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英国で人気のスパークリング 本家フランス上回る味?

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英国の酒といって誰もがまず思い浮かべるのはウイスキーやジン、ビールだろう。ところが近年、ここに新しく加わり急激に評価を上げている酒がある。スパークリングワインだ。

北海道より高い緯度に位置する英国は糖度が上がらないためブドウの産地には適せず、長らくワイン界では世界有数の輸入国として知られるばかりだった。第2次世界大戦後の1952年には英国初の商業ワイナリーと言われるハンブルドンが登場するなど、涼しい気候で育ちやすいドイツ系のブドウ品種が植えられるようになるが、「当時は世界的にフレッシュでフルーティー、ほんのり甘いワインがもてはやされた時代。おそらく主に国内向けのワインが造られたのでしょう」(英国王室御用達のワイン商ベリー・ブラザーズ&ラッド日本支社セールス・エグゼクティヴ、佐藤正樹さん)と言い、国際市場で高い評価を得るようなワイン造りには結び付かなかったようだ。

風向きが変わったのは1980年代。米国人夫婦が英国南部のウエストサセックス州にスパークリングワイン専門のワイナリー、ナイティンバーを設立したのだ。1988年に同ワイナリーが植えたブドウの樹はピノノワール、シャルドネ、ムニエ種というフランスのシャンパンに使われる3品種。そして、10年後には同ワイナリーのスパークリングワインが、国際的な酒類の品評会「インターナショナル・ワイン&スピリッツ・コンペティション(IWSC)」で初めてトロフィーを獲得する。

実は、ナイティンバーやハンブルドンのある英国のサセックスやハンプシャー州は、シャンパンの産地シャンパーニュ地方で高品質のブドウが育つエリアと同じ白亜紀の石灰岩土壌。シャンパーニュとは、英仏を隔てるドーバー海峡の下を通り「地続き」だと言われている。つまり、スパークリングワインに適したブドウが育つ素地があったというわけだ。加えて、地球の気候の変動が英国のワイン界をさらに大きく変えていく。温暖化により、以前に比べブドウの糖度が上がるようになったのだ。

「英国のスパークリングワイン業界が大きく成長する契機となったのが2003年と言われています。この年ヨーロッパを熱波が襲い、寒冷な土地である英国でもかなりしっかりブドウが熟しました。品評会で賞を取るようなワインが出てきていたこともあり、スパークリングワイン造りに熱い視線が注がれるようになったのです」(佐藤さん)。

ハンブルドンは優れた土壌の畑を持ちながらも一時期は廃れていたのだが、2000年代に復活に向けて動き出す。1999年に現オーナーがワイナリーを入手しスパークリングワインの生産に乗り出したのだ。

2014年に初のスパークリングワインをリリースした同ワイナリー。2015年の英誌『ノーブル・ロット』の企画では、11人の専門家を招いて同様の価格帯のイングリッシュ・スパークリングワインとシャンパン全12本をブラインドテイスティング(ボトルやラベルを隠してテイスティングを行うこと)で比べたところ、再スタートを切ったばかりのハンブルドンのワインが1位に輝いたという。

英国ワインの産業推進組織であるワインズ・オブ・グレイト・ブリテンによれば、現在、同国では年約400万~600万本のワインが生産されているという(2014~17年データ)。

「1990年代にブドウ畑に植えられていたのは、7、8割はドイツ系の品種でしたが、現在は約7割がピノノワール、シャルドネ、ムニエ種。造られるワインも7割近くがスパークリングワインです。これだけ短い期間に状況がまるで変化してしまうというのは驚きです。しかも、シャンパンのコピーではなく、英国ならではの味わいが出せるようになっている。何百年もの歴史を持つシャンパンにすぐは追いつけませんが、遜色のないようなワインも登場しています」(佐藤さん)。

シャンパンとの対決でこれまで特に衆目を集めたのは、2016年に開催されたイングリッシュ・スパークリングワインとシャンパンのブラインドテイスティングの会だろう。英国内で開催された先の企画とは異なり、英国ワイン・スピリッツ協会がパリに乗り込み、フランスの著名専門家たちにブラインドテイスティングを挑んだのだ。

同じようなタイプの2つのワインを飲み比べる内容だったが、ナイティンバーや2003年設立のワイナリー、ガズボーンのワインが相対するシャンパンに比べ高評価を得た。ナイティンバーは、有名メゾン(シャンパンのメーカー)のビルカール・サルモンと対決したのだが、なんと14人の審査員のうち13人はナイティンバーこそがシャンパンだと思ったそうだ。

「英国のスパークリングワインはおおむね北緯50~51度の地域で造られシャンパンの産地より緯度が高いため、どうしてもしっかりとした酸が残ります。ただ、通常ワイン用のブドウは、花が咲いてから100日後くらいに摘果するのが、英国では110日くらいと生育期間を長く取る。こうすると、ブドウの糖度や皮に含まれるポリフェノールが増加、それがワインに複雑感をもたらします。そのため果実感が豊かで酸とのバランスが取れたスパークリングワインができるのです」(佐藤さん)。

一方、パリの対決イベントでやはりシャンパンの有名メゾン、アヤラと対決し高評価を得たガズボーンは、ユニークな取り組みをしている。ミシュランの星付レストランなどでの勤務経験を持つマスターソムリエ(ソムリエの最難関資格)、ローラ・リースさんを2015年より常勤スタッフに迎えたのだ。リースさんはワイナリーが催すテイスティングの会、ディナーのホストやレストラン関係の仕事をするほか、ベースとなるワインのテイスティングやどのようにワインをブレンドするかなどワイン造りにもかかわる。

「ワイナリーでソムリエが本格的にワイン造りにかかわるケースはあまり聞いたことがありません。世界のトレンドや料理とのマリアージュのような提案が可能で、生産者にはない視点からアドバイスができる。いい意味でマーケットの声が取り入れられるのでよりいいワインができる可能性もあるでしょう」と佐藤さんはその利点を指摘する。

「優れたイングリッシュ・スパークリングワインは、果実味と酸による構成がすばらしく、料理にもよく合います。カキやホタテ貝、バターソースと合わせた繊細な味わいの魚などはマリアージュの例です。熟成期間が長いものは、豚ばら肉や鶏肉料理に合いますし、ロゼは英国のイチゴやラズベリーといったフルーツのデザートにとてもよく合うものがあります。レストランで働いていたときはシャンパンのマリアージュも同じように考えていましたが、英国のワインの方が、より果実味やフレッシュさが際立つように感じることがあります」とリースさんは説明する。

「英国のワイン産業が発展するに従い、国内外より多くの興味深い生産者がこの世界に参入しています」とリースさんは言うが、実際、2015年にはシャンパンの中でも指折りの大手メゾンであるテタンジェが英国に進出したとのニュースがメディアをにぎわせた。ちなみにテタンジェの畑はナイティンバーなどとは土壌が異なるという英国南東部ケント州にある。ガズボーンと同州で海に近く、海風の影響で病害が少ないなどの利点があるそうだ。

高い評価を得ているイングリッシュ・スパークリングワインは、シャンパンと同じびん内2次発酵(スティルワインを酵母や糖を加えびん内で再び発酵させ、発生した炭酸ガスを液体に閉じ込める製法)で造られる。この製法を確立したのは、フランスの修道士ドン・ピエール・ペリニヨンだと一般に言われているが、実はこれを編み出したのは英国人だという説もある。

ドン・ペリニヨンに先駆け、1660年代に英国人の科学者クリストファー・メレットが、同製法についての文書を残しているのだ。「びん内2次発酵を行うためには、炭酸ガスがかける圧力に負けない強度を持つびんを造る必要がありますが、産業が発達していた英国ではそうしたびんを造ることができた。また、中米から砂糖を入手しやすい状況があり、この技術を確立させることができたとも言われているのです」(佐藤さん)。

イングリッシュ・スパークリングワインの隆盛は350年の時を経たメレットの執念か――そんな空想にもつい思いをはせたくなるのだ。

(フリーライター メレンダ千春)

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