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LGBT実録映画、女性から第三の性へ 自分探しの旅

LGBT運動家のジェマ・ヒッキーさんインタビュー

編集委員 小林明

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NIKKEI STYLE

カナダで同性婚合法化を実現したLGBT運動のリーダーで、同国で初めて男女の記載がない出生証明書を取得したジェマ・ヒッキーさん(42)がこのほど初来日し、自らの生い立ちや家族関係、ジェンダー移行、法改正運動などの軌跡を描いたドキュメンタリー映画「Just Be Gemma」の上映会や討論会を東京・赤坂のカナダ大使館で開いた。

同映画の中でジェマさんは幼年時代から自分の性別に関する苦悩や神父による性的虐待、自殺未遂、脅迫、ホルモン療法、乳房切除、恋愛体験など波乱に満ちた半生を告白。さらに著書「Almost Feral」を今年6月に出版する予定で執筆に取り組んでいる。どんな環境で生まれ育ち、どんな思いで様々な苦難を乗り越えてきたのか? 来日したジェマさんにインタビューした。

一見すると男性、でも男でも女でもない第三の性「X」

カナダ大使館で取材に応じてくれたジェマさんはやや小柄だががっちりした体格。ユーモアを交えてにこやかに話す声は低く、落ち着いた物腰やそぶりだけ見ると男性のように思える。だが、実際はカナダ北東部で女児として生まれ、男性「M」でも女性「F」でもなく、第三の性である「X」(ノンバイナリー)と記載された出生証明書を得る2017年12月まで戸籍上、女性として生きてきたという。

――自分の性に違和感を覚えたのはいつごろですか。

「子どもの頃から違和感はあった。母が私に着せようとする女の子らしい服がどうしても気に入らず、ビリビリと引き裂いたりしていた。10代になり、男の子とデートしようと試みたが、やはりしっくりこない。それで男の子よりも女の子が好きだと気づき、最初は自分がレズビアンだと思い込んでいた。まだトランスジェンダー(出生時の性と自身が認識する性が一致しない人)という言葉がなかった時代のことだ」

――悩んだあげく、自殺未遂を起こしたそうですね。

「学校や教会から同性愛が過ちだと教えられていたので、自分は間違っていると感じ、自分のことが好きになれなかった。セラピーを受けても解決できず、結局、自殺未遂を起こしてしまった。幸い命はとりとめることができたが、その時、自分と同じような悩みを抱える若者がつらい体験をしないように活動したいと思うようになった。以来、LGBT運動に関わり始め、団体活動を通じて運動を広げ、2005年にはカナダで初めて同性婚の合法化を実現した」

慈善イベントで覚醒、自分はトランスジェンダー

――映画「Just Be Gemma」(カナダで放映・上映、日本での公開は未定)では男性ホルモンを自らに注射し、乳房の切除手術を受ける過程が克明に描かれていますね。

「2015年12月にホルモン注射を打ち始め、17年1月に乳房の切除手術を受けたのは、自分が男でも女でもなく、第三の性であるノンバイナリーだと気づいたから。女性であることに違和感があったが、女として生まれ、女として生きてきたので、自分が男だという感覚にもなれなかった」

――自分の本来の性に気づくきっかけがあったのですか。

「実はチャリティーで地元のニューファンドランド・ラブラドール州を徒歩で横断した際、体が自分の気持ちにうまくフィットしていないということを悟った。徒歩を通じて自分の体が徐々に変わるのに伴い、自分の精神も変化してきたのだ。嵐に遭い、美しい虹に入った瞬間、これから自分らしくなるためにトランスジェンダーだと告白しよう。乳房を切除する手術を受け、そしてジェマ(本来は女性名)と名乗り続けようと決意した」

母は当惑、祖母の言葉「ジェマでいい」が映画タイトルに

――周囲の反応はどうでしたか。

「母は私を理解しようとしてくれたが、かなり当惑していたようだ。私を娘として産んだはずなのに、突然、どう呼ぶべきか分からない人間に変わってしまうのだから無理もないことだと思う。一方、母方の祖母は理解してくれた。私が『男女の片方だけを選べないんだ』と伝えると、祖母は『それならジェマでいればいい』と言ってくれた。それがドキュメンタリー映画のタイトルにつながっている」

――なぜ映画の撮影を受け入れたのですか。

「性別で悩んでいる若者たちと自分の経験を共有したかったからだ。自分が何者であるかを見つける旅でもあった。ただ家族だけの試写会で、母がかなり感情的な様子だったのを見た時には心が痛んだ。母はいつも私が社会から精神的に傷付けられないかと心配してくれた。結果として、私は自分の権利を持つことができたし、正直な気持ちを表現することもできた。それはとても良かったと思っている」

うれしかったのはトップレスで水泳、トラウマは神父による性的虐待

――ホルモン注射や性転換手術の経過は。

「男性ホルモンを打ち始めると、声がみるみる低くなり、体毛が生えてくるようになった。背中やすねにも毛が生え始めた。ヒゲが生えた自分の顔はかなり気に入っている。逆に頭髪はやや薄くなってしまったようだ。体も筋トレで鍛えている。注射のおかげで筋肉の付き方が激変した。今ではベンチプレスで250パウンド(約114キロ)のバーベルを上げることができる。ホルモン注射は精神面でも若返る効果があり、2回目の思春期が来た感じだ」

 ――今までで最もうれしかった瞬間、つらかった瞬間は。

「最もうれしかったのは乳房を切除し、トップレスで水泳できた瞬間。湖で友人と泳いだが、最高にハッピーだった。胸にあたる水の感触が心地よかった。自由に飛び回る鳥になった気分だ。自分に正直でいられることはすばらしいと思う」

「一方、つらかったのは、幼年期にかわいがってくれた神父から性的虐待を受けたこと。安心して寝ていたら、神父が私の体の上にのしかかってきたので驚き、その間、凍り付いたように体が動かなかった。神父が付けていた十字架が顔に当たったことだけを覚えている。とても不快な体験であり、トラウマとしてずっと私を苦しめている」

自分を呼ぶ代名詞は「They」、性別は流動的なもの

――2017年にカナダで初めて男女の記載がない出生証明書を取得しましたね。

「長年の努力が実った。多くの人々から支援してもらったおかげだ。パスポートや運転免許証にもそれを反映できている。でも一部の人々からは様々な嫌がらせや脅迫も受けてきた。唾を吐きかけられたこともあるし、安全のために転居を強いられたこともある。ただ正義のために闘うんだという自分の意志が揺らいだことはない」

「ちなみに私は自分を呼ぶ代名詞として、SheでもHeでもなく、あえてTheyを使っている。性別は男とか女とか二択で明確に区分されるものではなく、流動的なものだ。個人によっても様々な受け止め方、考え方があることを世の中にもっと知ってほしい」

――日常生活で困ったことはないですか。

「私の外見は男性に見えるが名前は女性なので、セキュリティーチェックでしばしば止められる。また飛行機で移動する際には私が座席を間違えていると思われ、『あなたの席ではありませんよ』とスタッフから声をかけられることもある。母と一緒にいる時、そういうことが起きると、母は泣いてしまう。でも時間をかけて周囲に説明すれば理解してくれるし、性別にXを記載した証明書を見せれば、尊厳を持って扱ってもらえる。それほど問題は感じていない」

――ジェマさんにとって理想の社会とは。

「性差別、民族差別、幼児虐待、トランスジェンダーへの差別がない社会のことだ。とにかく対話と努力を続け、現状を変えることが大切だと考えている」

――夢はなんですか。

「私はもうすでに夢の中で生きている。成功の定義は難しいが、多くの若者たちと社会の障壁について議論し、彼らが生きる場所を提供できるように活動してきた。自分なりに色々なことを体験し、達成してきたことは誇りに思っている。6月には女性と結婚する予定だ。こんな幸せな人生を歩めるなんて夢にも思っていなかった。今は幸せな新婚生活を送ることに専念したい」

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