杉野遥亮、俳優として大躍進 初めて湧いた強い気持ち
2015年の『第12回FINEBOYS専属モデルオーディション』でグランプリを受賞し、17年の映画『キセキ ―あの日のソビト―』で俳優デビューを果たした杉野遥亮。スレンダーな完璧モデル体型と塩顔イケメンなビジュアルはもちろん、公式ツイッターでつづられる独特なワードセンスも人気で、フォロワー数は18年11月時点で28万人を超えた。ファースト写真集『あくび』も発売後すぐに1万部を超えるヒットを記録している。「こんな強い気持ちが湧いたのは初めて」と俳優業について熱く語ってくれた。
菅田将暉らの1993年生まれ世代に続く"95年生まれ世代"の1人で、18年は連ドラ7本、映画3作に出演など破竹の勢いを見せる杉野とは、どんな人物なのか? まずは芸能界の入り口について聞いた。
「18歳のとき、大学受験に失敗して希望していなかった学部に行くことになって。モチベーションもなく大学にもあまり行かなくなっていた頃に友達から勧められたのが『FINEBOYS』のオーディションでした。グランプリと知ったときは、すごく興奮しましたね。高校までやっていたバスケットボールの部活で地区大会優勝をした時以来の感覚というか。
ただ、オーディションの時はすごく緊張していて、多少作っていたと思うんです。それでクールな印象を持たれたみたいなんですけど、初めて事務所に行っていろいろな話をしていくなかでボロが出ちゃったみたいで…いまだに『詐欺』って言われます(笑)」
■アダ名はリーサル・ウェポン
天然で人懐っこい。その言動から、『キセキ』でも共演した事務所トップコートの先輩・松坂桃李と菅田将暉から"トップコートのリーサル・ウェポン"という仰々しいアダ名を付けられた。「良くも悪くも杉野によってトップコートの歴史が変わるかもしれない」と言われたそうだ。
「最初はリーサル・ウェポンの意味が分からなくて、漠然と"いい意味なのかな?"と思っていたんですけど、今思えばとんでもないことですよ。お2人から見れば、すっごく危なっかし過ぎる存在だったと思います。『キセキ』の現場でも松坂さんにはもちろん、菅田さんにも『サインがないんです!』と言って一緒に考えてもらうなど、何から何まで頼りっきりでした。もしも自分が先輩の立場だったら、こんな後輩の世話は絶対に嫌です(笑)。
あの頃は事務所に入りたてで分からないことだらけで、初めてカメラの前に立った日もマネジャーさんとずっと反省会をしたくらい、何もできなくて。レッスンでも恥ずかしいとか劣等感とか、そういうことしか感じなかったです。自分が演技をするというイメージが全然湧かなくて、言われたことに『はい』と応えるだけで精いっぱい。やらなきゃというよりは、まず目の前の課題を1つひとつこなしていくという感じでした。
『キセキ』に関しても最初はきっとプレッシャーすら感じていなかったと思います。メインキャスト4人のうちの1人を演じる。これが大変なことだと気付いたのは撮影が終わった後くらい。この映画に出るってことは、もうただの大学生ではなく"杉野遥亮"という名前が世に出ることなんだと初めて意識して、そこから少しずつ俳優という仕事について実感していくようになりました」
そうした葛藤をよそに『キセキ』後も怒涛(どとう)の露出を重ね、まさに"リーサル・ウェポン=最終兵器"の呼び名にふさわしい活躍を見せている。この求められ続ける現状についてはどう考えているのか。
「自分では全く分からないんです…。でも今までご一緒させていただいた方ともう一度お仕事させていただく、という機会はすごく多くて。それって、もしかしたら僕の中に何かしらの魅力を感じていただけたからなのかなって。『特にない』と言われるのが怖いから今まで一度もちゃんと聞いてみたことはないんですけど(笑)。
あとは年々、プロ意識は持つようになってきていると思っています。役者として2年目を迎えるときにマネジャーさんから『今年はプロ意識を持とう』と言われて、その言葉にやっと今近づいてきているというか。ただただ必死だった最初の年と2年目の頃に比べて、3年目の18年は『もっと追求できることがあるはず』という気持ちが出てきました。
正直、人生でここまで熱中できたことってあったかな? というくらい。今までは何においても平均点以上のことはできてきて、バスケでも『勝ちたい。強くなりたい』という思いはありましたけど、そこに向かって具体的に何かを自主的にすることはなかった。こんなにも自分から意欲的に何でもやりたいと思うのは初めてです」
■今一番の僕の武器
モデルオーディションでグランプリを勝ち取るビジュアルと「詐欺だ」と言われてしまうほどのギャップ、先輩からすぐに愛称で呼ばれる親しみやすさ。そして、彼自身の貪欲さ。19年は既に1月8日スタートのTBSドラマ『新しい王様』に出演。少女マンガ原作映画の本命『L・DK ひとつ屋根の下、「スキ」がふたつ。』(3月21日公開[※])、初の時代劇に挑んだ映画『居眠り磐音』(5月17日公開)が控えており、まだまだ勢いは止まりそうにない。
「『新人』と言われるのは3年までで、ここから先は本当に役者、1人のプロとしてやっていかなくちゃいけない時期。楽しむことが大前提ですが、作品に向き合う上で『やり残したな』って思いを残したくはないです。そういう当たり前のことを当たり前にやりたいですね。あとは…勝ちたい。自分にもそうだし、先輩たちにも。これまでずっと憧れの先輩、いちファンとして見てきた先輩たちにまずは追いつきたいです。そして先輩たちに向けられてきた目を、自分にも向けさせたい。そのために自分が何をしなきゃいけないのか? ってことを真剣に考えて取り組んでいきたいですし、その言葉に追いつくためにも今ここで言っている、という部分もあります。
本当にこんな強い気持ちが湧いたの、初めてですね。自分でもすごいなって思います(笑)。こう言えるようになったことが、今一番の僕の武器なのかもしれません」
※『L・DK ひとつ屋根の下、「スキ」がふたつ。』と「2019 L・DK」の・はハートマーク
(ライター 松木智恵)
[日経エンタテインメント! 2019年2月号の記事を再構成]
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