遺族年金はもらえるか 知っておくべき5つのポイント

ポイント3 一生もらい続けられる? 再婚したら権利を失う

遺族厚生年金はいったん支給が始まれば、原則、生涯もらい続けることができる。ただし再婚したら権利を失う。事実婚も一緒。「遺族厚生年金をもらっている人が再婚を考えるときは、その年金額と新しいパートナーの収入とを見比べたい」(社労士の井戸美枝さん)。なお、30歳未満で子のいない妻の場合、遺族厚生年金の支給は5年の有期。一方で子のある配偶者や子がもらう遺族基礎年金は、子が18歳になった年度末を過ぎると受けられなくなる。

近年話題の「死後離婚」はどうか。一般に配偶者の死後、「姻族関係終了届」を提出して相手側の親や兄弟らと縁を切ることをいうが、配偶者死亡の際に確定した遺族年金の受給権とは関係ない。受け取り始めた遺族年金はもらい続けることができる。

妻が遺族厚生年金を受け取る場合、年齢に応じた加算があることも知っておきたい。その代表が「中高齢寡婦加算」。40歳以上の子のない妻には年約58万円が遺族厚生年金に上乗せされる。この加算は65歳になるまで。以後は自分の老齢基礎年金を受け取る。生年月日によっては65歳以降に「経過的寡婦加算」をもらえる人もいる。これらは、いずれも「寡婦」と付いているので妻を亡くした夫には出ない。

「65歳になると年金額はそれ以前より増えるイメージがあるが、中高齢寡婦加算が老齢基礎年金に置き換わると金額が減る妻もいる」(社労士の望月厚子さん)。自身に国民年金の第1号被保険者(自営業者ら)の期間があってその間の保険料を払わなかったり、免除手続きをしたりしたケースだ。全額免除すれば年金額は半分しか増えない。夫の死後、第3号被保険者(会社員らに扶養される配偶者)から第1号に変わると、妻は自分で国民年金保険料を払う必要があるが、面倒なので免除申請する人も少なくないという。

ポイント4 夫の年金の4分の3でない? 65歳から妻の年金と調整

最も多い勘違いは、亡くなった人の年金全体の4分の3をもらえるというもの。実際には遺族厚生年金の金額は老齢厚生年金の4分の3であって、老齢基礎年金などは対象外。「思ったより金額が少ない」という人がいるのはこのためだ。

65歳より前に遺族厚生年金をもらうときは、自分の60代前半の老齢厚生年金と遺族厚生年金のどちらか有利な方を選ぶ。妻がもらうときは金額が高い遺族厚生年金を選ぶ人が多い。65歳からは自分の老齢厚生年金と遺族厚生年金とで支給額の調整をする。以前は65歳までと同様にどちらか選べたが、現在は仕組みが見直されている。

まず自分の老齢厚生年金を全額受給し、その金額が遺族厚生年金額(亡くなった人の老齢厚生年金の4分の3)より少ない場合、差額を遺族厚生年金として受け取る。65歳の前と後で厚生年金の名目上の支給額は変わらないが、非課税の遺族厚生年金部分が減るので手取りが減少することもある。

この調整を知らず、「自分の老齢厚生年金に遺族厚生年金が丸ごと上乗せされると思い込んでいる妻も少なくない」(社労士の永山悦子さん)。夫を亡くした50代後半のB子さんは遺族厚生年金はあったが、自分の年金を増やしたいと厚生年金に入って働いた。65歳が近づいて年金額を調べると、老齢と遺族合計の厚生年金額は全く増えていなかった。自分の老齢厚生年金額が遺族厚生年金額を超えなかったので、差額部分が減っただけ。合計の厚生年金額には影響がなかったからだ。

老齢基礎年金は増え、健康保険料と介護保険料を会社が半分負担してくれるメリットはあった。だがB子さんは「知っていたら厚生年金に加入しないで働いたのに……」と後悔する。その場合、60歳以降は国民年金に任意加入して老齢基礎年金を満額に近づけたうえで、付加保険料を払ってさらに上乗せするという選択肢もあっただろう。

ポイント5 「繰り下げ」は不利? 受取額は65歳時点で計算

最後に、もらい始める年齢を遅らせる「繰り下げ」をしていた人が亡くなったときの注意点を見てみよう。これについては、老齢年金と遺族年金を比較すると理解しやすい。

例えば、ある夫が老齢年金のもらい始めを66歳以降に遅らせれば受給額が増えるが、亡くなった場合、妻がもらう遺族年金は、夫の65歳時点の老齢年金額を基に計算される。もらい始める前の待機中に亡くなっても同じ。「繰り下げた人が先に亡くなると意味を失ってしまう」(社労士の森本幸人さん)。繰り下げはもともと、本人の年金額を増やすのが目的のため、長生きをしないとメリットを十分に得られないというわけだ。

受取額は減るが、65歳より早くもらうことができる「繰り上げ」受給にもデメリットがある。例えば、国民年金には、第1号被保険者(自営業者ら)の夫が亡くなったとき、10年以上の納付期間があるなどすれば、妻は「寡婦年金」と呼ばれる年金を受けることができる。だがこのときに妻が自分の老齢基礎年金を繰り上げていたら、寡婦年金はもらえない。また、老齢基礎年金を繰り上げてもらい始めてから配偶者を亡くすと、65歳になるまで遺族厚生年金を併給して受け取ることはできない。

もうひとつ、厚生年金には60歳を過ぎた人が働きながら年金を受け取ると、年金額の一部、または全額が支給停止になる「在職老齢年金」という制度がある。この仕組みで「年金が全額停止になっていた夫が亡くなると、遺族年金はもらえないと思っている妻がいる」(社労士の望月厚子さん)。実際には支給されるはずだった年金額に基づいて遺族厚生年金を受けることができる。一部停止でも同様だ。

(マネー報道部 土井誠司)

[日経ヴェリタス2019年2月24日付]

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