海外赴任中に婚活 バリキャリ女性の超遠距離結婚
結婚相談所代表が見た今どき「婚活」事情
皆さんにとって、「結婚」は何のためにするものでしょうか? 今回登場するのは、海外赴任中に婚活をして、見事成婚を果たしたバリキャリ女性。結婚したことで大きな安心と精神的な支えを手に入れた女性のお話です。海外と日本の「超遠距離結婚」というレアケースを、東京・青山の結婚相談所「マリーミー」代表の植草美幸さんは、どのようにして成功に導いたのでしょうか?
この気持ちはホームシック? まずは結婚する意思を再確認
相談者は、海外駐在員として働く市原奈央さん(仮名)、35歳。彼女は、言葉も文化も違う国で仕事をするグローバルな女性ですが、だからこそ「結婚は同じ文化を分かち合える日本人としたい」と思い、一時帰国したタイミングで結婚相談所に入会。
海外赴任中に婚活を進めるのはとても珍しいケースでしたが、家族や友人のいない場所で懸命に働く奈央さんの幸せをサポートしたいと思い、海外と日本での「超遠距離カウンセリング」がスタートしました。
国際電話で話をしていくうちに分かったのは、入会直後の奈央さんには、「結婚自体に迷いがあった」ということ。
結婚して人生のパートナーを得たいという思いはありつつも、それが本当の願いなのか、それともホームシックによる一時的な思いなのか、自分でも本心を見極められていないようでした。
そのため、まずは「本当に結婚する人生を望んでいるのかを、改めて考えてみましょう」とアドバイス。
海外で仕事をすることが第一優先なのか、パートナーを得ることが一番の望みなのか。将来的には子どもを産みたいと思っているのか、子どもを産みたいのなら仕事はどうしたいのか……など、さまざまな質問や選択肢を投げかけて、自分の本心に気付けるようにサポートしていきました。
そして奈央さん自身も、改めて真剣に自分と向き合った結果、「結婚して子どもを産みたい」という気持ちを再確認。
「この先、自分が海外で働き続けることを選んでも、日本に帰ることを選んでも、その決断を受け止めてくれ、一緒に人生を歩んでくれる人と結婚したい」という本心にたどり着きました。
市原奈央さん(仮名)35歳
海外駐在員として働くなか、「結婚は共通の文化を持つ日本人としたい」と考えて「マリーミー」に入会。一時帰国のタイミングを利用して婚活をスタート。
一時帰国をする時は、10人とお見合い
結婚への意思は固まった奈央さんですが、一方で彼女には不安もありました。婚活のために頻繁に日本に帰れるわけではなかったので、「本当に相手を見つけられるのだろうか?」という思いを、拭い去れずにいたのです。
海外で暮らす奈央さんにとって、この不安は無理もないことだと思います。日本にいてすぐにお見合いをする機会があれば、結婚を身近に感じることもできますが、海外にいてパートナー候補の男性と会う機会がない状態では、結婚に対してリアリティーを持てなくても仕方がないと思うからです。
そこで今度は、奈央さんが次に一時帰国をするタイミングに合わせて、お見合いをセッティング。2週間のうちに10人の方とお見合いをする段取りを組んで、結婚に対するリアリティーを持ってもらうことにしました。
おうちデートで居心地の良さを実感して結婚へ
こうして、帰国時に10人の方とお見合いをした奈央さん。彼女は「自分の仕事や生活環境を理解してくれる男性かどうか」を見極めながらお見合いを進め、ある一人の男性と意気投合。
この男性と、海外に戻ってからもメールや電話で連絡を取り合い、再び一時帰国した時にはデートを重ねるなどして、順調にお付き合いを深めていきました。
お相手の方は、将来的には海外進出も視野に入れているという、38歳のコンサルタント。奈央さんの海外勤務にも理解があり、彼女の生き方を尊敬した上で結婚を望んでくれていたので、まさに奈央さんが理想としていた男性でした。
しかし、海外と日本の超遠距離恋愛で、会える機会が限られていたこともあり、彼女は結婚に踏み切るきっかけをつかめずにいる様子でした。
そこで私は、「次に帰国した時に、彼の家で一緒に料理をしてみてはどう? 彼が普段生活をしている空間に行ってみれば、きっと結婚後の生活がイメージしやすくなるはずよ」と提案。
奈央さんが結婚に踏み切るには、彼との生活を具体的にイメージしてみることがポイントだと感じたので、相手の生活スタイルが垣間見える「家」に行き、一緒に料理をする時間を取ってほしいと伝えたのです。
そして実際に、次の帰国時に彼の家へ行った奈央さん。一緒に料理をして楽しく過ごせたことで、「この人となら無理をせず、居心地の良い結婚生活が送れそう」と実感し、彼との結婚を決意。
彼女の赴任期間中は別居婚を選択し、その後再び海外勤務を選ぶのか、それとも日本で仕事をするのかは、「二人で相談しながら一緒に決めていきます」と語ってくれました。
結婚は、今よりもラクに生きるための一つの手段
しっかり者で、自立して生きてきた奈央さんにとって、結婚は大きな心境の変化をもたらすものだったと思います。
なぜなら、これまでは「すべて一人で決断しなければ……」と背負ってきたことを、一緒に悩んで、一緒に解決してくれる相手に出会えたから。
一人で抱えていた課題――この先も海外で仕事をするのか、それとも日本に帰るのか――という人生の選択を、結婚したことで「パートナーと相談して決めよう」と思い直し、いい意味で楽観的に考えられるようになったのです。
もちろん、時には一人で考え、一人で決断することが必要な場合もあるでしょう。しかし奈央さんの場合は、自分と一緒に将来を考えてくれるパートナーを得たことで、肩の荷が下りて「ラク」に生きられるようになりました。
私は、結婚はお互いが「今よりもラクになる」ためにするものだと思っています。居心地が良く、安心できる相手と、支え合いながら「ラクに生きていく」ための一つの手段。逆に言うと、精神面でも生活面でも経済面でもラクにならない相手とは、結婚しても幸せになれる可能性は低いのではないでしょうか。
もしかすると、真面目で努力家な女性は、自分がラクになることを「甘え」や「弱さ」だと感じてしまうかもしれません。しかし私は、頑張っている女性が「今よりもラク」になることは、甘えでも弱さでもないと思っています。
また、結婚することで「苦労が2倍になる」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、心から尊敬する人と結婚したことで、「楽しいことやラクになることが2倍」になり、「苦労や負担が半分」になったという女性たちも、たくさん見てきました。
奈央さんのように自立して生きてきた女性が、パートナーを得ることでラクになる。肩の力を抜いて、人生をより楽しく快適に生きられるようになる。これが、婚活アドバイザーをしている私が心から望んでいることです。
結婚は、自分が今よりもラクになるための助け合い。今回でこの連載は終了ですが、登場した5人の女性たちのように、一人でも多くの女性が、ラクに生きられる相手と巡り合えることを願っています。
・心から結婚を望んで行動すれば、海外にいても婚活はできる。
・料理などを一緒にすることで、結婚にリアリティーが湧いてくる。
・結婚は、「今よりもラク」になるためにするのもよし。
(ライター 青野梢、イラスト 田中小百合)
[nikkei WOMAN Online 2018年11月29日付記事を再構成]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。