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フンコロガシのしつこすぎる決闘 貴重な糞を奪い合い

日経ナショナル ジオグラフィック社

2019/3/1

ナショナルジオグラフィック日本版

糞(ふん)をめぐって争う2匹――三角関係を指した比喩ではない。コガネムシ科の糞虫(ふんちゅう:動物の糞を餌とするコガネムシ科の昆虫の総称)にとっては、生き残りを賭けた戦いなのだ。糞は食糧であるばかりか、幼虫を育てる小部屋にもなる。つまり、貴重な資源だ。映像の2匹は、最高の獲物を転がして運び去ろうと必死で、どちらも驚くほどしつこい。

撮影されたのは、南アフリカのジュマ動物保護区。英国のロンドン自然史博物館で甲虫の管理責任者であるマックス・バークレー氏によると、2匹はタマオシコガネの一種Kheper nigroaeneusのようだ。

Kheper nigroaeneusは、南アフリカ、ボツワナ、ジンバブエおよびモザンビークの最南端部に生息する。

この甲虫にとって、糞の価値は大変大きく、「道に落ちていた大金の入った袋のようなものだ」とバークレー氏は説明してくれた。「誰だって、たくさんのお金を安全なところに保管して、まだ残っているなら戻って来てもっと手に入れようとしますよね」と、同氏はメールでの取材に答えている。

バークレー氏によると、糞を奪い合う争いで重要なのは、相手を投げてバランスを崩させることだという。

「硬い翅(はね)をもつ甲虫も、空中から地面に降りた瞬間は一番無防備と言えます。飛ぶ際に利用する大きな薄い翅は傷つきやすく、危険にさらされているからです。この翅が傷ついてしまうと、回復には時間がかかります」。実は、映像で糞を奪おうとしている方は、ほかから飛んできた糞虫だ。まずは安全な距離を保って地面に降り、翅を完全に閉じてから攻撃を仕掛けます、とバークレー氏は指摘する。

つまり、飛んで襲いかかるほうが分が悪いのだ。

米モンタナ州ミズーラにあるモンタナ大学の生物学者で、『動物たちの武器 闘いは進化する』(エクスナレッジ刊)の著者ダグ・エムレン氏によれば、チョウやスズメバチのように空中戦をする昆虫もいるが、体が大きい甲虫は敏捷さとはほど遠いこともあり、争うときは地上戦になるという。

(日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック 2019年2月4日付記事を再構成]

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