1週間に1~2回、計60分までのレジスタンス運動(筋力トレーニング)を行うと、心筋梗塞や脳卒中の発症リスクや死亡のリスクが下がる可能性があることが、米国で行われた研究で明らかになりました。
筋トレでも心筋梗塞や脳卒中のリスクは下がる?
心筋梗塞や脳卒中などの、心臓や血管に関わる病気(心血管疾患)は、先進国における主要な死亡原因になっており、リスクを低減するための有効な対策が求められています。これまで、有酸素運動については、心臓や血管に良い影響をもたらすことが分かっていましたが、レジスタンス運動(筋力トレーニング)については一貫した結果は得られていませんでした。
そこで、中国華東師範大学のYanghui Liu氏らは、心血管疾患と死亡のリスクにレジスタンス運動が及ぼす影響を、有酸素運動とは切り離して分析することにしました。
筋肉を増やすことを目的として、例えば大腿部や腹筋など、目指す筋肉に負荷(レジスタンス)をかける動作を繰り返し行う運動。筋力トレーニングとも呼ばれる。
●有酸素運動
長時間続けて行うことが可能な軽度~中等度の運動。体内に酸素を取り入れて、エネルギーを消費させる。メタボリックシンドローム(メタボ)の改善や減量を目的とした人に適しており、ウォーキング、ジョギング、水泳、サイクリングなどが代表例。
Liu氏らは、米国テキサス州Dallasのクリニックでボランティアを募集しました。登録された人々のほとんどが白人で、学歴は高く(80%超が大学卒業以上)、社会経済的地位は中~高レベルでした。これらの人々は、定期的に、心血管疾患の予防を目的とする健康診断と生活習慣(運動、栄養、ストレス管理など)に関するカウンセリングを受けました。
1987年から2006年までに2回以上診察を受けており、登録時点で、心筋梗塞、脳卒中、がんの病歴がなかった1万2591人(18~89歳、平均年齢47歳、21%が女性)を分析対象としました。
有酸素運動については、米国のガイドラインに従ったレベル(500MET-分/週以上、具体的には、中強度の有酸素運動を週に150分、または高強度の有酸素運動を週に75分以上)を実践しているかどうかを尋ねました[注1]。
レジスタンス運動については、フリーウェイトトレーニング(ダンベルやバーベルなど器具を使ったトレーニング)、またはマシンを使ったウェイトトレーニングを1週間に何回、1回ごとに何分くらい行っているかを尋ねて、1週間の総運動時間を計算しました。レジスタンス運動の頻度に基づいて、「週に1回」「週に2回」「週に3回」「週に4回以上」に分類し、さらに、1週間の総運動時間に基づいて、「0分」「1~59分」「60~119分」「120分以上」に分けました。