「話すベンツ」未来どうなる 開発者はたまごっち世代

マッシング 現状でも運転以外の70~80%の機能は音声で操作ができ、将来的には100%までねらっていますが、その場合、いろいろなことを考えなければいけません。例えば、現在運転席と助手席の声までは拾いますが、後席に座る人もいますよね。そこまで拾えるのが100%の世界です。

小沢 確かに後部座席で寒い! とか感じる場合はあります。

マッシング ただ、絶対に抵触してはいけないのが安全に関わること。後部座席の子どもが「ブレーキ」と叫んだ瞬間に自動ブレーキが掛かる、というようなことがあってはいけないんです。

小沢 音声操作が進化していくとそういう可能性も見えてきちゃいますね。

「ハイ! メルセデス」と声をかければ、モニター表示と同時に音声でも「どうしますか?」と応答する
編集部注 MBUXの目的について、メルセデス・ベンツは走行中の操作をなるべく簡略化することでドライバーの安全を守ることだといっている。「MBUXは、人工知能(AI)の学習能力によってユーザーごとに個別対応ができる。さらにユーザーの情報を蓄積したAIに対する操作が自然な言語で行える。従来の音声認識機能のように決まった命令語でなく、例えば『暑い』と言うだけで車内温度を下げられる。これにより、走行中に無駄に注意力を奪われることなく安全に運転できる。人間が機械に合わせるのではなく、機械が人間に合わせることで、クルマとドライバーに生まれる心の結びつきを目指している」

「アレクサを使えば」という意見もあったが

小沢 現在この手の自動車UX(※UXはユーザーエクスペリエンス、ユーザー体験。システムを通じて利用者が得られる体験の総称。使いやすさ、使い心地、感動、印象などを重視することが多い)ではMBUXが一番ユニークだと思います。それはなぜでしょう? IT界からの人材の引き抜きとか。

マッシング いいえ。私たちがMBUXの開発を始めたときは、アマゾンの「Alexa(アレクサ)」やアップルの「Siri(シリ)」を使い、統合してクルマに搭載すればいいんじゃないか、という話がありました。しかし私は将来ボイスコントロールが重要になると考え、それらが我々のDNAを持っていることが重要だと考えたのです。なぜならアマゾンならアマゾンなりの哲学でアレクサを、アップルならアップルなりの哲学でシリを開発し、ユーザー体験に違いを生みだしています。

つまりMB(メルセデス・ベンツ)はMB独自の哲学でそれを生みだすべきであり、生みの苦しみはありますが、クルマの中で独自の体験をしてもらうために、独自のシステムを開発すべきだと考えたのです。

小沢 ああいうものは進化していくとどれも似たようなものになる、と思っていたのですが違うんですね。違うキャラクターや違う哲学がそんなに生みだせますか?

マッシング 可能です。確かに我々のテクノロジーの背景には外部サプライヤーの技術があり、さまざまな会社からTTS(テキスト読み上げ機能)やNLU(自然言語理解)などのモジュールを取り入れています。それを、我々の哲学に沿った独自のユーザー経験を提供できるものに作り変えていくのです。

ユーザーエクスペリエンスというのは料理と同じなのです。同じ材料を使ってもシェフがどう調理するかで味は違ってきます。そこには5つ星シェフもいれば、2つ星シェフもいるわけで、同じような材料でもうまく調理すればすばらしいソースが作れるのです。

小沢 なるほど! あなたはユーザーエクスペリエンス界の5つ星シェフだと。

マッシング どうでしょう?(笑)

私もたまごっちで遊んでました(笑)

小沢 ちなみに中国はこの手の技術が大好きで、既にユニークなものが出ています。例えば「NIO(上海蔚来汽車)」という新興EVメーカーのクルマはダッシュボード上に「NOMI(ノミ)」というキャラクターがいて、いつでも会話ができます。

中国のEVメーカー「NIO」に搭載された「NOMI」

マッシング 知っています。ノミは誰かに話しかけているような体験で中国では好評です。日本でもおそらく同様だと思うのですが。例えばアナタは覚えていますか、「たまごっち」を?(笑)

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