なぜ人はスマホでポチッとする 米著名教授が法則解明『Tap スマホで買ってしまう9つの理由』著者 アニンディヤ・ゴーシュ氏に聞く

――「端末のさらなる進化で広告への活用方法も変わっていく」と書かれていますが、今後注目されている端末や、商品・サービスはありますか?

モバイル技術の進化は、新しい刺激や変化を生み出します。私は既に次世代の技術力が広告に与える影響について、さまざまな研究室や企業とともに調査、検証を始めています。

中でも注目しているのが、ウェアラブル機器です。常時ネットに接続できるウェアラブル技術の発達により、健康状態や食生活といった生態情報がそのままデータとして活用できるようになりました。これによって保険業界や自動車業界、医療の分野でも、リアルタイムで顧客や患者の状態を把握して、必要なサービス提供ができると考えています。

AIとブロックチェーンを使いこなす企業が勝つ

――今後、企業はIT技術の進化や消費者の行動の変化に、どう備えていけばいいのでしょうか?

人工知能(AI)とブロックチェーンに注目することでしょう。スマートスピーカーやフェイスブックのように、日常生活を便利に快適にするサービスを提供しながら、利用者の興味や嗜好のデータをかなり正確に集められるツールがあります。この大量のデータをAIの機械学習で分析すれば、顧客の関心が高い商品広告につなげられます。

もうひとつはブロックチェーンの活用です。実は現在のデジタル広告の約20%は、ボットによる詐欺行為でクリックされています。つまり実際の顧客に届かないところで広告が浪費されているのです。モバイル広告市場は全世界で2500億ドルと言われていますが、そのうち600億ドルが無駄になっています。この不正行為を防ぐためにブロックチェーン技術が有効になります。

――既にブロックチェーンを広告に活用し、成功した事例はありますか?

現在私が提携しているアメリカのルーシディティ(Lucidity)という企業があります。ここはまさにブロックチェーンを活用したモバイル広告技術を提供する会社で、トヨタとも契約をしています。ブロックチェーン技術を使ってボットによる不正行為を検知した結果、トヨタの宣伝活動の費用効率が21%改善できました。

このように、今後モバイル広告ビジネスはBtoCだけでなく、BtoBにとっても重要な存在であると確信しています。

マーケティングで消費者の真の理解を追求したい

――本書には、モバイル広告活用の具体的事例や分析がぎっしりと詰まっています。今後新たに注目し、書いてみたいと思うテーマはありますか?

本書の調査・分析には15年間を費やしました。研究成果をぜんぶこの本につぎ込んだので、次のことはまだ考えられませんね(笑)。もともと私はデータ解析をして、マーケティングに生かすことが大好きなんです。ですからテーマは何であれ、今後もテクノロジー、分析、マーケティングという3分野を掛けあわせることで消費者行動を研究し続けたいですね。

マーケティングを追求したいと思う根底には、人間を理解したいという気持ちがあるのです。人がどんなことに反応し、その時どんな行動を取るのか。消費者の真の理解を深めたいと思っています。

(フリーランスライター 玉居子泰子)

アニンディヤ・ゴーシュ Anindya Ghose
ニューヨーク大学スターン・スクール・オブ・ビジネス教授で、情報・運営・経営科学・マーケティング学教授も兼任。2014年、海外MBA総合情報サイト「ポエッツ・アンド・クアンツ」にて世界の40歳以下のトップ教授40人に選出される。17年「Thinkers50」が選ぶ将来有望な経営思想家30人にもランクイン。『Tap スマホで買ってしまう9つの理由』は初の著書にして、2018年アクシオム・ビジネス・ブック賞ビジネステクノロジー部門金賞、経済部門銅賞を受賞した。インド、ムンバイ出身。

Tapスマホで買ってしまう9つの理由

著者 : アニンディヤ・ゴーシュ
出版 : 日経BP社
価格 : 2,160円 (税込み)

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