『十二番目の天使』にちりばめられた言葉(井上芳雄)第39回

日経エンタテインメント!

井上芳雄です。3月16日からシアタークリエで上演される演劇『十二番目の天使』に出演します。その稽古の真っ最中です。家族を亡くした男と、秘密を抱えた少年の物語で、絶望から希望へと人がどうやって前に進んでいくかを描いた作品です。宝物のような言葉がたくさんちりばめられています。

『十二番目の天使』は3月16日~4月4日まで、日比谷シアタークリエにて上演。その後、新潟ほか全国8カ所で公演

原作はオグ・マンディーノの世界的ベストセラー小説で、その初舞台化になります。僕が演じるのは、ビジネスで大成功を収めた男ジョン。故郷に戻って新生活を始めようとした直後、妻と息子を交通事故で失います。絶望の淵にいたジョンは、幼なじみに頼まれて、地元の少年野球チームの監督を引き受けることになり、ティモシーという少年と出会います。チームの12番目のメンバーである彼は体も小さく、運動神経も良くないのですが、あきらめることなく練習に励みます。その姿を見たジョンは、チームの練習とは別にティモシーに個人練習をつけることを提案。ティモシーのがんばりに触発されるように、チームは快進撃を続けるのですが、彼にはある秘密があった…という話です。

原作を読んで、とても感動的な話で、いろんな人にとって慰めや希望になるだろうと思いました。普通の小説と違うのは、単に物語が進んでいくのではなく、セリフだったり先人たちの名言だったりで、どう生きていくかのヒントとなる言葉がたくさんちりばめられていること。原作者自身、波乱に富んだ人生を送っていて、その経験などを基に多くの自己啓発書を書いている作家なので、そうした要素が強く含まれています。

劇中でも、ティモシーが「僕は絶対、絶対、絶対、絶対あきらめない」と言ったり、ジョンの父親が残した本の中に、米国の政治家ベンジャミン・フランクリンが葬儀の席で語った「悲しむことはないんだ。自分たちは喜びのパーティーに招待されていて、順番が来たら逝っているだけなんだから」という慰めの言葉があったり、いろんな形で宝物のような言葉が出てきます。

自分たちの毎日に使える言葉や物語

ティモシーは「自分は毎日あらゆる面でどんどんよくなっているはずだ」とも言います。僕は昨年、バラエティー番組に出たとき、占師の方に「あなたは日々進歩しない人のことは好きじゃないよね」というようなことを言われたのですが、それを思い出しました。僕も日々よくなりたいと常々思っているし、もし体調が悪かったとしても、そこから何か学ぶことはないかと考えるタイプです。言霊というか、口にすることで実際にそれが実現することもあると思うので、ティモシーの言葉に共感できました。

僕は、自分たちの毎日に使える言葉や物語にすごく引かれるし、演劇はそれを伝えるものでありたい、とも思っています。今回の舞台化は、メッセージを伝えることに重きを置いた感じのちょっと不思議な舞台になっているように思います。

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