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インクの進化やデジタル化 平成文具の使いやすさ革命

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NIKKEI STYLE

平成もあとわずか。デジタル機器のように毎年新しい製品が登場するわけではない文具だが、文房具を見続けてきた納富廉邦氏によると「平成のあいだに文房具、そして文房具を取り巻く環境は大きく進化した」という。平成に登場した文房具で30年間を振り返る。

◇  ◇  ◇

平成が始まった頃、普通の社会人は自分が乗っている車の名前は知っていても、自分が使っているボールペンのメーカーは知らなかった。当時の文房具は「あって当たり前」「使えればそれでいい」という存在で、「ボールペンが違えば書き味が違う」とか「用途に応じてハサミを使い分ける」とか「手帳を使って時間管理をする」といった今では当たり前のことを多くの大人が知らなかったのだ。その傾向は、文房具が会社から支給されるのが当たり前だったビジネスパーソンに特に顕著だった。

一方で、文房具を自分で購入する学生たちの間では事情は違った。

女子中高生が火をつけたハイテックC

平成に入ってすぐ、1990年代初めに「ゲルインクボールペン」が女子中高生を中心に大流行する。中でも平成6年(1994年)発売の「ハイテックC」(パイロット)は、その色数の豊富さ、安定して細い線が書ける性能の高さで、大ヒット商品となった。ビジネスパーソンがボールペンのメーカーさえ気にしていなかった時代に、女子中高生はそれぞれにお気に入りのゲルインクボールペンを持ち、指名買いをしていたのだ。

ゲルインクボールペンの流行に並行する形で、0.38mmなどの細い線が書けるボールペンを使い、手帳などに細かく書き込みをする人も増えていく。振り返ると、この90年代の半ばに、今の文具ブームの兆しがあったのではと思う。

スマホ前夜、デジタル文具の登場

システム手帳のブームが下火になり、「電子手帳」が登場するのも平成の初期のことだ。シャープの「ザウルス」、アップルの「ニュートン」が発売されたのが平成5年(1993年)。「ハイテックC」の1年前だった。

その意味で、ゲルインクボールペンと並ぶ平成文具の先駆けは、電子手帳といってもいいかもしれない。今では当たり前になったデジタル文具の登場である。名刺管理もできた「ザウルス」などは、かなり長い間使っていたビジネスパーソンも多かった。小型のパソコンにもなる携帯型ワープロとして大ヒットした「オアシスポケット III」の発売も平成6年(1994年)。平成の前半は、インターネットの普及を目前に、デジタルと文具の融合が試みられた最初の時代となった。

思い返せば、筆者もiPhoneの登場までは、ヒューレット・パッカードの「HP200LX」(平成6年)と、パーム社の「m505」(平成13年)を愛用し、仕事にもプライベートにも使っていた。

平成初期に始まったデジタルと文具の融合は、平成20年(2008年)にiPhoneが日本でも発売されたことでスマートフォン(スマホ)として花を咲かせることになる。

常識を書き換えたジェットストリーム

平成も15年を過ぎた頃に、筆記具の常識を変えた、平成を代表する2つの文具が登場する。三菱鉛筆の「ジェットストリーム」と、パイロットの「フリクションボール」だ。

ジェットストリームの日本発売は平成18年(2006年)、フリクションボールの日本発売は平成19年(2007年)。ここから文房具の世界は大きく様変わりしていく。

この2つのボールペンが登場した直後の平成20年(2008年)にリーマン・ショックが起きたことも大きかった。これ以降、文房具を支給する会社は減り、ビジネスマンが文房具を自分で買うようになった。そのタイミングで、今までの油性ボールペンとは全く違った滑らかな書き味を持つジェットストリームと、ボールペンなのに書いた文字が消せるフリクションボールも登場したのだ。(記事「消耗品から『高級実用品』へ ボールペン、進化の秘密」参照)

三菱鉛筆の「ジェットストリーム」は、それまで書き味が重く、書いているとインクがダマになったりしていた油性ボールペンのイメージを一新した。油性なのに、まるでゲルインクや水性インクのように、抵抗なくスラスラ書けるのだ。ビジネスパーソンにとって、油性ボールペンは仕事の必需品。それが大きく進歩していたのだから、驚いた人も多かっただろう。

その後、各筆記具メーカーがこぞってジェットストリームと同じ低粘度油性インクのボールペンを開発、発売していく。今ではかつての重い書き味が思い出せないくらい、油性ボールペンは軽くスラスラと書ける筆記具になった。ジェットストリームはボールペンの常識を書き換えてしまったのだ。

手帳ブームとともに育ったフリクションボール

パイロットの「フリクションボール」は、消せるボールペンとして、当時、火がつきかけていた手帳ブームと共にヒットした。

発売当初は、キャップ式だったこともあり、じわじわと売れる感じだったが、平成22年(2010年)にノック式の「フリクションボールノック」が発売されたことで一気にブレーク。スーパーの文具売り場のボールペンが全て「フリクション」シリーズで埋まるほどの人気を博した。

現在も、メインユーザーは手帳用途だという。実際、予定変更などに対応できて、消したときに消しカスも出ないのは、手帳に最適だろう。普段使いの「ジェットストリーム」に対して手帳用の「フリクションボール」という具合に、文具を変えた2つの筆記具が、きちんとすみ分けできているのも面白い。

公私混同の楽しさを伝えたほぼ日手帳

手帳では、ほぼ日の「ほぼ日手帳」が登場したのが平成13年(2001年)。公私混同を提唱し、職種を選ばず使える「個人のためのツール」という切り口で、その後の手帳の方向性を変えてしまった。(記事「クオバディスとほぼ日、手帳好き日本人が支持する理由」参照)

「ほぼ日手帳」の場合、時代が、この手帳を受け止めて、きちんと市場を作ったことも新しかったと思う。発売されてからの数年は、マニアのための手帳という色合いが強かった「ほぼ日手帳」だが、手帳ブームを経て、手帳に対するユーザーのリテラシーが向上するに連れて存在感を増していった。この手帳は平成という時代に、とても使いやすいフォーマットだったということなのだろう。

万年筆ブームの火付け役カクノ

筆記具に戻ると、平成25年(2013年)に発売されたパイロットの万年筆「カクノ」も平成文具として記憶しておきたい存在だ。

初心者向きや低価格をうたう万年筆はそれまでもいくつもあった。しかしカクノは、その価格に見合わない書き味の良さ、誰にでも使えるように作られた細部の工夫、ボトルインクを使うことをあらかじめ想定していたコンセプト、子どもにも大人にも魅力的なシンプルなデザインなどで、あっという間に人気商品になった。現在の万年筆ブームを作ったのは、この「カクノ」といっていいだろう。平成30年(2018年)には透明軸のバージョンも登場。その人気は5年経っても衰えを見せない。(記事「1000円台のカジュアル万年筆 人気支える2つの理由」参照)

シャープペンの新たな進化クルトガ

平成ではシャープペンシルやハサミ、消しゴムといった「もう進化の余地はないのではないか」と思われたジャンルにも、画期的な製品が登場した。

平成20年(2008年)に発売された三菱鉛筆の「クルトガ」は、発売当初から現在にかけて、小中学生に圧倒的な人気を誇るシャープペンシルだが、シャープペンシル市場に与えた衝撃も大きかった。この製品の「書いていると自動的に芯が回転して、常に尖った状態を保つ」というメカニズムは、シャープペンシルにそういう方向での進化の道が残されていたことに多くのメーカーが気付かされたのだ。

昭和の時代は、どうやって芯を出すかにアイデアが注がれていたが、平成は、もっと「書く道具」としての機能の部分に目が向いたのだ。クルトガの登場後、「折れないシャープペンシル」のブームがやってくる。そして、そのブームの一つの完成形が、2017年(平成29年)に登場した、3000円ながら大ヒットしたシャープペンシル「オレンズネロ」(ぺんてる)だったわけだ。(記事「仕事の筆記具変えた、本当に芯が折れないシャープペン」参照)

ハサミを進化させたフィットカットカーブ

文房具の中でも飛び抜けて古い歴史を持つハサミは、早くから完成の域に達していたのだけれど、そこにもまだ進化の余地があることを示して大ヒットとなったのが、平成24年(2012年)に登場したプラスの「フィットカットカーブ」だ。

フィットカットカーブは、刃の形と、良く切れる刃の角度に注目。刃を内側に湾曲させることで、刃と刃の間の角度が常に、最もよく力が伝わる角度になるように設計した。経験に基づいて刃を湾曲させたハサミはこれまでもあったのだが、そこに理論を乗せて、「なぜ切りやすいのか」を分かりやすく説明したこともヒットにつながったわけだ。

職人の腕やかしめの技術によって決まっていたハサミの切れ味に、新しい切れ味の発見があることを示したのが、エポックメイキングだった。その証拠に、その後、様々な「切れるスタイル」を持ったハサミが登場する。ハサミの商品価値の可能性を広げたという意味でも斬新な製品だったといえる。(記事「小型化進む最新ハサミ 切れ味も高める、あの手この手」参照)

文具が飛躍した30年

平成15年(2003年)に発売されたコクヨの消しゴム「カドケシ」も、とても平成らしい商品だった。

「消しゴムは角で消すのが気持ち良い。ならば、たくさん角を作ってしまえ」というコンセプトは、とても明快。そのコンセプトをそのまま形にしたような造形は、デザイン的にもとても面白いものだった。「フィットカットカーブ」同様、この明快なデザインと機能の融合が、平成の文房具の一つの特徴になっている。この製品も、その後、同工の製品を多数生んだわけで、やはりエポックだったのだと思う。

他にも、スティックのりの世界で四角い形状を完成させたコクヨの「GLOO スティックのり」(平成30年)、立つペンケースブームをけん引した、同じくコクヨのペンケース「ネオクリッツ」(平成18年)なども入れたい気がするが、それを言い出すとキリがない。とにかく平成の30年間は、飛躍的に文房具の質が向上した時代だったことは覚えておいてほしい。

納富廉邦
佐賀県出身、フリーライター。IT、伝統芸能、文房具、筆記具、革小物などの装身具、かばんや家電、飲食など、娯楽とモノを中心に執筆。「大人カバンの中身講座」「やかんの本」など著書多数。講演、テレビやラジオの出演、製品プロデュースなども多く手がける。

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