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白河桃子 すごい働き方革命

16時半退社が定時 味の素は誰もが働きやすい会社に 味の素 野坂千秋常務執行役員(上)

2019/2/27

野坂千秋常務執行役員食品研究所長。1983年に味の素に入社。食品研究所原料食材調理工学研究室長、上海の現地法人への出向などを経て、2011年から執行役員、15年から常務執行役員。17年7月からダイバーシティー担当も兼務(写真:吉村永)

味の素が働き方改革、そしてダイバーシティー(人材の多様性)施策に取り組んでいる。16時半を定時退社としたほかテレワーク、フルフレックス制などを導入、育児女性だけでなく全社員が働きやすい環境を目指している。意識改革にも取り組み、最近では「アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)」を解消するための研修にも取り組んでいる。野坂千秋常務執行役員に取り組みの詳細を聞いた。

■ダイバーシティーと働き方改革は同時並行で

白河桃子さん(以下敬称略) 味の素は16時半退社という所定労働時間を短縮する思いきった「働き方改革」が有名です。しかし同時に、本格的なダイバーシティー施策が進んでいると聞いています。野坂さんは食品研究所長という事業を担う責任者でありながら、ダイバーシティー担当役員も兼務されているそうですね。

野坂千秋さん(以下敬称略) はい。2017年7月に発足した「ダイバーシティ推進タスクフォース」は、全社あげての経営戦略の一環としての取り組みです。働き方改革担当役員とも連携し、人事部内に専任者を付け、本社・R&D(研究開発)・生産・営業と各部門ごとに人事担当者を付けて実行力を高めるようにしています。

白河桃子さん

白河 働き方改革とダイバーシティーは同時進行でないと進まないと思っていました。両者は「人事に丸投げ」ではなく経営戦略にどこまで密接かで、経営者の本気度がわかります。ダイバーシティーは人事の中だけに位置付けられるものではないんですね。

野坂 そうです。経営側には常に報告しながら進めています。当社は創業以来、「事業を通じた社会的課題解決への貢献」を使命としていて、その実現のためにはダイバーシティー推進は欠かせない。そういったメッセージを、社長自ら、全社員向けのイントラネットで発信しているんです。

白河 経営トップが明確に発信するという点にも、本気度を感じますね。

野坂 ダイバーシティー推進の全体像からお話しすると、働き方改革と同時に進めてきた歴史があります。第1フェーズとして、ワークライフバランス向上を経営課題として位置付けて本格的にプロジェクト化したのが08年。再雇用制度やコアタイムなしフレックス制度、テレワークの導入など、制度を整備していきました。この段階では、子育て中など制約のある社員の働きづらさを解消する目的でした。

15年からは第2フェーズとして、属性を問わずすべての社員がイキイキと働き、個々のライフスタイルを生かせるための環境実現を。週4回在宅勤務やサテライトオフィスでの勤務ができる「どこでもオフィス」や、所定労働時間の変更といった思い切った施策を始めていきました。

白河 その所定労働時間の変更というのは、とてもインパクトがありました。「全社員、16時半帰り」へと定時を前倒ししたんですよね。最初に聞いた時には所定労働時間短縮による働き方改革の効果が今ひとつ実感できませんでした。「16時半に仕事を終えるなんてできるの? 結局、在宅勤務で残業したら意味がないのでは?」と思ったのですが。

野坂 導入して約2年たちますが、とてもいい形で浸透してきていると思います。私は入社以来ずっと研究所でキャリアを積んできたのですが、グループ長時代の頃には、子育て中の女性が16時ごろに「お先に失礼します」と帰れる雰囲気は残念ながらなかったんです。心置きなく「お先に」「お疲れさま」と言い合える環境がなければ女性活躍の時代にはならないだろう、という思いがありました。

ダイバーシティーで語られる「多様性のある人材」というと、育児や介護など特殊な事情を抱えている人を思い浮かべがちですが、すべての社員一人ひとりが多様な人材の構成要員だと考え、働き方の土壌をそろえていくことが重要です。

誰にとっても活躍しやすい環境を整えることが、一人ひとりのキャリアを途切れさせることなく発展させていき、個々のライフスタイルの多様性を製品に生かしていくことが企業全体の競争力にもつながる。そのためには、これまで常識と考えていた働き方の前提を疑い、新しい時代に合うスタイルを宣言していかないといけません。

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