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「バイトテロ」で株下落 株主は損失を請求できる? 弁護士 志賀剛一

2019/2/28

しかし、収益悪化は様々な要因で発生しうるので、私はこの立証もそれほど容易ではないとみています。なお、アルバイトに対して廃棄された食材や店舗の清掃、新しい備品の購入、クレームへの対応などの費用や、申し出た客に返金する飲食代金などは請求できると解されます。

■株価が下落し続けていたら?

さて、保有している株式が下落した株主が、発行企業やアルバイトにその下落分を請求できないかというのが今回の相談です。

くらコーポレーションの場合、不適切動画発覚後、いったん値下がりしたものの、2月22日の終値は2月5日の終値を80円上回っており、すでに株価は回復しています。それ以外に不適切動画が発覚した各企業の株価を見ても、大きく下落している企業はないように見受けられます。もちろん、各企業が「民事・刑事上両面の法的手続きをとる」と公表したことが好感された可能性はあります。

このため、あなたがくらコーポレーションの株主であるとすると、そもそも損失が発生していないことになりますが、仮に下落し続けていた場合を想定して話を進めていきましょう。

■金商法に基づく賠償請求は?

株式投資は自分自身の判断と責任に基づいて行わなければならないという「自己責任」の原則があります。常に株価が上がり続ける企業など存在しないのですから、損失の都度、企業がすべての株主に損失を補填していたら、自己責任の原則に反するのみならず、その補填によって企業が先に倒れてしまうでしょう。

このため、株価の下落を企業に請求することは原則としてできません。しかし、投資家が安心して株式投資をするためには、株式市場の公正性や透明性が維持されていることが大前提です。発行企業が有価証券報告書に虚偽の記載をしていれば投資家を欺く行為で、金融商品取引法という法律ではこの虚偽記載によって生じた株価の下落について、例外的に推定規定を置いて救済を図っています。

ただ、バイトテロによる株価下落は有価証券報告書の虚偽記載とは関係がないので、金商法に基づく損害賠償請求はできません。

■株主代表訴訟、訴える相手は取締役

では、アルバイトに対して株主が直接、株価下落分の損害賠償請求ができるでしょうか。株価は企業の個別要因(業績、経営者交代、不祥事など)のみならず、様々な外的要因(国内外の景気、金利、為替、政治情勢、天候、自然災害など)の複合的要因で上下するので、前述した相当因果関係の立証は困難だと考えます。

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