「バイトテロ」で株下落 株主は損失を請求できる?弁護士 志賀剛一

写真はイメージ=PIXTA
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Case:51 最近、私が保有している株式の株価が大幅に下落しました。飲食店アルバイトの悪ふざけ動画がインスタグラムに投稿され、「炎上」したことが原因です。下落の損失を会社やアルバイトに請求することはできるでしょうか。

悪ふざけ動画の投稿でSNSが炎上

牛丼チェーン、回転寿司チェーン、カラオケ店、コンビニエンスストア……。インスタグラムやツイッターといったSNS(交流サイト)にアルバイトが悪ふざけの不適切動画を投稿し、瞬く間に拡散して非難が殺到する状態、いわゆる「炎上」が毎週、いや、毎日のように繰り返されています。ネット用語では「バイトテロ」と呼ばれているようです。

運営会社が上場企業であれば株価にも影響します。アルバイトに対して店や運営会社が民事上、刑事上の責任追及ができるかというコラムはネット上に多数掲載されていますが、運営会社が上場企業である場合に株価との関係を説明したものはあまりなく、また、株価の下落と企業収益の悪化を混同していると思われる解説も散見されます。

まず、相談の内容とは異なりますが、運営会社がアルバイトに株価下落の責任を問うことが可能かどうかを検討したいと思います。

時価総額の減少=企業の損害ではない

回転寿司チェーンのくら寿司では、アルバイト店員が調理していた魚をいったんゴミ箱に捨てた後、まな板に戻した動画が拡散。くらコーポレーションの株価は前日比で130円下落し、2019年2月6日の終値が5520円となりました。これによって時価総額が「1日で27億円吹っ飛んだ」という報道があり、ネットやテレビ上には運営会社が負ったその「損害」をアルバイト店員が賠償しなければならないかのような見解もありました。

これは誤解で、運営会社が当該アルバイトに対し株価下落分の請求をすることはできません。もともと、株式を公開している上場企業の株価は常に上がったり下がったりしています。株式の時価総額は上場企業の株価に発行済み株式数を掛けたもので、企業価値を評価する際の指標の一つにすぎず、時価総額の減少=当該企業の損害とはなりません。

つまり、企業に「損害」が発生しているとは言い難いのです。厳密にいえば、時価総額が下がれば資金調達がしにくくなるなど、長い目で見れば不利益が発生してくるでしょうが、それは株価下落分とイコールではありませんし、金額算定も難しいでしょう。

収益悪化、要因は様々

株価下落とは異なり、不適切な投稿によって売り上げが減少し、収益悪化が発生すればそれは企業の損害といえます。したがって、アルバイトの不適切動画と収益悪化という結果との間に「社会常識的に見たら、その結果が生じるといえる因果関係」(「相当因果関係」といいます)があると立証できれば、運営会社はアルバイトに対して賠償請求をすることは可能でしょう。

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