している人にしかたどり着かないんです。たとえ、SNS上でたたかれていたとしても、味方になってくれる人とも出会える。それがSNSの魅力だし、使い方なんだと思います」
見た目をかわいくすることだけが女子力?
「実は、私が『モテ』という言葉を使っているのは、キャッチーなフレーズで人を引きつけたいから」と、ゆうこすさんは強調します。
「私の中で、一番『モテる』女性って、いつもポジティブでキラキラしていて、仕事も、プライベートも充実させていて、とにかく笑顔がすてきな人。そういう人は、男女問わず、自分自身もその周りの人も輝いている気がして。私もそういう人になりたいって、昔からずっと思っていました。だから、私が発信しているのは『自分に自信が持てる』とか『自分に似合う』などがテーマなんです。ありきたりだけど皆に伝えたいのは『ポジティブになろう!』っていうメッセージなんです」
しかし、ゆうこすさんは「女子力」については、「定義が曖昧ですよね」と首をかしげます。
「本当にモテる、女子力のある人って、相手に合わせる力も持ちつつ、自分の軸がしっかりある人だと思います。いろいろなことを楽しめる余裕がある人なら、きっと『女子力』なんて問題にならないはず! そりゃ、見た目をかわいくしたり、料理を取り分けたりするのって、やってマイナスにはならないし、楽しければ、女子力を発揮すればいい。ただ、好きな人から褒められたいばかりに『あなたの言うことは何でも聞く』みたいに相手に依存してしまうのは面白くないですよね……!」
「自分に#(ハッシュタグ)を付ける」に命を懸ける!
「ゆうこす=モテクリエイター」、「ゆうこすと言えば『モテ』」という自分の軸が確立したおかげで、新しいことにも挑戦しやすくなったそうです。例えば、「モテメイク」「モテ料理」など、自分の「好き」と「興味のあること」を絡めれば、すぐに仕事のチャンスにつながる。近い将来、もともと大好きだったガジェットのプロデュースも行う予定。そんな今を「まるで魔法使いになった気分」とゆうこすさんは語ります。
一方で、インフルエンサーを育てるプロジェクトも推進中。「共感を集めるには、一過性のかわいさや華やかさだけではダメ」と言い、自分の言葉で語り、自分の旗印を掲げることができる、「軸」のあるインフルエンサーの育成に力を注いでいます。
「自分に『#(ハッシュタグ)』が付けられるくらい、『私はこれ』という自分の軸を持つ。SNSでも仕事でもなんでも、なぜ自分がそれをやっているのかを、自分自身が理解していないと、軸を定めるのは難しいんです。でも、軸さえあれば、そこに共感してくれる人しか集まらないから、自分も周りもポジティブでいられる。共感で結ばれた人に囲まれることで、人は『愛される』環境にいられるはず!」
「応援してくれる人がいるおかげで、好きなことを仕事にできて、今とても楽しい」とほほ笑むゆうこすさん。doors世代に向け「ポジティブへの転換力が楽しく生きる秘訣」とメッセージをくれました。
「つらいこととか、『くっそー』って思うことがあっても、それをポジティブに変換することが大事。そのためには、自分をちょっと見渡して、ゆとりを持つこと。これには、私の『ノート作戦』がおススメ(笑)。続けているうちに、視野が広がり、考え方も整理できるようになって『つらい』だけの状態から『さあ、どうしよう』と前向きになれる。自分に起きたことをすべてプラスに転換できる力があれば、みんな楽しく生きていけるんじゃないかな」
(取材・文 高橋奈巳=日経doors編集部、写真 飯本貴子)
元・HKT48所属のアイドルとして活躍後、ニート生活を送るも、2016年自己プロデュースを開始。 現在、トップインフルエンサーとして、YouTuber、SNSアドバイザーやコスメプロデュース、旅先のおしゃれスポットを発信する「TaVision」の運営など、幅広く活動中。著書に『SNSで夢を叶える ニートだった私の人生を変えた発信力の育て方』がある。
[日経doors2019年2月18日付の掲載記事を基に再構成]
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