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冬は焼きマシュマロ たき火であぶってトロリ味わう

土屋敦の男の料理道(5)

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NIKKEI STYLE

立春はすぎたが、まだ寒い。こんな日には暖炉に火を入れ、古くなったマシュマロを焼く。硬くなっておいしくないマシュマロも、焼けばとろりと軟らかくなり、ぐっとおいしさが増すからだ。これが焼きマシュマロの原風景だろう。

暖炉がある家が少ない日本では、焼きマシュマロは、寒い冬の風物詩というより、むしろアウトドアシーンで、たき火やバーベキューとともに楽しむものという印象が強い。しかし、やはり寒い時期に食べる、たき火であぶった焼きマシュマロの味は格別だと思う。寒さのなかで食べるからこそ、あの過剰なほどに甘く、そしてあつあつのマシュマロがとびきりおいしく感じられるのではないだろうか。

私の経験では、多くの人が(特に子どもたちは)、一度焼きマシュマロを食べると、「そんなに食べて大丈夫?」と心配になるほど、マシュマロがなくなるまで、焼いては食べを繰り返す。それほどまでにハマる食べものでもある。

木の枝や串などにマシュマロを刺し、ただ火であぶるだけの「料理」ともいえないものだが、実は焼きマシュマロは結構奥深いものだと思っている。私は神奈川県にある中高一貫校で、週に1度料理についての授業をしているのだが、秋になると授業で火を起こしてたき火をし、焼きマシュマロを焼いてもらう。これが「焼く」ことの素晴らしい訓練になるからだ。

料理レシピというと「強火で○分」「弱火で○分」といった記述が多いと思うが、実はそれを忠実に守っていても料理は決してうまくはならない。何かを上手に焼くなら、焼かれているものの状態を常に見て、匂いを嗅ぎ、手で触って感触を確かめながら、焼き加減を判断していく必要がある。感覚をできるだけ鋭敏にして、何度も試行錯誤しつつ、最良の焼き加減を目指すのだ。その際、火はたき火のように一定にはせず、ランダムなほうがいい。よりいっそう感覚を鋭敏にしなければ、うまく焼けないからだ。

マシュマロを焼き始めると、まずマシュマロ全体がふんわりとふくれてくる。ていねいに焼くほど大きくなるのだ。そして表面はこんがりときつね色に。理想は表面が少しカラメル状になって硬さがあり、なかは軟らかくトロットロの状態だ。

ただ、このような理想的な状態に仕上げるのはけっこうむずかしい。

火に近づけ過ぎると、一気に全体に火がまわり、全体が黒焦げになる。また焦げないように遠火でじっくり焼いていても、焼く時間が長すぎると軟らかくなってしまい、串からポトリと落ちてしまうこともある。かといって加熱が足りないとおいしくない。

こんがりと焼くコツは、たき火から炎が上がっているときは、炎に当たらないように、炎の少し上でまめに回転させ、マシュマロの変化をよく観察しながらじっくりと遠火で焼くこと。つい焼き色を早くつけたくて炎であぶってしまうと、黒焦げになる確率が一気にあがる。

木が炭になっておき火になっているなら、そこで焼けばかなりハードルが下がる。もちろん、たき火より炭火を使えば火力が安定している分、よりうまく焼くことができる。私が知っている限り、もっとも上手に焼きマシュマロが焼けるのは、切り出しけい藻土の七輪だ。一般的な安い七輪は粘土状に練ったけい藻土を圧縮して作られているが、切り出しけい藻土の七輪は、石川県奥能登の天然けい藻土を切り出し、塊を削って作られている。

切り出しでも練ったけい藻土でもさして違いはないのではないかーー私はずっとそう思ってきたのだが、あるとき、両方を同時に使って比較する機会があり、切り出しけい藻土のほうが、はるかに焼きムラがなく、美しい焼き色に仕上がったことに驚いた。そしてすぐさま購入し、以来愛用しているのだが、焼きマシュマロにおいても、その仕上がりの美しさは格別である。

だが、まずはたき火で挑戦をしてみてほしい。感覚を研ぎ澄ませて何度も挑戦し、たくさん失敗する。それを繰り返すほどに、焼くということの本質が分かってくるはずだ。マシュマロをまんべんなくキツネ色に焼き、中をとろとろに仕上げることができれば、焼き物は大いに上達する。焼き鳥なども、焦がさず焼きすぎず、絶妙な焼き加減で焼けるようになるはずだ。

さて、このようにマシュマロをうまく焼くことができると、串を抜いたとき、マシュマロは小さなカップのような形になる。とろとろの中身が串のほうに残り、中心に空洞ができ、カラメル化して少し硬くなった表面の部分がカップ状に残るのだ。

このマシュマロカップの形が面白く、何か使えそうなので、まずはチョコレートを入れて、串に戻し、再度火で焼いて、チョコをとろとろに溶かしてみた。想像通り、とびきり美味だ。これをグラハムクラッカーにのせて食べてもとてもおいしい。

これは、有名な焼きマシュマロのレシピ「スモア」のアレンジである。マシュマロを焼き、それをチョコレートとともにグラハムクラッカーに挟んで食べる。米国では定番中の定番といえるマシュマロレシピだ。

ただこれだとチョコレートが完全にとろとろには溶けない。だからカップ状になったマシュマロにチョコを入れて再度火で熱し、チョコもマシュマロもとろとろ状態にして食べてしまおうというわけだ。

さて、マシュマロカップは見た目は本当にカップ状なので、何かを入れて飲んでみたくなった。寒い冬のたき火となれば、真っ先に思いつくのが、ウイスキーだ。ウイスキーをマシュマロカップになみなみ注いで、マシュマロカップごと口に放り込んだらさぞうまいのではないか。早速試してみたのだが、大抵の場合、ウイスキーを注ぐとカップの中に炭酸のような細かい泡が立ったかと思うと、すぐにどこかからウイスキーが漏れてしまった。それでも、10個のうち9個は失敗したが1つは無事飲むことができた。

マシュマロカップは本当のカップとして使うのはどうやら難しそうなのだが、このウイスキーが漏れてしまったあとのマシュマロを、もう一度焼いたものが非常においしかった。いわば「マシュマロのウイスキーびたし焼き」とでもいおうか。

さらに、先程のマシュマロカップにチョコを入れて再度加熱したものにもウイスキーを少量加えてみたが、これが絶品である。

ウイスキーだけでなくブランデーやラム酒、チェリーやカシスのリキュールなどを加えてもいい。チョコはやはりビターチョコレートのほうが美味である。グラハムクラッカーで挟む代わりに、コーヒーに入れて飲んでも美味である。

ちなみにスモアの語源は「Some more」で、ひとつ食べると、子どもたちが「give me some more!」=「もっと頂戴!」と叫ぶほどおいしい、ということらしい。つまりは、子どもたちが病みつきになる味ということだ。

ウイスキーに、とろとろに溶けたビターチョコレートも入ったこのレシピはいわば大人版スモア。大人も病みつきになり、しかもウイスキーで体も温まる。寒い夜にたき火をしながら、ぜひ試していただきたい。 

土屋 敦(つちや あつし)

ライター 1969年東京都生まれ。慶応大学経済学部卒業。出版社で週刊誌編集ののち寿退社。京都での主夫生活を経て、中米各国に滞在、ホンジュラスで災害支援NGOを立ち上げる。その後佐渡島で半農生活を送りつつ、情報サイト・オールアバウトの「男の料理」ガイドを務め、雑誌などで書評の執筆を開始。現在は山梨に暮らしながら執筆活動を行うほか、小中学生の教育にも携わる。著書に『なんたって豚の角煮』『男のパスタ道』『男のハンバーグ道』『家飲みを極める』『男のチャーハン道』などがある

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