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16時半退社が定時 味の素は誰もが働きやすい会社に

味の素 野坂千秋常務執行役員(上)

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NIKKEI STYLE

味の素が働き方改革、そしてダイバーシティー(人材の多様性)施策に取り組んでいる。16時半を定時退社としたほかテレワーク、フルフレックス制などを導入、育児女性だけでなく全社員が働きやすい環境を目指している。意識改革にも取り組み、最近では「アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)」を解消するための研修にも取り組んでいる。野坂千秋常務執行役員に取り組みの詳細を聞いた。

ダイバーシティーと働き方改革は同時並行で

白河桃子さん(以下敬称略) 味の素は16時半退社という所定労働時間を短縮する思いきった「働き方改革」が有名です。しかし同時に、本格的なダイバーシティー施策が進んでいると聞いています。野坂さんは食品研究所長という事業を担う責任者でありながら、ダイバーシティー担当役員も兼務されているそうですね。

野坂千秋さん(以下敬称略) はい。2017年7月に発足した「ダイバーシティ推進タスクフォース」は、全社あげての経営戦略の一環としての取り組みです。働き方改革担当役員とも連携し、人事部内に専任者を付け、本社・R&D(研究開発)・生産・営業と各部門ごとに人事担当者を付けて実行力を高めるようにしています。

白河 働き方改革とダイバーシティーは同時進行でないと進まないと思っていました。両者は「人事に丸投げ」ではなく経営戦略にどこまで密接かで、経営者の本気度がわかります。ダイバーシティーは人事の中だけに位置付けられるものではないんですね。

野坂 そうです。経営側には常に報告しながら進めています。当社は創業以来、「事業を通じた社会的課題解決への貢献」を使命としていて、その実現のためにはダイバーシティー推進は欠かせない。そういったメッセージを、社長自ら、全社員向けのイントラネットで発信しているんです。

白河 経営トップが明確に発信するという点にも、本気度を感じますね。

野坂 ダイバーシティー推進の全体像からお話しすると、働き方改革と同時に進めてきた歴史があります。第1フェーズとして、ワークライフバランス向上を経営課題として位置付けて本格的にプロジェクト化したのが08年。再雇用制度やコアタイムなしフレックス制度、テレワークの導入など、制度を整備していきました。この段階では、子育て中など制約のある社員の働きづらさを解消する目的でした。

15年からは第2フェーズとして、属性を問わずすべての社員がイキイキと働き、個々のライフスタイルを生かせるための環境実現を。週4回在宅勤務やサテライトオフィスでの勤務ができる「どこでもオフィス」や、所定労働時間の変更といった思い切った施策を始めていきました。

白河 その所定労働時間の変更というのは、とてもインパクトがありました。「全社員、16時半帰り」へと定時を前倒ししたんですよね。最初に聞いた時には所定労働時間短縮による働き方改革の効果が今ひとつ実感できませんでした。「16時半に仕事を終えるなんてできるの? 結局、在宅勤務で残業したら意味がないのでは?」と思ったのですが。

野坂 導入して約2年たちますが、とてもいい形で浸透してきていると思います。私は入社以来ずっと研究所でキャリアを積んできたのですが、グループ長時代の頃には、子育て中の女性が16時ごろに「お先に失礼します」と帰れる雰囲気は残念ながらなかったんです。心置きなく「お先に」「お疲れさま」と言い合える環境がなければ女性活躍の時代にはならないだろう、という思いがありました。

ダイバーシティーで語られる「多様性のある人材」というと、育児や介護など特殊な事情を抱えている人を思い浮かべがちですが、すべての社員一人ひとりが多様な人材の構成要員だと考え、働き方の土壌をそろえていくことが重要です。

誰にとっても活躍しやすい環境を整えることが、一人ひとりのキャリアを途切れさせることなく発展させていき、個々のライフスタイルの多様性を製品に生かしていくことが企業全体の競争力にもつながる。そのためには、これまで常識と考えていた働き方の前提を疑い、新しい時代に合うスタイルを宣言していかないといけません。

男性社員が家事に参加する機会が増える

白河 西井孝明社長にインタビューさせていただいていたときに「16時半にみんなが帰れば保育園へ迎えにいく人も後ろめたくない」とおっしゃっていましたが、その意識転換が重要なんだと改めてわかります。「プロ経営者」として知られるある方が「女性活躍だけを先にやったら失敗する。働き方改革もセットでやらないと浸透しない」とおっしゃっていたのですが、まさにセットでの戦略を実践しているのですね。

野坂 はい。女性のためだけではない、という姿勢を強調しています。「8時15分出社、16時30分退社」を全社で導入することは、長時間労働を是とするこれまでの働き方を最も分かりやすく否定するメッセージとして、社内外に伝わったのではないかと思います。

白河 本気で女性に活躍してもらうには男性の働き方も変えなければならない。でも、なかなかここまで本気で取り組む会社は珍しいです。「男性の働き方まで変えられますか?」と聞くと、「いや、そこまでは……」と口ごもる企業が大半ですから。非常に画期的ですし、広がってほしいと思います。実際、事業にプラスの効果も出てきているのでしょうか。

野坂 効果の実証はまだこれからになりますが、確実に言えるのは男性も早く帰宅するようになり、家事に参加する機会は増えていること。例えば、スマートスピーカーのような生活に密着した新製品を試したり、スーパーで買い物をしながら陳列棚を見たりと、当事者として生活者感覚を磨く時間につながっています。考えてみれば、これが食品メーカーとしての本来あるべき姿ですよね。経営視点に立てば当たり前の施策ともいえます。

「こういう働き方が普通だよね」という思い込みや偏見をいかに壊していくか。その意識の転換がなければ、新しい制度も文化も生まれません。企業内の選択というのは、どうしても多数派・主流派の考え方に引っ張られてしまいますから、いつのまにか少数派にとって居心地の悪い不公平な状況が生まれてしまうことが多い。その問題に意識的に目を向け、ニュートラルな感覚で改革していこうという取り組みを強化しています。

白河 その取り組みの一つが、18年から実施されているという「アンコンシャスバイアス」を解消するための研修ですね。制度だけでなく「意識面」からのアプローチをする取り組みだと思うのですが、具体的にはどのように進めているのでしょうか?

野坂 18年は外部講師の先生を呼んで計3回、半日研修を行いました。最初に受けたのは経営層だったのですが、非常に盛り上がったんです。「偏見を持つのはダメです」というお叱りではなく、「誰にでも偏見はある。その偏見に気づいて行動することが大事です」という説明でしたので、自己開示しやすい雰囲気になりました。

日常に起こりやすい事例も交えて無意識の偏見に気づくワークショップでは、「ああ、これも偏見か!」とあちこちから声が上がり、経営層も多くの気づきがあったようです。

「無意識の偏見」が女性活躍を阻む

白河 例えばどんな事例を取り上げたのですか? 私が研修でよく使う問いかけは、「海外出張のオファーを3歳の子どもを持つ女性と、同じく3歳の子どもを持つ男性にする場合、どちらのほうがためらいますか?」といったものですが、近い事例でしょうか?

野坂 はい。当社はグローバル企業で海外赴任もありますので、そういったときのオファーというのは身近な例になります。人事メンバー向けのワークショップでは「男性だったら支障が少ないかなぁ」「子育て中の女性社員にはやっぱりちゅうちょする」という議論になりました。

しかし、「『出産した女性は皆ライフに重きを置くはず』という思い込みもアンコンシャスバイアスですよ」という解説がありました。「いや、それは偏見ではなく配慮のつもりだよ」という意見が出ましたが、「配慮の前に本人の気持ちを聞き、その上で配慮する順番がいいんですよ」というアドバイスが。「なるほど」と納得の声が多数でしたね。

おそらく、当社は先に「配慮の施策」を進めたので、配慮する文化が過剰に浸透しているのかもしれません。配慮が行き届く職場になったというのは素晴らしい半面、ともすると公平な機会提供を阻む問題もあったり、当事者本人が「私は子どもがいるから手を挙げちゃいけないのかな」と思い込む心理的要因になったりする。そのバイアスを是正するトレーニングが必要になってきたのだと、経営陣も認識しています。

白河 研修の対象になるのは、経営幹部や管理職だけですか?

野坂 一般職もミックスでやるようにしています。そのほうが多様な意見が出て、議論もしやすくなることが分かってきました。例えば、「男性管理職だけ」など同質性の高いグループだとなかなか意見が出にくいんですね。

あるとき、男性管理職だけのグループと一般職を交えたグループとで、「身近にある偏見を書き出そう」というワークショップを実施したら、付箋の数が6倍くらい差が出てしまいました(笑)。男性管理職だけだとなかなか意見が出なかったんです。むしろ異なる立場から意見を出し合うほうが、心理的安全を確保しやすいのかもしれないです。

白河 研修で取り上げる偏見というのは、男女差のほかにもありますか。

野坂 男女差だけでなく、国籍や年齢、経験など、いろんな視点で議論しています。経験というのは、専門領域や採用の違いなど。当社は退職率約1%という非常に同質性の高い組織で、中途入社が少数派なんですね。「何年入社?」と聞き合うのが日常会話で、社内にしか通じない用語も多い。プロパー社員という多数派の意見が優先されやすいのでは、という気づきを持つことが大事だと伝えています。

白河 専門領域の違いというのは。

野坂 「技術系」「事務系」と立場を分類(役割分担)する文化が醸成されていましたね。それは味の素という会社が創業期に、池田菊苗という研究者がうまみを発見し、鈴木三郎助が事業として組み立てたという原点に端を発することも大いに影響しているのだと思いますが。

白河 会社の発祥から、技術開発と事業に組織がわかれていたんですね。創業以来の文化が、実はアンコンシャスバイアスにもつながっていたかもしれないと。

野坂 それが味の素らしさを発展させた重要な要素だったと思いますが、一方で、同質性の高い文化を生んでいたのかもしれないです。最近では経営会議でも「技術だ、事務だと言うこと自体がおかしいよね」というフレーズが当たり前のように出てきます。20年の4月入社より技術系、事務系と分けることがなくなりました。部門間の人材交流もより活発になっていくでしょう。

(来週公開の記事ではアンコンシャスバイアス研修の成果や今後の展開や目標などについてお聞きします)

白河桃子
少子化ジャーナリスト・作家。相模女子大客員教授。内閣官房「働き方改革実現会議」有識者議員。東京生まれ、慶応義塾大学卒。著書に「『婚活』時代」(共著)、「妊活バイブル」(共著)、「『産む』と『働く』の教科書」(共著)など。「仕事、結婚、出産、学生のためのライフプラン講座」を大学等で行っている。最新刊は「御社の働き方改革、ここが間違ってます!残業削減で伸びるすごい会社」(PHP新書)。

(ライター 宮本恵理子)

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