客のストレスに向き合え 激動アパレルの勝者は
斉藤孝浩著 『アパレル・サバイバル』
ITの進歩はアパレル業界にも変革を促す
ここ10年ほどのファストファッションブームの立役者「H&M」の日本1号店、銀座店が2018年夏に閉店した。背景には、先進国での衣料品販売がネット通販に押されている事情がある。米アマゾン・ドット・コムなどIT(情報技術)企業がファッション分野でも勢力を伸ばすなか、勝者として残る条件は何か。今回の書籍『アパレル・サバイバル』は、欧米の話題企業やサービスを紹介しながら、未来を開く戦略を示す。
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斉藤孝浩氏
著者の斉藤孝浩氏は、1965年生まれ。総合商社や欧州ブランドの日本法人、アパレル専門チェーンなどを経て、ファッション流通コンサルタントに。現在はディマンドワークス(東京・港)の代表を務めます。著書に『ユニクロ対ZARA』(日本経済新聞出版社)などがあります。
客のクローゼット、つかむのが勝者
著者は冒頭で、10年後のある女性のファッションにまつわる日常を描きます。彼女のスマートフォン(スマホ)にはクローゼット管理アプリが入っていて、外出するときは人工知能(AI)が目的に合わせて服をコーディネートしてくれます。足りないアイテムがあれば、お気に入りの店の新作をすぐ注文できるし、着ない服を売るのも簡単です。
洋服を買うのは楽しい半面、手間も時間もかかります。着ていく服を選ぶのに悩むこともあるでしょう。そうしたストレスをITで徹底的に減らすのが、10年後の生活というわけです。そんな時代に適応するには、顧客の信頼を得て「個人情報をどれだけ預けてもらえるかがカギになる」と著者は述べます。
(Her Story 10年後のファッション消費の未来 17ページ)
ストレス排除、買い物をスマートに
欧米の小売店では、ITを使って手間を減らし、快適な買い物を実現するスマートショッピングの取り組みも始まっています。