スナックママがキャリア助言 おじさんに自由と勇気をヒキダシの木下紫乃・最高執行責任者

ドイツでは「シノは何をする人なの?」とよく聞かれた。紫乃さんが「ハウスワイフ(主婦)」と答えると、「それは今のタイミングでしょ。あなたは何をする人なの?」と突っ込まれる。誰もが自分のキャリアの軸を持っているという感覚は新鮮だった。

「欧州では40代以上でも大学や大学院に行く人が多いんです。キャリアを変えるために、学び直すというのが当たり前でした」。結婚生活が破れてドイツでの生活は2年半で終わったが、その経験は後の人生に影響した。

帰国後、企業向けの研修を請け負う会社に入り、キャリアコンサルタントとしての道を歩み始めた。約10年の間に500回以上の研修を手がけるうちに、大企業の幹部候補たちに違和感を覚えるようになったという。

「頭はいいのですが、世界の広さを知らない人が多いなと思ったんです。私は小さな会社でも働きましたから、高校を出ていない人とも仕事をしました。海外で暮らしたので、自分が生きている世界が全てではないと肌感覚で理解しています。一方、研修の参加者は世界のとらえ方が小さくて、もったいないと思ったんです」

研修内容も経営学修士号(MBA)の課程の基礎のような知識を教え、新規事業を考えるワークショップを開くというお決まりのパターンが多かった。「本当に彼らの育成につながっているのか」という疑問も感じるようになった。

45歳で大学院へ 「おじさん」を解放したい

もやもやするうちに転機が訪れた。研修の講師を依頼したリクルート時代の先輩に「大学院に通っている」と聞いたのだ。先輩が学ぶという慶応義塾大学大学院のメディアデザイン研究科は「聞けば聞くほど何を教えているのかわからなくて、逆にそれが面白いなと思ったんです」。

欧州で学び直す人々をみてきた紫乃さんは、すぐ行動に移した。入学したのは45歳のとき。「同じ仕事を続けていると専門性は磨かれますが、領域が狭くなる。大学院で新しいテクノロジーやデザインを学び、今まで接したことのない分野の専門家がいると知ったのは大きかった。20代から60代まで、色々な人と学べたのも財産になりました」

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