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「飲み放題」を世界はどう見る キリンHD社長の視線キリンホールディングス社長 磯崎功典氏(下)

「これからは発酵の技術を生かして、未病の分野に注力します」と磯崎社長

飲料についても、砂糖の問題、肥満の問題があります。医薬品については、薬価引き下げの問題があります。長い間、大変なお金をかけて新しい医薬品を開発しても、財政事情からジェネリック医薬品の採用や薬価引き下げの問題は避けられない。これで我々、本当に持続的に成長を続けられるのだろうか。そこで、今持っている技術や蓄積で何ができるかを考えた時、「未病」の領域に取り組むことになったわけです。

――まだ病気ではないけれど、このままでは病気になる可能性が高い人たちが対象ですね。

医薬品だと販売に国の承認も必要だし、使うには医者の処方箋もいる。その手前の分野ですね。うちが医薬品を始めたのは1987年から88年ごろで、まだビール事業が強かった時代です。そこから30年余りたった今、ようやく花開こうとしています。「クリスビータ」という、遺伝性くる病の薬が欧米で高く評価されている。米食品医薬品局(FDA)が「ブレークスループロダクト」と言ってくれている画期的商品です。これを中核として開発してきた人は、キリン入社以来、この研究しかしてこなかった。今は50歳を超えています。

キリングループとしては、IT(情報技術)や宇宙開発、電気自動車で世界のトップをいこうなんて考えずに、これまでやって来た発酵・バイオテクノロジー分野の技術と蓄積で勝負をしていく。すべて自前でやると時間がかかるなら、外部の企業などと組むことで開発のスピードを上げていくことも大切です。その分、こちらの取り分は少なくなるかもしれませんが、やはりスピードが大事です。研究者を焦らせてはいけませんから、「何とか10年のレンジで研究を進めてくれ」と言っています。

――昨年でしたか、免疫力向上につながる可能性のあるプラズマ乳酸菌を発表されましたね。

これも画期的な商品でして、一昨年、英国の科学雑誌「ネイチャー」でも取り上げてくれました。多くのお医者さんもその効用は認めてくれていますが、これは医薬品ではなく、サプリメント、食品としてやっていきます。例えばポテトチップスにまぶしたり、ふりかけの中に入れるなど、応用範囲が広いですから。また、昨年は三井物産と一緒に、米国のソーンという会社に出資しました。米国は広いので、そう簡単に医者に行けない。そこで無痛針を着けた注射器を配り、消費者が自分で採血したものをセンターに送ると、それを分析して「あなたの健康状態はこうで、このサプリメントを飲むといいです」と、結果と一緒にサプリを送ってくる。

――三菱商事ではなく、三井物産ですか?

三菱商事を外したのではなく、三井物産が先に出資していたのです(笑)。これらもすべて薬ではなく、健康領域を対象とした食品です。いずれにしても、キリングループは、一般の食品市場に参入することはありませんが、発酵技術を基盤とした医薬品や未病の人を助けるサプリメント・健康食品分野の深掘りをしていく所存です。

磯崎功典(いそざき・よしのり)
1953年生まれ。77年慶応義塾大学経済学部卒業。同年キリンビール入社、神戸支店業務課配属、87年海外留学(米国)。94年経営企画室室長代理、96年マーケティング本部マーケティング統轄部企画担当部長代理。98年キリンホテル開発。2001年キリンビール広報部報道担当部長代理、04年サンミゲル社取締役。07年キリンホールディングス経営企画部長。08年執行役員経営企画部長、10年常務、12年キリンビール社長。13年キリン社長兼キリンビール社長、15年キリンホールディングス社長兼キリン社長。

(ジャーナリスト 加藤秀雄)


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