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ヤバイTシャツ屋さん 目指すは『紅白』でうちわ振り

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NIKKEI STYLE

10代20代を中心に人気の男女混合3人組ロックバンド、ヤバイTシャツ屋さん(以下、ヤバT)。『無線LANばり便利』『週10ですき家』など、笑えてどこか共感できるタイトルや歌詞と、キャッチーなメロコアサウンドの楽曲が持ち味だ。

近年、メロコア(メロディック・ハードコアの略称。従来のパンクロックよりも、メロディーや歌詞に重点を置いたサウンドが特徴)の音楽シーンからは数年に一度スターが生まれている。17年は、WANIMAがauのCM曲で知名度を上げ、『紅白』にも出場しブレイク。ヤバTはフェスなどでの活躍で音楽ファンの支持を確実なものとし、メディア露出やタイアップ曲の増加で一般層にも認知を広げており、彼らに続く最右翼といえる。

ヤバTは、作詞作曲を担当するギター&ボーカルのこやまたくやが、大阪芸術大学時代の音楽サークルで2012年に結成。13年から、もりもりもと(ドラム)、しばたありぼぼ(ベース&ボーカル)と共に活動を続ける。16年にデビューし、18年は飛躍の年に。3月に『NHKフレッシャーズキャンペーン』のイメージキャラクターに抜てき。5月からは盟友・岡崎体育とレギュラー番組『テンゴちゃん』(NHK総合)も始まった。夏には「ロック・イン・ジャパン・フェスティバル」で約7万人収容のメインステージに初進出し、この1月末からは自身最大規模の全国ツアー中だ。

こやまたくや(以下、こやま) 18年は日本最大級のフェスで、1番大きいステージに立てたことがかなり自信になりましたね。

しばたありぼぼ(以下、しばた) 確かに。あそこに出られるのは1日たった7組やしね。

もりもりもと(以下、もりもと) その日のトリのサザンオールスターズさんは、2曲目で『いとしのエリー』を歌われていて。お客さんが求めるものにちゃんと応える姿勢は本当に勉強になりました。

NHKでレギュラー番組も

こやま 18年はNHKの受信料キャンペーンのキャラクターに選ばれたことも驚きで。女優さんなどがやる枠で、僕らのようなペーペーのバンドが曲を作り、ポスターになり、CMにまで出演するなんて。ゴリゴリに受信料を払っといてよかったなと(笑)。

しばた いやいや受信料の額は、みんな一緒やから!

もりもと 月1回の生放送番組『テンゴちゃん』は、毎回扱うテーマも尖っているから、MCの僕たちが楽しんでます。2時間の生放送中に、5分のテレビ番組をゼロから作ったりとかね。

こやま 視聴者から「いま見たい番組」を募集するとこから始めたもんな。あれは絶対に番組制作の資料VTRになると思う。

しばた あとNHKに出ると、親戚とかの反応がすごいよね(笑)。

デビューからの3年で楽曲も変化してきた。こやまいわく「以前に比べると、言いたいことが増えてきた」ことが大きいという。彼らの自主制作時代からの代表曲で、YouTubeの再生回数が1000万回を超えた『あつまれ!パーティーピーポー』(16年)は、主にパリピと呼ばれる若者たちの生態について歌った、いわばあるあるソングだった。一方、18年12月にリリースした、3rdフルアルバム『Tank‐top Festival in JAPAN』にはメッセージ性の強い楽曲も収録する。

こやまもともとは、歌詞にほぼ意味はなく面白さを追求した『あつまれ!パーティーピーポー』のような楽曲が中心でした。そこから徐々にメッセージを込めた曲を増やしていったんですが、SNSで「また意味のない曲だ」と言われることも多くて。ニューアルバムに収録する『鬼POP激キャッチー最強ハイパーウルトラミュージック』の歌詞には、あえて多めに言いたいことを入れています。

もりもと 「もうCDに価値はないんか/もはやバンドはTシャツ屋さん」と、今の音楽業界についても歌っているもんね。

こやま 今は確かにCDが売れない時代ではあるんですけど、だからこそ売りたい気持ちが強くて。逆に売れないからこそ、ある程度売れれば認められる時代だと思うんです。ただ今は無料で音源は聴けるし、もはやCDはコレクター商品であることも事実。だから手に取ってもらうためには、付録のDVDも撮り下ろすし、ジャケット写真にもこだわり抜きます。

しばた ジャケのデザインはこやまさんがずっと手掛けてて。色味もかわいいから、「インスタ映えする」とファンの方がよくSNSに上げてくれるのはうれしいよね。

こやま バンド名はTシャツ屋さんですが、僕らのキャラクターは「タンクトップくん」。この小ボケをずっと続けてます。

ラブコメ映画の歌詞に苦労

CM曲を手掛けることも増えてきたが、ニューアルバムに収録する『かわE』は、Sexy Zone中島健人と中条あやみがW主演したラブコメディー映画『ニセコイ』の主題歌。初の映画タイアップにも挑戦した。

こやま 僕自身が天邪鬼で、楽曲でストレートに「好き」とか言ってこなかったので、作詞は少し悩みました。サビで「君はかわE越して/かわFやんけ!」と歌ってるんですが、これならラブコメディー感もありつつ、相手に恋愛感情を伝えている感じが出るかなと。

しばた 関西弁もろ出しのところもヤバTっぽいよね。あと「結局この人たちは何がいいたいねん!」みたいなところも(笑)。

もりもと しばたが歌うパートも最近は増えていて、この曲は掛け合いも多く、ユニゾン感もうまく出ていると思いますね。

新たなファンを獲得するため、そして楽曲制作に生かすため、日々のSNSの使い方でも意識していることは多いという。

こやま バンドの公式ツイッターは僕がずっと運用しています。エゴサーチも意識的にやっていて、好意的なつぶやきには必ず「いいね」を。それを地道に5年間続けた結果(笑)、フォロワー数も25万人までいきました。

もりもと 僕はファンのアカウントも結構フォローしてます。彼らが普段どんな音楽を聴いているのかを知ることで、僕らの楽曲にも生かせることもあると思うので。

こやま 作詞作業では自分のSNSもよく見返します。公開版のネタ帳的な(笑)。でも、つぶやき程度の何気ないテーマを歌詞にしたほうが、肩に力も入らずウケも良かったりするんです。あと今後もいろんな曲を作ると思いますが、100%真面目な曲は難しいかな。どれだけ頑張っても20%はふざけた要素が入った曲になると思います(笑)。

しばた 今後の目標ですか? 昔からずっと言っているんですが『NHK紅白歌合戦』ですね。

こやま 周りからは「ネタやろ?」と言われ続けてきたんで、逆に意地になっていて。それを達成しないと次の目標が立てられないぐらいにもなっています。

もりもと 出演できたら自分たちの出番以外のところでも楽しみたいですね。大御所ミュージシャンの後ろで、うちわを振るやつとかもやってみたいし。

2人 それやりたい!(笑)

(ライター 中桐基善)

[日経エンタテインメント! 2019年2月号の記事を再構成]

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