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インクの進化やデジタル化 平成文具の使いやすさ革命

2019/2/20

文具にとって平成はどんな30年間だったのか

平成もあとわずか。デジタル機器のように毎年新しい製品が登場するわけではない文具だが、文房具を見続けてきた納富廉邦氏によると「平成のあいだに文房具、そして文房具を取り巻く環境は大きく進化した」という。平成に登場した文房具で30年間を振り返る。

◇  ◇  ◇

平成が始まった頃、普通の社会人は自分が乗っている車の名前は知っていても、自分が使っているボールペンのメーカーは知らなかった。当時の文房具は「あって当たり前」「使えればそれでいい」という存在で、「ボールペンが違えば書き味が違う」とか「用途に応じてハサミを使い分ける」とか「手帳を使って時間管理をする」といった今では当たり前のことを多くの大人が知らなかったのだ。その傾向は、文房具が会社から支給されるのが当たり前だったビジネスパーソンに特に顕著だった。

一方で、文房具を自分で購入する学生たちの間では事情は違った。

■女子中高生が火をつけたハイテックC

平成に入ってすぐ、1990年代初めに「ゲルインクボールペン」が女子中高生を中心に大流行する。中でも平成6年(1994年)発売の「ハイテックC」(パイロット)は、その色数の豊富さ、安定して細い線が書ける性能の高さで、大ヒット商品となった。ビジネスパーソンがボールペンのメーカーさえ気にしていなかった時代に、女子中高生はそれぞれにお気に入りのゲルインクボールペンを持ち、指名買いをしていたのだ。

細字ブーム、ゲルインクブームをけん引した「ハイテックC」は平成6年発売。今も人気商品だ

ゲルインクボールペンの流行に並行する形で、0.38mmなどの細い線が書けるボールペンを使い、手帳などに細かく書き込みをする人も増えていく。振り返ると、この90年代の半ばに、今の文具ブームの兆しがあったのではと思う。

■スマホ前夜、デジタル文具の登場

システム手帳のブームが下火になり、「電子手帳」が登場するのも平成の初期のことだ。シャープの「ザウルス」、アップルの「ニュートン」が発売されたのが平成5年(1993年)。「ハイテックC」の1年前だった。

その意味で、ゲルインクボールペンと並ぶ平成文具の先駆けは、電子手帳といってもいいかもしれない。今では当たり前になったデジタル文具の登場である。名刺管理もできた「ザウルス」などは、かなり長い間使っていたビジネスパーソンも多かった。小型のパソコンにもなる携帯型ワープロとして大ヒットした「オアシスポケット III」の発売も平成6年(1994年)。平成の前半は、インターネットの普及を目前に、デジタルと文具の融合が試みられた最初の時代となった。

思い返せば、筆者もiPhoneの登場までは、ヒューレット・パッカードの「HP200LX」(平成6年)と、パーム社の「m505」(平成13年)を愛用し、仕事にもプライベートにも使っていた。

平成初期に始まったデジタルと文具の融合は、平成20年(2008年)にiPhoneが日本でも発売されたことでスマートフォン(スマホ)として花を咲かせることになる。

シャープの「ザウルス」(写真上)がすごかったのは、実際にビジネスユーザー中心に売れていたこと。オアシスポケットは、その優秀なキーボードにパソコン通信ユーザーやフリーライターなどが飛びついた
実際に仕事でも使えるPDA(パーソナルデジタルアシスタント)として、HP200LX(写真左)とPalmは、スマートフォンの登場まで人気が続いた

■常識を書き換えたジェットストリーム

平成も15年を過ぎた頃に、筆記具の常識を変えた、平成を代表する2つの文具が登場する。三菱鉛筆の「ジェットストリーム」と、パイロットの「フリクションボール」だ。

ジェットストリームの日本発売は平成18年(2006年)、フリクションボールの日本発売は平成19年(2007年)。ここから文房具の世界は大きく様変わりしていく。

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