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from 日経Gooday

予定通りがんになった医師 「仕事は辞めなくていい」 がんになっても働き続けたい~医師・唐澤久美子さん(上)

日経Gooday

2019/3/4

放射線腫瘍医で2017年に乳がんになった東京女子医科大学教授の唐澤久美子さん

ある日、がんになったら、今まで続けてきた仕事はどうすべきか――。今、がん患者の3人に1人が働く世代(15~64歳)といわれている。しかし、告知された患者が慌てて離職したり、雇用する企業が患者の対応に困惑し、うまく就労支援できなかったりすることが少なくない。自身もがんになったライター・福島恵美が、がんと診断されても希望を持って働き続けるためのヒントを、患者らに聞いていく。

第3回は、放射線腫瘍医で2017年に乳がんになった東京女子医科大学教授の唐澤久美子さんに、がんについて思うことやがんの三大治療の1つ、放射線治療について伺った。

■乳がんになったのは「予定通り」!?

――唐澤さんは、どのようにして乳がんが見つかったのですか。

定期的に自分で触診をしていましたが、その頃しばらく触っていなくて、久しぶりにお風呂で触診をしてしこりに気付きました。その日のうちに勤めている大学病院の乳腺の医師に連絡し、翌日、生検をしてもらい、乳がんと診断されたのです。うちの家系はがんになっている人が多く、私もたぶん乳がんになるだろうと思っていたから、言ってみれば「予定通り」。58歳でがんになるのは、家族の中では遅いほうです。

乳がんのタイプにより主治医から、手術前の抗がん剤治療を勧められました。私は乳腺専門医でもありますし、乳がんの治療のことはよく分かっていますので、手術前の抗がん剤治療を選択しました。もともと薬に弱い体質で、抗がん剤治療が予定通りできるか心配していたのですが、案の定、薬疹[注1]や下痢、白血球減少による憩室炎[注2]などの副作用が強く出て入院することに。このままでは医師としての務めが果たせないと考え、標準治療[注3]の薬物療法は途中でやめて、乳房温存手術を受けました。

乳房温存手術は、がんの中では比較的簡単な手術で、入院したのは水曜から土曜の4日間。外来診療を1日休みましたが、翌週の月曜から外来診療し、その日は依頼された講演会の予定も入っていたので夕方から講演しました。手術で切っているから傷口はしばらく痛みます。でも、仕事の支障にはなりませんでした。

その後、自分で放射線治療計画を立てて放射線治療をし、現在は抗がん剤とホルモン剤を服用しています。放射線治療中も普通に仕事ができ、日ごろから自分の患者さんに言っていた通り、放射線治療は大したことはなかったです。

もちろん放射線治療に限らず、手術も抗がん剤治療も、がんの治療には副作用があります。放射線治療なら照射する部位や範囲、放射線の種類などによって色々な副作用が出ますが、その症状や程度は様々です。私の場合は照射した部位の一時的な軽度の皮膚炎、発汗低下と皮脂欠乏程度です。

■2人に1人がなるがんは普通の病気

――がんを経験する前と後で、変わったことはありますか。

何も変わらないですね。強いて言えば、自分ががん患者になったことで患者さんに気兼ねがなくなったことでしょうか。患者さんの中には心身がつらくて、「先生は患者の気持ちが分からないでしょ」と言われる方がありましたからね。その言葉は言わせませんよって(笑)。

今は2人に1人ががんになります。だから私はがんを特別な病気だと思わないし、そのように思ってほしくありません。「どうして私ががんになるんですか」「うちの家系にがんになった人はいないのに」とおっしゃる方がありますが、今はがんになるのは普通のことです。がんになって治るのも普通のこと。「がんは治らない病気」という根拠のない思い込みも、やめてもらいたいですね。

昔、結核は不治の病といわれ、「なったら死んでしまう」という時代がありました。それと同じことです。何十年かたてば、がんを恐れていたことなど、皆、忘れてしまうでしょう。「がんなのにマラソンを走った」「がんなのに仕事を続けている」とがんを特別視して、あたかもすごいことのように、マスコミに取り上げられるのは嫌ですね。がんになっても仕事をするのは、当たり前のことですから。

■仕事は辞めなくてもいいと医療者は伝えるべき

――インタビュアーである私自身、がんを経験していますが、私の場合、一人暮らしの独身なので、がんになってライターの仕事を辞めるという考えはまったくありませんでした。ただ、まだ多くの人が「がんになると治らないのではないか。働けないのではないか」と思っているように感じます。

[注1]薬物を投与したことが原因で生じる発疹

[注2]胃や腸などの臓器の壁面が拡張してできた袋状の出っ張り「憩室(けいしつ)」に、炎症が起こった状態

[注3]科学的根拠に基づいた視点で、現在利用できる最良の治療とされ、ある状態の一般的な患者に、使われることが勧められている治療

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