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転ばぬ先の不動産学

なぜ小規模住宅は省エネ基準の対象外 政策転換に疑問 不動産コンサルタント 田中歩

2019/2/20

写真はイメージ=PIXTA

日本の住宅は断熱性能の水準が極めて低く、エネルギーの無駄遣いの一要因になっているといわれています。コラム「省エネでないと建てられない 住宅の『2020年問題』」でもお話したように、20年4月以降はすべての新築建物について省エネルギー基準に合わせなければならない、つまり省エネ基準に適合していないと建築できないルールが施行される予定でした。ところが18年12月、国土交通省は延べ床面積300平方メートル未満の小規模住宅について、このルールの対象外としました。しかし、省エネ基準を満たさない住宅はいずれ競争力を失うと筆者は考えます。

国交省は小規模住宅を対象外とした理由を下記のように説明しています。

・省エネ基準への適合率が57~69%と低水準の小規模住宅を適合義務の対象とすると、市場が混乱する可能性がある
・光熱費を減らして省エネ工事の資金を回収するとしても長期間かかり、効率の低い投資を強いる面がある
・中小の工務店や設計事務所のなかには省エネ基準に習熟していない人が相当程度いる
・19年10月の消費増税を考慮すると、住宅投資への影響が懸念される

■制度後退も市場に一定のインパクト

残念ながら、今回の制度後退で省エネ性能の高い住まいづくりに取り組んできた業界関係者は完全にはしごをはずされた形になりました。代わりに、建築主の意向を把握したうえで省エネ基準に合わせるかどうかなどの説明を建築士に義務付ける制度を創設するようです。建売業者などが建築主となる場合、コスト面から省エネ基準に合った建築を積極的にするとは限らないという意見もありますが、省エネ住宅を建築主に知ってもらう点では全く意味がないわけではなさそうです。

また、注文戸建住宅や賃貸アパートの建築を大量に請け負う住宅事業者については、住宅の省エネ性能の向上に関する目標やその達成状況を自発的に公表させる仕組みが検討されるようです。

これがどれだけ機能するか未知数ですが、今後、この仕組みで省エネ基準に適合した新築賃貸アパートが供給されるようになれば、ユーザーが省エネ住宅を選ぶ環境が徐々に整う可能性があります。

つまり、借家住まいでも省エネ住宅を体験する機会が増えることで、市場に一定のインパクトを与える可能性があるのです。

■健康面でも優位性

筆者は仕事の関係で、高いレベルで断熱施工された住宅を体験させてもらったことがあります。2月の岩手県内でしたが、暖房はほとんど使わずに暖かい空間が維持されていました。なにより暖房による空気の乾燥が少なく、呼吸がしやすかったのをよく覚えています。暖かさに柔らかみがあるといった印象です。結露も見当たりませんでした。

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