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大切なのは「人生の質」 生きがい考えて治療を選んだ

がんになっても働き続けたい~医師・唐澤久美子さん(下)

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NIKKEI STYLE

ある日、がんになったら、今まで続けてきた仕事はどうすべきか――。今、がん患者の3人に1人が働く世代(15~64歳)といわれている。しかし、告知された患者が慌てて離職したり、雇用する企業が患者の対応に困惑し、うまく就労支援できなかったりすることが少なくない。自身もがんになったライター・福島恵美が、がんと診断されても希望を持って働き続けるためのヒントを、患者らに聞いていく。

2017年に乳がんになった、東京女子医科大学教授で放射線腫瘍医の唐澤久美子さんに、前編「予定通りがんになった医師 『仕事は辞めなくていい』」ではご自身のがん体験や専門の放射線治療について聞いた。後編ではQOL(クオリティー・オブ・ライフ=生活の質)[注1]を「人生の質」と捉え、治療を選択する考え方を伺った。

自分の人生にとって何が大切なのかを指標に

――唐澤さんは、ドキュメンタリー映画「がんになる前に知っておくこと」(2019年2月2日からロードショー、全国で順次公開)に対話者の一人として出演され、QOLを「人生の質」と考えて治療を選ぶことの大切さを語っておられます。ご自身ががんになってから、その考えに行き着いたのでしょうか。

QOLを「人生の質」と考えるのは当然のことです。がん患者さんを30年間拝見し、ずっとそう思って生きてきています。自分ががんになって、初めて気付くような医師ではダメですよね。

自分の人生にとって、何が大事なのか。人生の目的や生きがいは、人ぞれぞれです。私は、生存率をただ上げるための治療を一方的に勧めるのではなく、患者さんの考えを聞いて、その人にとって大事なことをどれだけ達成できるかを指標にして、相談の上で治療を組み立てるべきだと思っています。

私の場合は、乳房温存手術の前に、抗がん剤治療をするのが標準治療[注2]でした。しかし、もともと薬に弱い体質で、副作用が強く出て具合が悪くなり入院したので、「廃人のようになって生きるよりも、医師として仕事をし、人の役に立ちたい」と思い、抗がん剤治療を断念しました。

標準治療はすべての人にベストとは限らない

――標準治療をすることが、必ずしもベストとはいえないケースもあるということですか。

標準治療を行うことは基本です。だから、標準治療をやめなさいと言っているわけではありません。ただ、それがすべての人に最も良い治療とは限らないということです。医師は患者さんの体力や年齢、合併症などの体の状態をみた上で、その方の考えを聞き、社会的な状況などを総合的に判断し、その人にとって最も良い治療を提示すべきだと思います。

同じがんであっても、治療法は一人ひとり違います。患者さんの話(物語)をよく聞き、その人の考えや生活を尊重する医療の取り組み「ナラティブ・ベイスト・メディスン(NBM)」(物語と対話に基づく医療)ができることが、医師には求められるのではないでしょうか。

[注1]治療や療養する患者の肉体的、精神的、社会的、経済的を含む、すべての生活の質を意味する。治療効果だけでなく、自分らしい生活の質が維持できることを目指す考え方

[注2]科学的根拠に基づいた視点で、現在利用できる最良の治療とされ、ある状態の一般的な患者に、使われることが勧められている治療

一方、患者さんは自分の人生で大切にしたいことを、ちゃんと医師に言わないといけません。対話をしてお互いの話をすり合わせ、最終的には患者さんが治療を選ぶことになります。

患者の気持ちと医師の意見を交換し合う

――体調のことだけでなく、自分が何を優先して生きていきたいのかを、主治医にきちんと伝えることが大事なのですね。

そうですね。患者さんの気持ちと医師の意見を、お互いに交換し合うことが大切だと思います。例えば、やりたいことがあって、これ以上つらい治療はしたくないという、90歳のがん患者さんがいたとします。私ならその気持ちを尊重し、強い抗がん剤治療はしません。けれど、診療ガイドライン[注3]は年齢別に書かれていませんから、この方の標準治療は抗がん剤治療をすることになっていたりするわけです。

ただ、中には「お芝居を見に行きたいから、抗がん剤治療はやめてちょうだい」なんていう人もいます。このような場合は、「優先順位が正しくないと思いますよ」とその患者さんにとって必要なことを伝えます。患者さんの望みを何でも聞く人が、いい医師ではありません。

患者の話を聞かない医師なら代えればいい

――病院では診察時間が限られ、待合室にたくさんの患者が待っています。医師が話したいことだけを言い、患者は思うように自分の話を切り出せないこともあるような気がします。

患者さんの話を聞いてくれないような医師は、代えればいいと私は思います。「先生は私の話を聞く時間がないのですか。それなら私は先生の治療を受けません。他の病院に行くから紹介状を書いてください」と言ったっていいんです。

日本では、どの病院のどんな医師に診てもらうかを自分で選べますよね。国によっては、診てもらう医師が地域で決まっていて、自由に選択できないところもあります。治療に要する時間を考えると、長い時間をかけて医師を探すのは、難しいかもしれませんが……。でも、自分の人生ですから自分で決めないとね。

もしくは話を聞かない医師に、ちゃんと話してみる。「先生にとって私は100人に1人の患者かもしれないけど、私の人生がかかっているんです。私の話を聞いてください」というふうに。

私の場合は誰が何と言おうと、がんの専門医、大学教員として生きる私の生きがいを全うできるように、自分が何を優先したいかを医師にしっかり伝えています。そのようにして、自分の治療は自分で決めることにしています。

――「自分の治療は自分で決める」ですね。そう聞くと、それは高度な専門知識を持っている唐澤先生のような人だからこそできることと思う人も多いかもしれません。でも、おっしゃりたいのは、医師の言葉をただうのみにするのではなく、少なくとも自分がどう生きたいかを主張することが大切ということ。そして、そのためには前回記事「予定通りがんになった医師 『仕事は辞めなくていい』」でおっしゃっていたように、学会が出している書籍や国立がん研究センターのホームページで調べるなどして、自分の病気について正しい知識を身に付けることが不可欠、ということですね。大変参考になりました。ありがとうございました。

[注3]診療や治療に関する、標準的な推奨事項とその根拠をまとめたもの。ある状態の一般的な患者を想定し、診療上の意思決定を適切に行えるように支援することを目的としている

(ライター 福島恵美、カメラマン 村田わかな)

唐澤久美子さん
東京女子医科大学 医学部長・放射線腫瘍学講座教授。1986年東京女子医科大学放射線科入局。同大学放射線医学講座講師、順天堂大学医学部放射線医学講座助教授などを経て、2011年放射線医学総合研究所重粒子医科学センター病院治療課第三治療室長。 15年東京女子医科大学放射線腫瘍学講座教授・講座主任。18年4月から同大学理事・医学部長。専門分野はがん放射線療法(とくに乳がんなど)、粒子線治療。放射線治療専門医、がん治療認定医、乳癌学会乳腺専門医。

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