賢いキャッシュレス決済 ペイペイやラインペイも吟味
知って得するお金のギモン
最近、「キャッシュレス化」という見出しの記事を頻繁に見かけますね。クレジットカード、デビットカード、電子マネーなど、現金以外での決済普及に関心が高まっています。新しいサービスも増え、ポイント付与の仕組みも多種多様。読者の皆さんは「一体どれがお得?」と、興味津々のはず。
なぜ「キャッシュレス化」が話題を集めているのでしょう。経産省のリポート(*)によると、2015年時点のキャッシュレス決済の普及率トップは韓国で89.1%、2位は中国で60.0%、3位はカナダで55.4%です。韓国はすごい普及率ですね! 3位のカナダは昨年旅行したとき、円換算で200円程度の電車賃もカード決済で支払うことができてびっくり。普及率3位と知り、納得です。少額決済ができると、キャッシュレス決済は格段に進みます。
一方、日本は普及率18.4%で10位と、大きく出遅れています。そこで政府は、外国人観光客の消費促進のため、数年前から「キャッシュレス化」の推進に注力。東京オリンピックも控えていますからね。さらに、消費税増税対策として「ポイント還元」の話題も。消費税率が10%になる今年10月以降の9カ月間、キャッシュレス決済をすると国が5%(大手チェーンは2%)のポイントを還元する計画があります。
加えて、昨今のIT技術の進歩により、PayPay(ペイペイ)やLINE Pay(ラインペイ)などの「スマホ決済」が続々と登場しています。
*:経済産業省「キャッシュレス・ビジョン」内「各国のキャッシュレス決済比率の状況(2015年)」参照
お得度と利便性とは必ずしも一致しない
キャッシュレス決済をした場合、実際に決済代金を支払うのはいつなのか、整理してみましょう。クレジットカードは翌月以降の後払い、デビットカードは銀行口座からの即時払いですね。Suicaなど交通系電子マネーは、事前にチャージしたお金から即時払いです。
スマホ決済は、銀行口座をひもづけてチャージする「即時払い」タイプと、クレジットカードをひもづけた「後払い」タイプと、決済方法はいろいろ。
気になるポイント還元ですが、クレジットカードの多くは還元率0.5~1%で、デビットカードは0.2~0.5%が中心。双方とも、なかには1%を超えるものや、条件により還元率が変動するものもあります。交通系電子マネーは、クレジット機能付きカードなら0.5~1%のポイント還元が一般的です。
スマホ決済は、ポイント還元がないものもあれば、ポイント増額キャンペーンや割引クーポンがあるものも。使えるお店はクレジットカードと比べて、まだ限られているのが現状です。
利便性が高いのは、スマホ決済や電子マネーでしょう。ピッとかざすだけで支払いが済むので、間違いなく便利。ただし、お得度と利便性とは必ずしも一致しないので吟味が必要です。
お金をためるには決済手段を絞るのがコツ
私のおすすめの使いこなし術は、服など数万円単位のものはクレジットカード払いでポイントをためる、1000円以下の支払いは、利便性狙いで電子マネーやスマホ決済をする、です。
覚えておきたいのは、ポイント長者=お金がたまる人ではないこと。「お金がたまる人」になるためには、カードは1~2枚に絞り、交通系電子マネーはオートチャージにしないこと。スマホ決済もあれこれ複数に手を出さない。お金の出口が多いほど、家計管理は煩雑になり、たまりにくくなるからです。それぞれの出口の1カ月の予算を決めて使いこなすのが、たまる人への近道です。
今回の回答者
ファイナンシャルプランナー。株式会社生活設計塾クルー取締役。外資系電機メーカー勤務を経て、1996年にFPに転身。現在は、特定の金融商品を販売しない独立系FP会社生活設計塾クルーのメンバーとしてコンサルティング業務を行うほか、雑誌等の原稿執筆、講演などを手がける。近著は「サラリーマンのための『手取り』が増えるワザ65」(ダイヤモンド社)。
[日経ウーマン 2019年3月号の記事を再構成]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。