アジフライ多士済々 きつね色の王道からバーガーまで
もうすぐ3月。春から旬の時期に入る魚のひとつがマアジだ。きつね色に揚げ、しょうゆやタルタルソースを絡めていただくアジフライは、子供から大人までご飯がすすむごちそうだ。家庭や定食店などでおなじみのメニューだが、かりっと揚げた王道からバーガーまで最近は多彩になっている。
揚げ時間は1分、アジのおいしさ引き出す
東京・中央の料理店「京ばし松輪」はランチタイムになると行列が絶えない。お目当ては限定70食のアジフライ定食(1300円)だ。「うちの魚は鮮度が自慢」と店主の田中平八郎さんは話す。神奈川県の松輪漁港や千葉県の房総半島でとれたアジを生きたまま仕入れ、店内のいけすで泳がせている。
刺し身でもおいしい鮮度の良いものをさばき、軽く塩を振って一晩寝かせる。「魚の本当のおいしさを味わってほしいから」と揚げ時間はたった1分。あとは余熱で、お客さんに提供するまでの1分でちょうど良い加減に火が通るという。祖父も父も天ぷら職人の田中さん。3世代で付き合いが続く専門店からアジと相性の良いごま油を仕入れている。
おすすめの食べ方はたっぷりの大根おろしにワサビを添え、揚げたてのアジフライにたっぷりのせて、しょうゆを数滴落として、かぶりつく。辛党の人はゆずこしょうをのせても美味。骨まで全部カリカリ食べられる。アジフライ定食は昼のメニューで、1時間ほどで完売する日もあるという。夜はコース(5千円~)のみだが、アジフライが付くコースもあって多彩だ。アジのほか新鮮な刺身や煮魚など旬の魚料理を堪能できる。
ブランド魚「旬アジ」
アジの水揚げ量日本一は長崎県で、中でも同県北部の松浦市でとれるアジは味わいと香りの良さからブランド魚「旬(とき)アジ」として高値で取引されている。松浦市は2018年、「アジフライの聖地を目指す」と宣言した。市内で食べ歩きできるアジフライの人気店約20店を掲載したアジフライマップを作成するなど、総力をあげてアジフライを盛り上げている。
その自慢のアジを提供しているのが東京・渋谷の商業施設「ヒカリエ」にある「d47食堂」だ。
「長崎定食 松浦港のアジフライ」(1550円)は、素材の味を引き出す焙煎(ばいせん)をしていない白ごま油でこんがりきつね色に揚げ、大盛りのキャベツの上に盛りつける。「1匹は塩、1匹はタルタルソースで2度味わってほしい」(料理担当の岡竹善弘さん)。常連客には塩が好評だそうだが、ニンジン、タマゴ、タマネギ、パセリを混ぜたタルタルソースもやはり王道のおいしさだ。
アジフライで新感覚バーガー
東京・目黒の「デリファシャス」は魚をぜいたくに使ったフィッシュバーガー専門店で、人気の一皿が「江戸前アジフライバーガー」(1080円)だ。背開きにし、塩締めした大ぶりのアジをカラリと揚げバンズで挟む。ソースは辛口か甘口、南蛮ソース(+100円)などから選ぶ。店のおすすめは南蛮ソース。ニンジン、ピーマンの薄切りと、とろみを付けた甘酸っぱいソースがアジフライに合う。
魚好きの客が多く訪れる同店。昆布締めした白身に和風だしと豆腐のソースをかけた「昆布〆(しめ)フィッシュバーガー」、カラリと揚げたアナゴと細切りキュウリを挟んだ「活(い)け〆煮穴子の天ぷらドッグ」、特製タルタルソースでいただく「漬けマグロと昆布〆フィッシュ&チップス」など新感覚のバーガーが並ぶ。
アジは味がよいからその名が付いたともいわれている。良質のタンパク源で、血液をサラサラにするエイコサペンタエン酸(EPA)など体に良い栄養も豊富に含む。「アジは春から初夏にかけて、一段とおいしくなる」(d47食堂の岡竹さん)。アジフライの魅力を堪能したい。
(佐々木たくみ)
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