自社株の承継、信託で確実に 納税猶予は認められず

写真はイメージ=PIXTA
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経営権を維持しながら確実に事業承継できる「信託」。高齢化で引退を迫られる中小企業のオーナー社長にとって気になる商品だ。利点と注意点を点検した。

東京都内で電子部品を製造・販売するA社を経営する佐藤信夫さん(70、仮名)は長男、和夫さん(42、同)を後継者にする。和夫さんは取引先の上場企業で勤務後、3年前に入社。営業課長を務め、社内外での評判は上々だ。

A社は中国やタイにも拠点を構え、業績は堅調。毎期数億円の利益を計上する。企業価値はさらに上がる見込みで贈与税が膨らむ前に株を譲りたいが「経営を任せるにはまだ経験が足りない」と感じていた。このため取引行のりそな銀行から提案された「議決権留保型」の自社株承継信託を使うことにした。

株式は銀行に預け、オーナーには銀行に議決権行使を指図する権利を残す。財産権はあらかじめ定めた後継者に移すため、後継者は配当を受け取れる。贈与税は信託契約を結んだ時点の評価額で課税されるため、A社のように企業価値の上昇が見込まれる場合などに便利な商品だ。オーナーに万が一のことがあれば銀行が株を後継者に交付する。

株の散逸防ぐ

オーナーが死亡した時の承継者を決めておく「遺言代用型」もある。自宅や預金の相続配分は決めていないが、後継者だけは決めておきたいケースに有効だ。遺言でも意思は残せるが、親族間の遺産分割協議が生じれば経営に空白期間が生じ、複数の親族に株が散逸して経営が不安定になる恐れもある。信託財産は協議の対象外になるため、確実に株を引き継げる。

りそな銀の根本賢治プライベートバンキング部長は「財産に占める株の割合が大きい場合、1人に100%の株を相続させると、ほかの相続人から遺留分の侵害を主張される恐れもある。オーナーの思いを実現できる内容にすることが重要だ」と話す。

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