なぜ小規模住宅は省エネ基準の対象外 政策転換に疑問不動産コンサルタント 田中歩

 こうした空間で暮らした経験を持つ人は、住み替えのタイミングで積極的に非断熱住宅に住もうとは思わないでしょう。借りるにしても買うにしても、省エネ基準の住宅を選択肢に入れる可能性は高まるはずです。

 今年1月に国交省が公表した調査によると、断熱が施された住宅に居住した場合、血圧の季節差が低くなり高血圧のリスクも低下、コレステロール値が基準範囲内をオーバーしたり心電図の異常所見が多く出たりすることも少ないと報告されていました。一方、室温が低い住宅では様々な疾病にかかる人が多くなる傾向がみられると報告されています。

 こうした認識が一般的になれば、強いて非断熱住宅を選ぶ人はさらに減っていくのではないでしょうか。

資産価値を維持したいなら断熱改修も

 市場が省エネ基準に合った住宅を選好するようになれば、住宅の供給が過多となっている現在、既存の非断熱住宅が競争力を失うのは時間の問題でしょう。もし将来、住まいを売却するかもしれないと考えているなら、省エネ基準に適合した住宅を取得すべきですし、リフォームを検討中なら断熱も視野に入れたほうが将来売却するにしても貸すにしても競争力を維持できます。

 既存の賃貸アパートの多くが無断熱に近い性能となっているなか、賃貸アパートのオーナーは空室が生じたら原状回復だけでなく断熱の検討もしたほうがよいでしょう。賃貸中の部屋がある以上、一棟丸ごと断熱化することは困難ですが、部分的に断熱改修することで競争力を維持することもできるのです。

 断熱改修に詳しいスタジオA建築設計事務所(東京・港)を主宰する内山章さんは「デザイン重視の表面的な改修よりも、部分的であったとしても断熱改修のほうが借り主へ快適性を訴求でき、資産価値の維持もさることながら空室リスクを下げることにも寄与する」としています。

断熱、猛暑にも効果

 例えば、窓を二重サッシにすることは比較的簡単に施工できて断熱効果も高いといわれています。内山氏が主催した、断熱性を高める「エコリノベーション」のワークショップでは、DIYで施工した「木製内窓」も相応の効果が出ているそうです。

 また、壁内や最上階の天井裏の断熱化もさることながら、意外に盲点なのが玄関ドアです。ドア枠に付いているパッキンは10年もすれば完全に劣化して固くなり、そこから隙間風が吹き込むそうです。改修費用は安価なのでおすすめです。

 断熱は冬の寒さだけでなく、昨今の夏の猛暑にも効果があります。これを機に住まいの断熱について考えてみませんか。

田中歩
1991年三菱信託銀行(現・三菱UFJ信託銀行)入行。企業不動産・相続不動産コンサルティングなどを切り口に不動産売買・活用・ファイナンスなどの業務に17年間従事。その後独立し、ライフシミュレーション付き住宅購入サポート、ホームインスペクション(住宅診断)付き住宅売買コンサルティング仲介などを提供。2014年11月から個人向け不動産コンサルティング・ホームインスペクションなどのサービスを提供する「さくら事務所」に参画。
近づくキャッシュレス社会
ビジネスパーソンの住まいと暮らし
注目記事
近づくキャッシュレス社会
ビジネスパーソンの住まいと暮らし