
――消費者の味覚、嗜好の変化というのはどうとらえているのですか。
これは調査、調査、調査という形で変化を見ています。
――具体的にはどうなのでしょう。例えば重い味から軽い味に好みが変わってきているとか、10年サイクルで変化しているとか。
そんなに単純なものではありません。毎年毎年膨大な調査を続けていて、ある時には軽い味、またある時には本格的な少し濃い味など、その時々で変化しています。ただ、濃い味にしても、決して昔の味ではありません。味覚については本当に色々な要素が絡みますからとても一口では言い表せませんね。専門家を連れてきたら一晩中でも話しますよ。
私は味でも広告、パッケージデザインについても、一切口をはさみません。現場の担当者が決めてくれればいいことで、唯一口を挟むのは倫理上の問題です。「このCMだと、未成年者の飲酒を誘発するのではないか」とか「差別につながりかねないよ」といったことは言います。企業責任が問われますからね。
――ビール類の先行きについてはかなり厳しい見方をされている中で、食とのマッチングを重視したクラフトビールに一筋の光明を見いだしていらっしゃるようですね。ただ、キリングループとしてみると医薬品など、酒類以外も健闘されています。
医薬品分野は相当なものになってきました。これらはすべて発酵技術からきています。ただ、10年先を見通すと、ビールを中心とした酒類、飲料、医薬品のどれをとっても安泰なものはない。特にアルコールの分野は、これから風当たりが強くなる心配があります。
世界保健機関(WHO)が、さんざっぱらたばこ会社をやり玉に挙げてきました。これが一段落したら、次はアルコールに向かう恐れがあります。特に今年はラグビーのワールドカップ、来年はオリンピックがあり、世界中から人が来ます。
その中で、「飲み放題」とか「2時間一本勝負」ということをやっていたら、世界から来た人たちがどう思うか。「適正飲酒」と言っておいて、これはないですね。駅のベンチで寝込んでいる人は、昔ほどいなくなってはいますが、我々としては「アルコールを作っている会社です」と胸を張って言えるか、ということです。