働く女性のオン・オフ兼用コーデ 品格と抜け感を両立
宮田理江のおしゃれレッスン
2019年春夏の装いでは、品格と伸びやかさが同居するような着こなしが新トレンドに浮上しています。軸になるのは、上下そろいのセットアップや、ハイウエストボトムス、同系色での合わせなど。日本でもファンの多い米国ブランド「Theory(セオリー)」の春コレクションを手がかりに、フレッシュ感と節度を兼ね備えた着こなしのポイントをつかんでいきましょう。
進化系セットアップに注目 マルチに着回しやすい
セットアップがスーツと異なっているのは、スーツほどには組み合わせが固定されていない点です。スーツは基本的にジャケットとボトムス(パンツかスカート)の組み合わせとなりますが、セットアップはもっと自由。たとえば、シャツとパンツ、プルオーバーとスカート、コートとワンピースといったコンビネーションもありです。
見た目の統一性も、スーツよりゆるやかです。スーツは原則的に同じ生地で上下をそろえますが、セットアップは同系色程度の調和が保たれていればOKという具合。上下の色や柄も微妙に異なりながらも、ゆるやかに統一感があるタイプが登場しています。デザイン面で融通がききやすいおかげで、オフィス以外でもマルチに着回しやすいのも、新傾向の進化系セットアップのよさです。
ジャケットとパンツという、比較的オーソドックスなコンビの場合でも、ジャケットのシルエットがかしこまりすぎない、ゆったりした形なら、力みを遠ざけられます。ジャケットとコートの中間のような、ラフなアウターは体の輪郭をぼかしてくれます。ボディーを締め付けないから、様々なシーンで重宝しそうです。
ノースリーブのトップスなら軽快な着映えに
両袖のないノースリーブのトップスを選べば、春らしい軽快な着映えに仕上がります。近ごろ注目を集めているのは、縦に落ち感のあるナローなシルエット。このようなチュニックに、穏やかなパンツで合わせると、さらに細長く映ります。
土っぽいエコロジーな色使いはナチュラルで気負わないムードを演出。袖がなくても、首周りが詰まっているうえ、端正なフォルムだから、きちんとした印象を保っています。上からベルトでウエストマークしたり、オフの日はレギンスで合わせてみたりと、着回しの選択肢も豊富です。
テーラードジャケットがウィメンズの装いに
今春夏は英国紳士ムードを帯びた本格派のテーラードジャケットがウィメンズの装いに持ち込まれます。セットアップに組み込めば、品格の備わった着姿に整えられます。打ち合わせの深いダブルブレストはさらにカッチリしたムードが濃く、オフィスの雰囲気にもマッチします。
気張りすぎない着こなし方としては、ところどころに抜け感を漂わせるのが上手なアレンジ。たとえば、インナーにカットソーを選んだり、かかとのないスリッポン風シューズを履いたりして、まとまりすぎを避けるのが賢いさじ加減です。
ニアトーンで整える 落ち着きと動感を両立
装い全体を全く同じ生地や色・柄でまとめきってしまうのではなく、少しだけ色調や風合いをずらしながら、近い見え具合でまとめる「ニアトーン」のコーディネートが脚光を集めています。
同じ素材や色でそろえたワントーンは平板に映りやすいことも。ニアトーンなら微妙なずらしが生きて、味わい深い雰囲気にまとまるのがいいところ。トップスとボトムスが互いを引き立て合い、それぞれの持ち味が生きるという効果があります。
淡いグリーンのエアリーなワンピースに、少しトーンを深くしたロング丈ジャケットを重ね、濃淡を際立たせました。今春夏はアイシーやスモーキーと呼ばれる、少しぼかしたパステルカラーが装いを盛り上げると期待されています。
上下の色合いをわずかに変えるだけで着映えのリズムが変わる
砂漠を思わせるサンドカラーを都会的に取り入れる提案が目新しさを感じさせます。色味を上下でわずかに変えるだけでも、着映えにリズムが加わります。パンツの上から長いペンシルスカートを重ねるのは、縦長イメージを強調する新しいテクニック。丈の長いボトムス同士で合わせると、このような大人っぽいレイヤードに整えられます。
若々しいショートパンツもシャツと合わせて大人シフト
元気で若々しいイメージのショートパンツも、シャツで合わせれば大人仕様にシフト。上質なリネン素材なら、上品カジュアルな見え具合に導いてくれるから、着て行ける場面が広がります。久しぶりにトレンドアイテムとしてカムバックしたミニボトムスはニアトーンで取り入れると、落ち着きが加わります。シャツよりも濃い色をボトムスに迎えれば、レッグラインを引き締める効果が期待できます。
ハイウエストを生かして「きちんと」ムードに 脚長イメージを強調
細く長いシルエットを印象づけるには、ハイウエストのパンツが効果的です。たっぷり幅のワイドパンツでも、ハイウエストであれば、伸びやかなレッグラインに映ります。トップスは裾をきっちりウエストインして、上半身をコンパクトに見せて。きちんと感を醸し出せるので、オフィスルックにも生かせます。ハイウエストが縦寸を稼ぐ分、脚が長く見える仕掛けです。
ハイウエストボトムスをレイヤードにするとスレンダーな着映えに
ハイウエストボトムスをレイヤードして、さらにスレンダーな着映えに。落ち着いたチャコール系のパンツに、長いペンシルスカートを重ねて、アルファベットの「I」のようなほっそりラインを演出。細いストラップが印象的なトップスに、チェーンバッグのストラップが添えられ、細感が強調されています。
仕事以外にも自由自在 新生「セオリー」が誕生
エグゼクティブ女性の多さでは世界でも指折りの都市、ニューヨーク。「セオリー」は1997年にこのビジネスシティーで誕生しました。仕事を邪魔しない、フィット感の高い着心地や、さりげなくトレンドを反映したクールなデザインは、日本でも働く女性から支持を受けています。
新クリエーティブ・ディレクターとして迎えられたフランチェスコ・フッチ(Francesco Fucci)氏はパリのオートクチュール(注文服)ブランドでも経験を積んだキャリアの持ち主。細部に至るまで丁寧に目配りをきかせたクチュール感と、気負いを遠ざけたリラックス感を調和させています。2019年春夏はかっちりした男性的フォルムとフェミニンな質感を響き合わせ、表情を深くした作品を披露しました。
仕事とプライベートを自在に行き来できるようなマルチシーン対応の装いが一段と求められるようになってきました。今回、ご紹介した3つのポイント、肩ひじを張らない「進化形セットアップ」、スタイルアップに導く「ハイウエストボトムス」、リラックスで上品な「ニアトーンカラー」を取り入れて、春からの着こなしバリエーションを広げてみませんか。
(画像協力)セオリー https://www.theory.co.jp/
ファッションジャーナリスト、ファッションディレクター。多彩なメディアでランウェイリポートからトレンド情報、スタイリング指南などを発信。バイヤー、プレスなど業界経験を生かした、「買う側・着る側の気持ち」に目配りした解説が好評。自らのテレビ通販ブランドもプロデュース。セミナーやイベント出演も多い。 著書に「おしゃれの近道」「もっとおしゃれの近道」(ともに、学研パブリッシング)がある。
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