ラグビーW杯には1991年の第2回大会から歌い継がれる公式ソングがある。ホルストの組曲「惑星」にある「木星」のメロディーに歌詞をのせた「World In Union」(ワールド・イン・ユニオン)。開催国の著名シンガーが歌ってきたこの曲を、日本大会で担当するのが吉岡さんだ。
――「World In Union」を歌うきっかけは。
「去年の春くらいにお話を聞きました。日本語をずっと歌ってきた女性の声で英語の歌詞って面白いんじゃないかって、目を輝かせて手を挙げてしまったんですけど。W杯が初めてラグビーの主要国以外で開催されると聞いて、すごく重大な事だし、世界中の人に聞いていただく機会になると後から分かり、すごくドキドキしました」
――歌詞についてどうお感じになっていますか。
「『高い山々』がそびえていたり、『荒れ狂う海』が出てきたり、すごく広い景色が広がっているので、そのスケールに後押しされる気持ちで歌いました。普段より身も心も大きくして歌うのが合う曲で、人生で一番スケールの大きな曲に出会ったという感じでした。何かスピリチュアルな感覚すらしちゃうような。大げさかもしれないけど、ブースに入って曲の最後の方を歌っている時、体がふわっと浮いているような。そういう感覚になったのは初めてでした」
――過去のバージョンも聞かれたのですね。
「クラシックっぽいものが多いですよね。私もそういう歌い方にトライすべきかというのもありました。でも、ポップスを歌っている自分にお話をいただいたのと、自分がそんなに背伸びをできないこともあり、培ってきたものを生かせる歌い方をしました。(過去のバージョンは)キーもすごく高かったですけど、無理をしてそわそわした表現にしたくなかった。自分の落ち着くポジションで歌いました」
――英語もかなり練習されたそうですね。
「先生のところに行ける限りは行っていました。あまりばらしたくはないんですけどね。繰り返し発音しては『rとlの発音が違う』『舌を巻きすぎ』『巻かなすぎ』とか。細かいところをずっと地道にやっていく感じで、すごく一生懸命、丁寧につくっていきました」