また、英エジンバラ大学のリチャード・ワイズマン博士が、「運」について研究した結果、運は「考え方」や「心の持ちよう」が大きく影響するということが裏付けられたそうです。18歳から84歳までの男女400人を10年間にわたって観察したところ、パーソナルテストで比較してみると、「運が悪い人」は「運が良い人」に比べて緊張しやすく、心配性で、細部に注目しすぎるため、せっかくのチャンスを見逃してしまう傾向があったそうです。逆に、「運が良い人」は、目の前にある機会や状況を発見して生かす傾向が強かったといいます。
その答えは、「自分は運が悪い」という人と「自分は運が良い」という人を集めて、(1)カフェの入り口に落ちている5ポンド札の存在に気づくか (2)カフェの中で有名な実業家と出会えるか という2つを実験した結果に表れていました。「自分は運が良い」という人は、カフェの前の5ポンド札に気づき、店に入って実業家に気づいて会話をし始めたのに対し、「自分は運が悪い」という人は、5ポンド札の存在にも気づかず、実業家の横に座りながらも、その存在に気づくことも、話しかけることもなかったそうです。
その後、両者に「その日、何か良いことか悪いことがあったか」と質問したところ、「自分は運が悪い」という人は、つまらなそうに何もなかったと答えたのに対し、「自分は運が良い」と思っている人は、5ポンド札を見つけたことや実業家と出会って話が弾んだことを喜々として答えたといいます。
幸運か不運かというのは、決して神様が決めるだけではなく、それをどのように受け止めるか、あるいは、見つけることができるかによって、人生の機会が大きく左右されるということなのかもしれません。
自分にとってハッピーな状況をつくり出す
「誰かのせいで自分にはよくないことが起こってしまった」とか、「自分は運が悪かったから不本意な状況になってしまった」と、戻ることができない過去のことをいつまでも悔やんでいても時間の無駄です。これからの自分がどうあるべきかをしっかりと考えて、未来を変える方法を実践していくことが、自分にとっての好循環を生み出す最短の方法です。
「過去と他人は変えられないが、自分と未来は変えられる」という言葉を信じて、アプローチを変えてみることをおすすめします。
上述のワイズマン博士は、「あたかもそうであるように振る舞っていれば、本当にそうなる」という「As ifの法則」を、2万人以上を対象にした実証実験で科学的に証明しています。「幸せだから笑顔なのではない、笑顔だから幸せに感じるのだ」という、行動から感情がコントロールできる結果です。もちろん、現実にやろうとすると簡単なものではありませんが、それに近い思考回路を習慣づけることはできます。
また、不本意な状況や問題に直面したときに、他責思考に走ったり、運が悪かったと諦める前に、もうひと粘り、打開策を考えてみるのも効果的かもしれません。ブレーンストーミングの手法を生んだアレックス・F・オズボーン氏が作った「発想を促進するためのチェックリスト」を紹介します。チェックリストの質問に基づき、次々とアイデアを考えていくことで、状況の打開策が見つけやすくなるそうです。
□ Combine:組み合わせてみたら?
□ Adapt:別の仕組みを応用/適用してみたら?
□ Modify:変形/修正してみたら?
□ Put:何かに置き換えてみたら?
□ Eliminate:引き算や排除をしてみたら?
□ Rearrange:再調整してみたら?
たとえ困難な状況になっても、できるだけアイデアを振り絞って次の行動に向かう行動を意図的に習慣化することが、新たなキャリアのチャンスを生み出してくれるきっかけになると信じています。ぜひこれらの観点を参考に、豊かで満足度の高いキャリア形成に結び付けていただければ幸いです。
※「次世代リーダーの転職学」は金曜掲載です。この連載は3人が交代で執筆します。
