2019/2/18

カリスマの直言

東日本大震災の後、東京電力など電力業界に対する風当たりが強まった。大きな理由の一つが一般家庭向け電力料金が「総括原価方式」で決まっていることであった。要するに料金は電力会社でかかった費用をすべて上乗せできるのだ。こうした仕組みだと競争原理が働かず、料金やサービスの改善が滞りがちなるので段階的に自由化が進められた。

この電力業界の構図は、実は大手銀行にも当てはまる部分が多い。預金金利や貸出金利は、表面的には自由化されているとはいえ、実際には電力業界の総括原価方式と大差ない。すなわち、ほとんどの銀行では預金金利は人件費や物件費などの費用、それに預金保険料などを含む原価計算に基づいて、預金を運用した際に損が出ない水準から逆算して設定されてきた(ただし、近年は市場金利が低すぎて原価が賄えていない)。

銀行の収益は国民が広く薄く負担

貸出金利も「調達金利+利ざや」という方式が多い。利ざやの中には、やはり総費用と予想される貸倒損失率が織り込まれているので、これも平時には必ず利益が出るといっていい(なお、経済危機などの非常時には貸倒損失が急増するが、その緩衝材となるのが自己資本である)。また、送金手数料なども銀行の原価計算に基づく原価を割り込まないように決められている。すなわち、銀行の収益は国民が広く薄くコスト負担する形で実現されているのである。それが許されているのは、ひとえに銀行の公益性ゆえだ。

このように、国民によって支えられている銀行が必ずしも休む必要がないのに国民の祝日に営業しないことには疑問がある。国民に種々の不都合を生じさせ、証券市場も取引停止を余儀なくされて国民がリスクにさらされるのは公益企業の対応としては考えものだ。銀行は連休中にせめて一日でも営業できないのか。業界に英断を期待したい。

安東泰志
 1981年に三菱銀行(現三菱UFJ銀行)入行、88年より、同行ロンドン支店にて、非日系企業ファイナンス担当ヘッド。2002年フェニックス・キャピタル(現ニューホライズンキャピタル)を創業。三菱自動車など約90社の再生案件を手掛ける。東京大学経済学部卒業、シカゴ大学経営大学院(MBA)修了。事業再生実務家協会理事。
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