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九州 味めぐり

白金に輝くスープ 水炊きの温故知新 福岡 旧かつえ

日本経済新聞西部夕刊

2019/2/28

博多の名物、水炊き。鶏を水から煮立たせるシンプルな鍋だからこそ、店ごとに異なる味わいがまた楽しい。この店の「旧」の文字には、昔ながらの古き良き水炊きの味を追求する気概を込めた。

イラスト・広野司

看板はなくコンクリート打ちっ放しのシャープな外観。のれんをくぐると店の奥までスーッと伸びた一枚板のカウンターが出迎える。凜(りん)とした空間に、水炊きを軸とした繊細な和食が調和する。

完全予約制で7千円のコースのみ。店長の池田泰さんは「客ごとにメモを取り、ご来店のたびに様々な食材を楽しんでもらう」。一人ひとり中身を変える心遣いがうれしい。今回はナマコやアコヤ貝など前菜3種から。刺し身4点盛りは氷塊の上に車エビやアラが生け花のように盛られた。目でも味わう演出が粋だ。

あぶったカマスやキンキの香ばしさの余韻に浸りながら水炊きへ。4時間煮込んだスープはうまみが溶け出て白金に輝く。塩味は控えめで小松菜や白菜の緑とマッチする。なんと言ってもつくねが絶品だ。ふわふわの食感は「企業秘密」。芳醇(ほうじゅん)なスープがしみこみ最後まで飽きさせない。

「料理に気を使うのは当たり前。居心地のいい雰囲気作りにこそ気を使う」と池田さん。つかず離れずの距離感、和モダンの空間、洗練された料理。これらが織りなす時間は、温故知新の心を教えてくれる。店の名前のように。

(江里直哉)

〈きゅうかつえ〉福岡市中央区高砂1の6の18 電話092・531・0205

九州 味めぐり」では食べ歩きが大好きな地元在住のライターや日経記者が見つけた九州・沖縄のとっておきの味を紹介します。

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