機内食 ハワイに注力のANA、有名シェフ勝負のJAL
ゴールデンウイークが史上最長の10連休となるなど、レジャーに出かける人が増大するとみられる2019年。全日空(ANA)は5月から世界最大の旅客機「A380」をハワイ線に投入する。座席数はこれまでの2倍に増え、これに合わせて機内サービスを一新するという。一方、日本航空(JAL)も対抗するべく、機内サービスのグレードアップに取り組む。そんな両社のサービスを機内食の新機軸に絞って比較する。
ANAは「ビジネス並み」のプレエコ飯が登場
5月にハワイ線に就航するA380。搭乗客は機材だけでなく、機内食にも驚くに違いない。なかでも大きく変わるのがプレミアムエコノミーだ。
通常はエコノミークラスと同じ内容の食事となるが、専用機内食が提供される。「ビジネスクラスの短距離路線に近いレベルの食事内容」(ANA)といい、盛り付けもプラスチックではない食器を使った特別仕様だ。
「これまでは、あくまでもエコノミーの一種だったが、ビジネスクラスに準じる座席に位置づけが変わった」(航空アナリストの鳥海高太朗氏)。
エコノミーのメニューも日本発ハワイ線専用に開発。ワイキキに店舗を構え「世界一おいしい朝食」をうたうビルズとコラボする予定だ。共同開発したメニューの提供とともに、食事時に現地の店でウエルカムドリンクのサービスが受けられるミニカードが付く。
「ハワイ線に多い20~30代女性に魅力のあるブランドを選んだ」(ANA)と導入の理由を語る。スペシャルドリンク「ブルーハワイカクテル」がエコノミークラスの客でも楽しめるなど、さまざまなサービスが用意されている。ただしメニューは1種類のみで選べず、プレミアムエコノミーとの差はある。
ビジネスクラスとファーストクラスでは、サービス内容を見直す。通常、ビジネスクラスとファーストクラスは複数回に分けて1皿ずつ提供されるが、ハワイ線ではビジネス1回、ファースト3回程度とコンパクトに収める予定だ。「日本発便の往路が7時間を切る便もある。離陸後すぐに就寝時間を迎えるスケジュールも加味して、従来よりも食事の時間を短縮するサービスにした」(ANA)。
クオリティーの高い機内食は国内線でも味わえる。プレミアムクラスでは、ANAが抱える機内食をプロデュースするシェフグループ「ザ・コノシュアーズ」の有名シェフとのコラボを展開。羽田・伊丹・新千歳・福岡・那覇発の夕食で提供される。
【食べてみた!】「機内食総選挙」の上位3品、国際線エコノミーのカレー
毎年、一般人の投票で機内食の新メニューを決定する「ANA機内食総選挙」を行っており、19年は上位3つのカレーが国際線のエコノミーで提供されることになった(提供路線は未定)。そこで、1位「フィッシュカツと蓮根カレー」、2位「大山どりのカツカレー」、3位「牡蠣醤油のシーフードカレー」を実食。
フードコーディネーターの平尾由希氏によると「感動したのはカツカレー。機内食は肉が固くなりがち。大山どりの柔らかさが際立っていた」といい、スパイシーさもある本格的な仕上りだった。
(注)上記はすべてANAの自社運航便のもの。機内食は時期や便によって異なる場合がある。ハワイ線の画像はあくまでイメージ
JALはエコノミーでもミシュラン二ツ星の味
新機材で勝負を挑むANAのハワイ線に対し、JALは機内サービスのグレードアップで先手を打つ。
皮切りは、成田発で18年9月から始めたミシュラン二ツ星店のレストラン「レフェルヴェソンス」のグランシェフ・生江史伸氏が監修するエコノミークラスの機内食だ。
秋メニューのビーフストロガノフから始まり、現在は「牛肉のブランケット」をメインディッシュに提供している。「就寝前に食べるため、優しい味や素材中心に心がけた。機内食でも妥協はせず、味に深みを出すためにフォンドボーは店と同じレシピで作っている」(生江氏)という。
夜発のビジネスクラスで客は好きなタイミングで機内食をオーダーできる画期的な仕組みをスタート。航空アナリストの鳥海高太朗氏によると、「客室乗務員がその都度対応しなければならず、負担が大きい」サービスだ。「日本発便の場合、就寝時間のタイミングが人によって異なる。食事時間を自由にすることで、翌日の時差ボケ解消にもつながる」(JAL)と狙いを語る。
JALはハワイ線以外でも、有名店とのコラボ機内食を頻繁に提供しており、枠にとらわれない「異色コラボ」も多い。
最近は日本の外食チェーンと組む「AIRシリーズ」も好評だ。18年は「吉野家」とのコラボに続いて、12月から19年2月末は第30弾「AIRスープストックトーキョー」を投入。付け合わせの石窯パンはスープストックから提供を受け、メインの「白いんげん豆とベーコンのミネストローネ」は店舗では食べられないオリジナルメニューだという。日本発の全16路線で、到着前の2回目の食事として提供する。
一方で、JALの国内線ファーストクラスでは「ご当地シェフ」とのコラボが活発。地域活性を図る「新・ジャパンプロジェクト」の一環で、地元の食材を使った「地域紹介シリーズ」の夕食や菓子を提供する。19年1月は兵庫県豊岡市のホテル「金波楼」の総料理長監修のメニュー。頻繁に利用する場合でも、時期によって異なる各地の名産品を味わえるのも魅力だ。
【食べてみた!】外食有名店コラボ「AIRシリーズ」、スープストックに死角なし
成田発シカゴ線などのエコノミーで出る機内食「AIRシリーズ」の「AIRスープストックトーキョー」を実食。メインのスープはミネストローネで、「酸味が強いなどのクセがなく、万人受けする味に作られている」(フードコーディネーター・平尾由希氏)といい、客層が幅広いエコノミーに適した内容だ。
(注)上記はすべてJALの自社運航便のもの。機内食は時期、便によって変更される可能性がある。「JAL Luana Style」の画像はイメージ
[日経トレンディ2019年3月号の記事を再構成]
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