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豚・鶏… 名品ラーメンは王道の素材と手間で驚きの味

「中華そば満鶏軒」の「鴨中華そば塩」

【東京】中華そば満鶏軒

<鴨(カモ)ラーメンが工夫次第でこう変わる>

最後は18年4月、東京・錦糸町にオープンした「中華そば満鶏軒」。

ここの1杯は鴨と水のみでスープを作り、岩塩を加えたシンプルさが光る。仕上げにフォアグラ油を数滴垂らすことで鴨の風味を増幅させ、訴求力に満ちたうま味を構築している。同店の橋本店主が培った経験に基づいたギミックがさえわたる1杯だ。

橋本店主は千葉の人気店「まるは」グループのほか、和食の世界で腕を磨いた経験もあるのだ。一般に鴨を用いたラーメンは、鴨以外の鶏・香味野菜などの具材と合わせてだしを採るのが基本。だが、「鴨が持ち合わせる豊かな魅力を、ありのままの形で表現したい」(橋本店主)ので、スープの素材は鴨と水だけにしたという。

昨年オープンした「中華そば満鶏軒」

開業に当たり、「スープを作るための工場を作ったんです。誰もが満足できるクオリティーの1杯を創りたいと思って」と橋本店主は語る。店舗からほど近い工場では、スープをなみなみとたたえた巨大寸胴鍋が何本も並ぶ。その寸胴鍋には1本当たり40羽に及ぶ鴨の丸鶏が詰め込まれる。さらに、職人が1羽1羽手作業で、鴨からチャーシューに用いる肉(ロース肉とモモ肉)を切り取り、残りの鴨は全て寸胴鍋に投入するという採算度外視ぶり。

これを6時間かけて弱火でじっくりと炊き込んだスープに岩塩を加えれば、看板メニュー「鴨中華そば塩」が完成する。「鴨の滋養味を徹底的に表現しようとしたとき、塩ダレですら邪魔になることに気が付いたんです。試行錯誤の末、結局、岩塩を使うことに決めました」と店主。油まで丸鴨から抽出されたものを採用するなど、ここまで鴨を突き詰めた1杯は同店をおいてほかにない。他の追随を許さぬ徹底ぶりに、頭が下がるばかりだ。

「思い切って極端に走ることにより、他から一歩抜きんでる」。この考え方を心に留めておけば、今後困難に遭遇しても打開策が生まれる、と思えた。

(ラーメン官僚 田中一明)

田中一明
1972年11月生まれ。高校在学中に初めてラーメン専門店を訪れ、ラーメンに魅せられる。大学在学中の1995年から、本格的な食べ歩きを開始。現在までに食べたラーメンの杯数は1万4000を超える。全国各地のラーメン事情に精通。ライフワークは隠れた名店の発掘。中央官庁に勤務している。
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